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蝕む黒の霧  作者: 栗木下
1:魔王降誕

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第48話

イチコPT編

「イヤアアアアアァァァァァ!」

 アタイの絶叫が森の中に響き渡る。


「ブモオオオオオオォォォォォ!」

 そしてアタイを追いかけるように赤い牙を生やした巨大な猪が赤い粉塵を撒き散らし、間にある樹木を破壊しつつ突進してくる。


「ああもう、何でアタイがこんな目に!」

 アタイは思わず大きな声を上げるが、その声に答えるのは猪だけで、一緒にこの国に入った二人は事情があって今アタイの近くにはいない。


「でも、ここまで来たわ!喰らえ!」

 アタイはその場で反転し、スキル≪火の矢≫を猪に向かって発動させる。

 そして≪火の矢≫が猪に当たった瞬間…


ドオオオオオオオオオオオオンンンン!!


「いやああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 巨大な爆発が起きてアタイは吹き飛ばされる。どうやらあの猪が撒き散らしている粉塵は強い引火性があるらしい。

 そして、一瞬宙に舞ったアタイが地面に叩きつけられたところに煙を吹き飛ばしつつ猪が突っ込んで来るのが見えた。どうやらあの猪の毛皮は高い耐火・耐爆性能を持っているらしい。が、その突進がアタイに届くことは無い。なぜなら、


「囮役ありがとうございます。後は任せてください。」

「(コクリ)」


 まずは木の影からイズミが飛出し≪生体武器生成・斧≫を発動して骨で出来た斧を作り出し、それで猪の太い足を断ち切る。


「ブモオオオオオオオオ!?」


 そして続けてイチコが傷を負ってのた打ち回る猪に向かって≪短距離転移≫から≪首切り≫を発動することによって止めを刺す。

 猪は首を切られてもしばらくの間痙攣するように動いているが、しばらくしてその動きを止める。


「ふう。何とかなりましたね。」

「はあ、間一髪だったよ…」

「(おつかれ)」

 猪の近くにアタイたち三人は集まり、剥ぎ取りをしつつ互いの労をねぎらう。

 さて、どうして猪を狩るような事態になったのか、そこをそろそろ語るべきだろう。事の始まりは一週間前に遡る。



■■■■■



「街なのにまるで人が居ませんね。」

「(いないねー)」

「沿岸警備隊ぐらいならいてもおかしくないんだけどねえ。」

 私たちが海を越えて大陸に繋がるこの国に入った時。まずはこちらの状況を知るために住民を探すことにしました。言語に関してはこの国も先進国のはずだから先進国なら一応英語が通じると考えています。


 そして、しばらく歩き回って見つけたのはこの国の魔王の眷属でした。


『何者だ貴様ら!』


 ええ、もちろん逃げました。で、物陰に入った瞬間に始末しました。


 で、ここからが大変でした。

「すごい数ですねまったく。」

「しかも何だい。あのスキルは…」

「(めがいたいー!)」


 どうやらこの国の魔王の名は『紅を撒く辛王』といい、その眷属は『辛人』だそうで、所有スキル≪紅の粉塵≫は催涙性の紅い粉塵を私たちの≪霧の衣≫の様に纏うスキルとのこと。と言っても、一瞬なら問題ないようですが。で、ここまでがクロキリを通じた国からの連絡で分かったことです。

 さて、なぜ先程から大量の辛人が襲ってくるのか。


 襲ってくる理由は分かります。私たちが侵入者で辛人を一人倒したからです。

 分からないのはどうやってこの数の辛人を用意したかです。


「心当たりなら一応あるけどねえ…」

「そうなのですか?」

 敵に見つからない様に小休止しつつムギさんは何かを考えるような顔をしています。


「ああ。数に関しては捕まえた人間をスキルやステータス関係なしに眷属化していると考えれば納得できる。」

「でも、それならどうやってこの場まで…」

「『長距離転移陣』」

「…っつ!そういう事ですか。」

 その言葉で私は理解しました。つまりは厄介な敵なら見つけた時点で味方を総動員して確実に潰す。というわけですか。

 確かに今の海を越えられるような実力者はそうそう居ませんからね。


「しかし、相手が『長距離転移陣』を使えるなら…」

「まあ、連絡は必要だろうねえ。というかもう狐姫様にはしてあるよ。」

「(クロキリ伝えた)」

「そうですか。」

 二人とも主に忠実ですね。特にイズミは本性を知らないとはいえクロキリに報告できますね。


 私はそんな二人に呆れつつ、私たちは辛人に見つからない様に街の近くにあった森の中に逃げました。


 で、そこで会ったのが…巨大な紅い牙を持つ猪でした。全身からは辛人のものと同じものと思われる粉も放っています。


「「「…。」」」


 私は一瞬唖然としつつも猪の倒し方を考えます。で、結論。


「ムギさんはスキルであの粉をどうにかしてください。イズミは強化スキルを使って自己強化後にムギさんに続く形で足に不意打ちを、」

「アンタは?」

「私はイズミの後に続いてトドメを刺します。では、ご武運を。」

「(がんばって)」

「えっ、ちょ、まっ!」

 そう言って私とイズミは潜伏しました。



■■■■■



 で、半ばやけくそ気味に≪狐火≫を一発放ったところで猪が追いかけてきて冒頭の状況と言うわけだ。


「さて、これからどうするんだい?」

 アタイは二人に聞く。


「まずは相手の位置を探ります。ダンジョンに入って戦うにしてももっと大陸の奥の方に行くにしてもこれが分からないと危険すぎますから。」

「(どういー)」

 なるほど。


「そういう事なら早く行った方が良さそうだね。」

 周囲の森が少しづつ騒がしくなる。恐らくは猪が倒されたという情報が向こうに伝わって辛人が集まって来たんだろう。


「そうですね。急ぎましょう。」

 そして、アタイたちは森の奥へとその姿を消した。

05/07 少しだけ改稿

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