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蝕む黒の霧  作者: 栗木下
1:魔王降誕

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第57話

「食料不足…ねえ。」

「はい。少しづつですが問題になり始めているようです。」

 俺はいつも通りに『白霧と黒沼の森』第4階層に作った私室で作業をしていた。


「そう言えば、ホウキもこの前スパイスみたいな調味料が足りない。とか言ってたな。」

 ちなみに今の俺は魔神対策として、全霧人の視覚と聴覚を時々盗み見・聞きしているので、この前ホウキが熊料理を作った時の事も知っている。

 後、リョウたちが『銀雪の森』から離れているのも感知済みである。

 まあ、しばらくなら休憩させててもいいだろ。


 逆に今どうなっているのかまるで分からないのがイチコたちだな。『赤傾太極洞』に侵入した後、まるで連絡が付かないんだよな。もう突入から5日ほど経っているから一度脱出して連絡の一つくらいあってもいいはずなんだけど。

 ちなみに魔王と眷属の間の通信は相手が自分の所属するダンジョンではないダンジョンに居ない限りは地球の裏側に居ても通信できることがすでに判明している。

 どうやって調べたかって?『霧の粛清』以前に霧人にした子の一人が北米出身だったからその子と連絡取れるかで調べました。


「霧王様?」

「あ、ああごめん。ちょっと考え事してた。」

 ああそうだ。今ここにいるグラマラスなお姉さんは俺の秘書役をしている霧人で、名前は空射(ウツロイ)トリって言う。

 年齢?聞いたら≪虚空の矢(ボイドボルト)≫(耐性・魔法防御力を無視する無属性魔法の矢を飛ばすスキル。見た目は真っ黒な矢。)が飛んできますけどそれでも聞きたいならどうぞ。

 ちなみにイチコ経由で死病に罹ったところを霧人にして助けた子なので、俺への忠誠心も高いけど、それ以上にイチコへの信仰が強い子でもある。


 まあ、あれだな。霧王教イチコ派的な感じだ。


 うん。おかげで間違っても手を出せないよ!


閑話休題


「食料不足ねえ…正直に言って俺にどうしろと?っていう話なんだけどな。」

「それは私も理解してますが、外の人間達だけではどうしようもないようでして…」

「ふうむ。俺の記憶が確かなら≪成長促進・樹≫とか、≪恵みの光≫みたいに食料増産にかかわるスキル持ちは優遇されてる代わりに使えるだけスキルを使ってたと思うんだが、」

 なお、≪成長促進・樹≫は樹木の生長を速めるスキルで、≪恵みの光≫は本来は浴びた者を癒すスキルだけど、野菜の光合成を助けるスキルでもある。


「確かに優遇はされていますし、スキルも使っています。が、やはり輸出入がまるで出来ない。というのがこの国にとって痛手のようなのです。」

「なるほどね。となると俺への依頼も…」

「ええ、どちらかと言うと口減らしの様なものなのかもしれません。」

 それならまあ、俺に話が来るのも分かる。確かに眷属になれば成長期とかで体を大きくするための原材料が必要とかそういう事情でもない限りは食べ物は必要ないからな。


「だがまあ、裏の意図に素直に答えてやるのも癪だな。薄靄狼でも出せるだけ出してダンジョン外に放出するか。」

「えーと、犬肉ですか…?」

「大丈夫だ。うちのダンジョンに突入してる軍人たちの主食は銃撃蛙と薄靄狼だからな。問題なく食える。それに、薄靄狼が人間を返り討ちにしたらしたで美味しいしな。」

 俺はまさに魔王な笑みを浮かべ…あっ、今霧状態だから浮かべられねえわ。


「えーと、霧王様?できれば人間達への被害は抑えて欲しいのですが…。」

「うん?まあダンジョン外補正で普通の犬並みに薄靄狼のステータスも落ちるし大丈夫じゃね?後、いいスキル持ちの子が居たら浚うようにも命令しておくし。」

「そういうことでは…、いえ、もういいです。イチコ様と違って霧王様は血も涙もありませんものね。」

 失礼な。普段は霧化しているだけで血も涙もあるわい。

 それにこの薄靄狼の大量召喚作戦には、飢える人は減り、霧人は増え、俺の経験値は増えるという一石三鳥のメリットがあるんだぞ。


「まっ、そんなわけだし、この話は終了。俺はこれから薄靄狼を大量召喚した後に長距離転移陣を使って俺の支配領域全体にばら撒いておくから。」

 そう言って俺は何かを諦めたような顔をしているトリを置いて私室から去り、言った通りの作業をした。



--------------------------



 そして次の日の朝。


 俺は言いようのない不安に駆られていた。

 特に何かが俺の周りであったわけではない。

 が、何か俺の大切なものが得体の知れない何かに蝕まれつつある。そんな感覚がした。

 そこで、俺は何を思ったのか狐姫に連絡を取る。聞きたいのはそちらからイチコに同行している狐人、不知火ムギに連絡が付くかどうか。

 しかし、その結果は狐姫の方でも連絡が付かないとの事だった。


 分からない。何が不安なのかも分からない。だが、


「この迷宮の外に出られない俺には何も出来ない…クソッ!」


 俺は腹立ちまぎれに近くの壁を殴りつける。殴りつけた壁も俺も傷は負っていないが、焦りは募っていく。


『………』


 不意に誰かに呼ばれたような感覚がした。

 そして、俺の意識はその誰かに呼ばれるように深く沈んでいった。

きな臭くなってきましたよー

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