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蝕む黒の霧  作者: 栗木下
1:魔王降誕

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第55話

少しだけ再びのリョウ編です。

「寒いですわね。」

 私は自分たちの今いる場所と感じている気温から思わずそんなことを呟いてしまいました。


「寒いですねえ…。」

「寒いよね…。」

「寒いですね。」

 ホウキ、チリト、アリアも私の言葉に同意してくださるようです。


 さて、私たちの現状ですが、今は雪の中かまくらを作って野宿をしています。

 ええそうです。かまくらです。本来なら中は結構暖かいはずなのです。ですが…


「何でこんなに寒いのかしらね?」

「どう見てもアレのせいだと思いますね。お嬢様。」

 そう言ってホウキがかまくらの外の一方を指差します。その先にあるのは一つのダンジョン。『凍てつく銀の雪翁』が治める『銀雪の森』です。


 『銀雪の森』は常に雪が降り続ける森のダンジョンで壁は生け垣と雪の壁で出来ています。そして、ダンジョン外に向けて強い風を吹かせることによって、『銀雪の森』周辺では常に極寒の環境と化しています。

 で、『銀雪の森』の主要モンスターはこちらに来るまでも散々戦っていたスノードッグに氷精霊等の氷属性のモンスターばかりです。

 それとどちらかと言えば物理防御は高いが魔法防御は低いというモンスターが多いようですね。道中出会ったスノードールというモンスターなどはクエレブレの鱗製短剣でもまるで歯が立ちませんでしたが、≪霧平手≫なら簡単に倒せましたから。


閑話休題


「はあ。どうにかしたい所ではありますが、私たちの実力では『凍てつく銀の雪翁』には勝てませんし、どうしようもありませんわね。」

 私はため息をつきながら『銀雪の森』を見ます。


「魔王と戦うなら最低でもレベル10の人間が4、5人は欲しいですからねえ。アタシたちのダンジョン内補正を生かす形で戦うとしてもレベル6か7は欲しいですよねえ。」

 ホウキもどこか遠い場所を見つつ呟きます。


「しかもそれでギリギリですからね。僕ならそのレベルで挑むのは絶対に嫌です。」

 チリトも休憩を取りつつ話を合わせます。


「何にしても、今回の私たちの目的は攻略ではなくレベル上げです。無理にダンジョン内に突入する必要はないでしょう。」

 アリアがまとめの様に言います。


「それもそうですわね。それなら本州やこの近辺で隠れている人間のためにもダンジョン外に出ている魔性を端から倒していきましょう。例えダンジョン外でも数を稼げばレベル上げになるはずですから。」

「はい。」「分かったよ。」「了解です。」

 そして、休憩を終えた私たちはかまくらの外に出て敵を探し始めました。



-----------------



「熊が2体ですか。」

 敵を探し始めた私たちの前には2体の熊が現れました。片方は白い毛皮に氷の爪を持った熊型モンスターで、もう片方は身体の要所に≪凍銀鎧≫を身に着けた茶色の熊型モンスター。

 チリトの≪姓名解析≫によると白い毛皮に氷の爪を持った熊はスノーベアで≪凍銀鎧≫を付けた熊は雪ヒグマと言うそうですわ。


 …。そう、別種なのです。この二体。スノーベアは直訳すれば雪熊のはずですのに。


「リョウお嬢様。なぜ、別の種類なんでしょうか?」

 ホウキがスノーベアの方を警戒しつつ私に聞いてきます。


「恐らくスノーベアは雪翁が≪魔性創生≫で生み出した魔性。雪ヒグマはヒグマを≪魔性創生≫で眷属化した生物なのでしょう。」

 アリアがスキルの準備をしつつホウキの質問に答えます。


「つまり、僕らで言うところの霧人は雪ヒグマで、アリアさんたちミステスはスノーベアってことですか?人型と熊型の差はありますけど。」

 チリトが雪ヒグマを動きで牽制しつつ返答します。


「確か『凍てつく銀の雪翁』は以前からダンジョン周辺の野生生物を狩っているという話があったはずですが、恐らくはそれの結果がこれですわね。」

「そうですね。それに大型野生生物と言うのは知力以外は人間以上のものばかりですから、制御可能な要所要所で使うなら眷属化するだけの価値はあります。」

「自律的な行動をさせるには向かなくてもこうして相手を絞って使うなら人間の眷属よりもいいという事ですか。」

「おまけにダンジョン外補正を受けても元々のステータスが高いから十分脅威ですね。」

 私たち4人はそれぞれの言葉に納得します。

 そして、私たちがそうして話し合っている間も徐々に2体は距離を詰めて来ています。


「しょうがないですわね。アレを使います。」

「何か秘策でも?」

「秘策と言うよりはスキルですわ。効果時間が短いので発動したら戸惑わずすぐに攻撃をしてくださいませ。」

「分かりました。」「分かったよ。」「了解です。」

 私はスキルを使うために構えます。


「「GURUAAAAAAAAAA!!!」」

 そして私が構えた所で2体の熊が襲い掛かってきます。


「っつ!行きます!≪霧の帳≫!」

 私は急いでスキル≪霧の帳≫を発動します。すると周囲に大量の霧が発生していきます。そして同時に…


「「GAAAAAAAAAAA!!!」」

「くっ…え?」「キャ…あれ?」

 私たち全員のダンジョン外のステータス補正が外れてステータスが大幅に上昇します。

 その結果としてチリトは雪ヒグマの≪凍銀鎧≫付きの突進を受け止め、ホウキはスノーベアの強力な爪攻撃を防いでいます。

 二人とも本来なら防げるはずのない攻撃を防げていることに驚きを隠せないようです。


「なるほどこれは素晴らしいですね。≪霧爆≫!」

「GYAAAAAAAAAAA!」

 アリアが驚きつつも≪霧爆≫で攻撃します。そしてその一撃は雪ヒグマを一撃で砕き飛ばしました。


「ですが、効果時間は一分もありませんし消費も激しいですから、ここ一番でしか使えません。≪霧平手≫!」

「GUOOOOOOOOOOOOOAAAA!!」

 私は上昇したステータスをフル活用して、全力で掌底の形をした≪霧平手≫をスノーベアに放ち、打ち倒します。

 そして、スノーベアを倒したところで≪霧の帳≫の効果が切れます。


「ふう。それにしても疲れましたわ。」

「そうですね。リョウお嬢様。一時撤退しましょうか。」

「そうね。そうしておきましょう。」

 そうして私たちは剥ぎ取れるもの剥ぎ取った後その場から去りました。

05/12 誤字訂正

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