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蝕む黒の霧  作者: 栗木下
2:10年

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第70話

 現在から9年と少し前


「イズミに…貴方が狐人のムギ。でしたか。」

「(久しぶりー)」

「そう言うアンタは霧人のリョウだね。で、そっちも霧人のホウキと。狐姫様から話は伺っているよ。」

「よろしくお願いしますねぇ。」

 私とホウキはクロキリからの命令で大陸に渡り、そちらで先行していたイズミとムギの二人と合流しました。さて、この後はイチコさんを捜しつつ、レベル上げや各種交渉などでしたわね。正直に言って魔王との交渉なんてしたくありませんけど。


「まあ、頼まれたからにはやり遂げるだけですわ。」

 まずは、糖王との交渉ですわね。



---------------------



 私の前では『白を塗す糖王』の眷属である糖人たちと、ホウキにムギが何かしらの交渉をしています。

 ちなみに言葉の問題はムギが≪翻訳≫というスキルを得たので解決済みです。


「えーと、それではそちらが連れてこられた人間の扱いはこんなところにしまして…」

「貿易の開始は…」

「実はこういうスイーツもありましてぇ…」

「なるほどなるほど…」

「それにしてもええ香りやなぁ…」

「ふふふ。糖人の良いところです…」


 彼らの表情を見る限りでは交渉そのものは順調なようです。さて、糖王について少し紹介しておきましょうか。


 『白を塗す糖王』。通称糖王はとある国に出現した魔王です。糖王のダンジョンは全てが菓子類で出来ていて、モンスターを倒せばそのモンスターに合わせたお菓子をドロップします。そして、そのような特徴を持つがゆえに飢えに苦しんでいたとある国は積極的に糖王のダンジョンを攻略しようとしました。

 が、糖王はこれを返り討ちにしたばかりか、その有り余る食料と力を持ってその国を乗っ取ってしまいました。どうやら、その国で飢えていたのは下の人間達ばかりであり、上の人間達は糖王のダンジョンから取れたものを自分たち上の人間だけで独占しようとしていたようで、そこに生まれた溝をうまく利用して乗っ取ってしまったようなのです。

 まあ、糖王が治めた方がこの国の民にとっては良かったようなので私から言う事は特にありませんが。


 ちなみに糖王の能力については分かりませんでしたが、糖人の固有スキルは蜜蝋を操って任意の対象を固める≪糖縛蜜≫だそうです。


 と、交渉が終わったようですわね。ムギにホウキ。それに糖人が一人がこちらに近寄ってきます。その糖人は全身から甘い匂いをさせ、髪は茶、目は黒、服は、質素ながらもそれなりの物で、背は私と同じくらい。胸は…大量の砂糖が詰まっているようですわね。


「いやー、良い交渉だったよ。」

「それは良かったですわね。で、これからはどうしますの?」

「とりあえず、今後の交渉役と糖王のレベル上げを兼ねて糖人が一人アタイたちについてくるそうだ。」

「よろしくお願いしまス。」

「…。了解ですわ。」

 そうして、私たちの一行に糖人のリ・ウネが加わりました。

 ちなみに彼女は生活系と補助系のスキルが中心だそうです。



■■■■■



 現在から8年前・旧中国某所


「つまりは私たちに逃げる間の護衛をしてほしいと。」

 私たちは一晩の宿と仕事を求めてとある農村を訪れていました。なぜ寝る必要も食べる必要もない眷属に宿や仕事が必要なのかを疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、私たちと一緒に行動しているのは何も眷属だけではなく、普通の人間もいますし、眷属にとっても人間らしさを失わないために可能な限り食事や睡眠は欠かすべきではないからです。


「はい。そういうことになります…。」

 そして、そこで頼まれたのが村に迫りくる魔王の軍勢から逃げる間の護衛でした。なんでもこの先にダンジョンが1つあり、そのダンジョンの魔王が次々と周囲に村を襲っているそうなのです。


「報酬はあるのかい?アタイらは慈善家じゃなくて傭兵だから最低限の出すものは出してもらわないと、助ける気はないよ。」

「はい。それは分かっています。こちらに出せるものについてはまとめてあります。」

「拝見させてもらいますわ。」

 私は村長の老人から報酬として出せる物のリストを受け取ります。


 さて、私たちがなぜこんな事をしているかと言えば、旅をするものは基本的に根無し草。だから、現地の住民ではない私たちが得られる仕事として力があればいい傭兵稼業をしているのです。

 仕事の内容はそれこそ農家の繁忙期に仕事を手伝うことから、モンスターの討伐まで様々ですが、いずれにしても日々の糧と戦闘の経験値を稼ぐのには非常に都合がよいものでした。


「まあ、これぐらいの報酬であればいいでしょう。」

「本当ですか!」

「ただ、私たちの戦力は私含めて12人しかありませんの。」

 ですが、傭兵稼業といっても私たちはまだまだ新興の弱小傭兵団(まあ、妙な注目を集めないためにも人数を少なくしていますが)なので、利用できるものは利用させていただきます。


「ですので、撤退戦ともなれば多少はそちらにも手伝ってもらうことになりますわ。もちろん、手伝っていただいた分だけこちらが受け取る報酬は減らして構いませんわ。」

「そういう事なら喜んで協力させていただきます。村の者にも話を通しておきましょう。」

「ありがとうございますわ。」

 そうして、一つの村の人間たちを魔王から逃がすための戦いが始まりました。

≪翻訳≫は付加系スキルで一度使えばしばらくの間効果を発揮し続けます。

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