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蝕む黒の霧  作者: 栗木下
2:10年

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第67話

さて、イチコが飛ばされた場所とは?

「はぁ…。やはりそうですか。」

 その建物の名を見たとき、思わず私はため息を吐きつつ独り言を言ってしまった。


 ただ考えてみると、ここに来るまでの間にそう思わせる要素として氷、雪、植物が一切無い岩の大地、ペンギンと色々ありましたからね。ある意味納得ではあります。

 それでもこの建物の名で私の今いる場所は決定ではありますが。


 そう、今私がいる建物の名は昭和基地。 あの国が“南極大陸”に建てた基地です。


 …。南極かぁ…。ほぼこの星の反対まで私は飛ばされたんですねぇ…。どうやって帰りましょうか…。ははははは…。


 ああ、なんだかとっても気分が落ち込んできます。せめてもの救いは魔性がいるという事はこの大陸のどこかに魔王がいるという事であり、その魔王の考え方や能力次第ではありますが、魔王を利用すれば別の大陸に行ける可能性があるという事ですかね。


「ひとまず、中に入って利用できるものがないかを確かめますか。」


 わたしは基地の周りを回り、中が覗ける窓から内部の様子を確認します。

 基地の中に人がいる様子は無く、長く人が居ないためか多少荒れているようです。ただ、外に繋がる扉にはきちんと鍵がかかっています。多少の戦闘痕もありましたから恐らくは魔王が南極大陸に出現してすぐに危険と判断して撤退したのでしょうね。


 さて、鍵がかかっているならば、これでいいですかね。


 私は手近な部屋の中が見える窓の前に移動します。そして、


「≪形無き王の剣・弱≫発動。」

 私は≪形無き王の剣・弱≫を発動し、そのテレポート能力で部屋に移動します。


 さて、探索開始です。



-----------------



 私は基地の中を一通り見て回りました。


 ふむ。どうやら電源などはほぼ完全に死んでいて、通信設備も壊されているようですね。まあ、少なくとも半年は放置されていたようですし、しょうがないですね。


 と、何かがこの基地に近づいてくる気配がしますね。

 この辺りに大量のエッジペンギンが居たことを考えると恐らくは南極の魔王の眷属か魔性でしょうね。

 まずは姿を隠して様子を窺うとしましょうか。


「ガガガッ!グワア!ガガガ!」「ブボオオォォォバババウ。」「ワンワンワン!!」


 えーと、初めからエッジペンギン、アザラシ?(大きすぎてまるでトドです)、犬系の魔性のようです。

 それから…


「嘘だろ…。確かにそう聞いてはいたけど、この辺りには1000近い数の手刃人鳥が居たはずなのに全滅だなんて…。一体どんな奴が何をやればこんなことになるんだよ。」


 白色のコートを身に着けた禿頭の男性が一人。

 話しているのは私の国の言葉ですが、外見的に他の国の基地にいた人間を南極の魔王が眷属にしたのでしょうね。


 さて、これからどうしましょうか。仮に戦いになればあの青年のスキル次第ではありますが、まず間違いなく勝てます。ですが、ここで青年を仕留めてしまえば南極の魔王との関係は最悪で固定化されることになるでしょうし、なによりこの先に繋がるものが無くなってしまいます。

 現状の理想はこのままここに隠れてやりすごし、主の元に帰っていく彼の後を追う事でダンジョンの所在を確認した後に今後の方針を決定。可能なら別の大陸に移動。と言ったところですか。


「えーと、極妃様によればこの惨状を生み出した奴の容姿と能力は…『黒髪黒目の典型的な日本人。ただし背は低めで、胸は朕と同じくらい。装備品は毛皮のコートに黒い籠手を左手に装備。剣を自在に出現させていたから、テレポートや生成能力があるかも。』だったか。」


 あー、さすがに1000羽も切ればスキルの詳細もそれなりにバレますよね。

 というか、極妃というのが魔王の名前なのでしょうが、胸は朕と同じくらいとも言ってましたから、極妃も丘ぐらいのむ…止めましょう。自分で考えてて悲しくなります。

 ところで、朕って男性限定の尊称だった気が…いや、偉い人なら誰でも使えましたっけ?

 まあ、そこら辺は置いておきましょうか。


「しかし、こんなどう考えても桁違いの強さを持っている奴を俺にどうしろっていうんだよ…。ん?あっ、はい。」


 ん?極妃との通信を始めましたか?


「はい。はい。はい。分かりました。では、その様に、」


 む。内容が気になりますが、私のスキルと能力では知りようがありませんね。

 と、通信が終わったようですね。こちらを向いています。


「えーと、どこに居るのか分からないから極妃様の言葉をこの場で伝えさせてもらう。『先程はすまない事をした。海から這い上がり、こちらを襲ってくる他の魔王の魔性対策として、手刃人鳥を待機させていたのだが、その際の命令が見知らぬ者を全て攻撃するようにしていたために貴殿を攻撃してしまった。』」


 ああなるほど、だから視界に入った瞬間襲ってきたのですね。


「『朕からこれ以上の危害を加える気はないが、このような事態が起きた原因。正確にはどのような方法を用いて貴殿がこの場に来たのかなどは今後のためにも教えてもらいたい。』」


 …。そう来ましたか。


「『なお、貴殿への見張りとしてこのボブ・サウスイールをこの場に置かせてもらう。仮にボブに何かあった場合は朕は貴殿を全力で排除させてもらう。』って極妃様!?」


 なんだか、ボブさんから凄く苦労人臭がします。

 しかし、この条件だともしかしなくても、ボブさんが私以外の生物や魔性が原因で死んだ場合も極妃から襲われることになりそうですね。


「はあ、しょうがない。」

 私はため息を吐きながらも今後のために交渉をすることにしました。

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