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蝕む黒の霧  作者: 栗木下
1:魔王降誕

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第54話

 くくくくく、くはぁくははくはぁ、あーはっはっはっは。


 いやはやまさか、手本があり、形だけの紛い物とは言えこの短期間で眷属の身分にある者がアウタースキルを使えるようになるか。

 面白い。実に面白い。これは一度直接会ってみたいものだな。


 となれば善は急げといこう。


 私は彼女たちの下に向かう事にした。



■■■■■



「何だあのスキルは…あんなスキル認めねえぞ…」

 『紅を撒く辛王』は『赤傾太極洞』の最深部に位置する自室で先の戦いを見ていた。

 その表情は側近の辛人たちが怯えるほど怒りに満ちている。


 だが、それもしょうがない事だろう。今回辛王が奴隷たちの反乱を抑えるために差し向けたのは自らの眷属である辛人や有象無象の魔性だけではない。辛棘蜥蜴はこのダンジョンに生息する高い思考能力を持たない魔性の中では最も強い魔性であり、カプシカマンは辛王が生み出せる中では最強の魔性のはずだった。

 

「あんなチートみてえなスキルがあってたまるか…」


 が、その二匹がたった一人の侵入者の放ったスキル一つでやられた。

 こんなことがあっていいはずが無い。仮にあの人間が実はどこかの魔王の眷属だと考えたとしてもあんな技を持っていていいはずがない。それが辛王の考えだった。


 実際にこの考え方は間違っていない。

 この世界にスキルをもたらした魔神の趣味なのか、それとも別に意味があるのかは本人のみが知るところだが、少なくとも魔神がこの世界の生物に与えたスキルには『準備なしでも放てば100%相手を殺害できるスキル』というものは存在しない。まあ『多大な準備をした上で放てば100%相手を殺傷できるスキル』というものは存在するのだが。


閑話休題


 とにかく辛王は考える。今後この侵入者たちが奴隷を引き連れてこちらに向かってきた場合返り討ちにできるかを。

 結論から言えば罠を絡めて戦えば返り討ちにはできるだろう。ただし、多くの犠牲を払う事になる。そうなれば近場に居る別の魔王に攻め込まれることになる。そして、そちらまで含めて撃退することが出来るか。と問われれば辛王は厳しいとしか思えない。

 そもそもこの考えはあの侵入者たちがこれ以上の隠し玉を持っていないことを前提にしたもので、仮に辛棘蜥蜴とカプシカマンを葬ったあのスキルの正体が掴めない限りは間違っても“絶対”という言葉は使えないとも辛王は考える。


 辛王は一人で延々と唸っていた。



■■■■■



「撤退ですか。」

「ああそうだ。見ての通りこちらの最高戦力はSP切れを起こしちまってる。」

 そう言ってアタイはイズミにおんぶされたイチコの方を見る。


「それにこの階層に関しては全部調べて救える人間は救ったわけだしね。この先に行くメリットが薄い。というのもあるんだよ。」

「で、でもこの人数で挑めば魔王だって倒せるかもしれないし…この先にだって捕まっている人間がいるかも…」

 一人の人間がアタイに向かってそんな事を言ってくる。


 まあ、こういう意見を言う人間は出てくるか。

 でも、全く持って甘いねえ…


「悪いけど、魔王はアンタたちが思っているほど弱い存在じゃない。さっきの蜥蜴にトウガラシ男を見ただろう?魔王はアレの何倍も強いんだ。はっきり言って今のアタイたちじゃ何千人で挑もうが返り討ちにあうだろうね。」

 アタイの言葉に何人かが息を呑み、ありえないと言った表情を見せる。


 でも、それが事実だ。アタイは狐姫様の本気。というものを一度だけ見たことがある。

 あの時狐姫様は一瞬で何十人といた軍の精鋭を真っ二つにしていて、あまりの速さに軍の人間達は自分が死んだという事実にも気づけていないようだった。

 そして、恐らくはあの二人の主である『蝕む黒の霧王』もこのダンジョンの主である『紅を撒く辛王』も似たようなことが出来るとアタイは考えている。

 そう、魔王討伐に必要なのは凡百の存在が寄り集まった集団ではなく、一人一人が勇者と褒めたたえられるような存在が集まった集団であり、1がいくつ集まろうと魔王には勝てず、魔王に挑むためには最低限必要な実力のラインと言うものがある。

 それがアタイが狐姫様の本気の戦いを見て学んだことだ。


「それに恐らくだけど次の階層からはここのように使いやすさを優先した場所じゃなくて本格的に侵入者から自分の身を守るための階層になっているだろうね。」

「だ、だが…まだ助けを…」

 まだ生きている人間がいる。か。


「有り得ないね。辛王は確かに後先考えずに人間を狩りつくそうとする奴だけど、さっきの二体を倒してから増援が一切来ない事を考えると、恐らくはこの先で準備を万全にして待ち受けているんだろう。そんな奴ならこの先に生きた人間を入れるとは思わない。少なくても辛人にはしているだろうさ。

 まあ、命を捨てたい。というのなら、いっそ辛王じゃなくてアタイとこの子の糧になってもらいたいんだけどさ。」

 アタイがイズミの肩を叩きながら言った言葉に全員が俯きながら黙る。


「分かったなら早いところ北に逃げるよ。なにせこの人数だ。外に出てからも辛王の追撃はあると考えるべきなんだからね。」

「お、おう!」

 アタイの言葉に人間達が一斉に外へと向かって走り出す。そしてアタイたちは『赤傾太極洞』から撤退した。

いつも感想・評価・意見・登録ありがとうございます。


05/11 誤字修正

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