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蝕む黒の霧  作者: 栗木下
1:魔王降誕
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第42話

ちょっと前回から時間軸が戻っています。

 『白霧と黒沼の森』をイズミと一緒に旅立ってから2週間。道中観光をしつつも徐々に治安が悪くなり、食料や生活必需品の供給に不安を覚えている人が増えていくのを私は見ました。原因は空と海の魔王たち…だけではありませんね。我が国は輸入大国でもありますから他国での魔王被害がここに来て本格的に表れ始めた。と言うべきなんですかね。


 おまけに私とイズミだと、見た目的に襲いやすいのかここ1週間ほどは毎日何かしらのトラブル(クロキリ含む)が起きます。

 うん。本当に大変でした。食糧よこせや金よこせの暴漢は別にいい経験値稼ぎでしたが、クロキリにいきなり呼び出されて『長距離転移陣』をセクハラしながら刻まれた時は全力で切り殺してやろうかと思った。眷族と主の関係があるから出来ませんでしたけど。


 で、そんな私たちですが、今の目の前には西の古都と、その古都の近くに出現したダンジョン『戦獣達の狐都』、そして金髪に狐耳を生やした一人の女性が立っています。年は20代前半といったところですかね。


「初めまして、久野イチコに茲炉イズミ。アタイは『百獣纏う狐姫』様にお仕えする。『狐人』不知火ムギだ。あんたたちに狐姫様からのメッセージを伝えるよ。」

「これはご丁寧にありがとうございます。」

 私とイズミは紳士的な対応をとる相手には紳士的に返そうと思っているのでムギさんに軽く会釈をしておきます。


「うん。礼儀があるのはいいことだね。じゃ、メッセージだけど、『妾のシマに入る事は止めぬ。が、妾のシマで勝手な真似を許す気はない。人を狩るつもりならそこにいるムギが許した相手だけにし、妾の迷宮に入るならば全力でお主らを狩らせてもらう。』だそうだ。」

 つまり滞在するのは構わないけど、経験値稼ぎをやらせる気はない。と、


「分かりました。こちらとしても狐姫様と争う意味はありませんし、そうさせてもらいます。」

「(たたかわないよー)」注:筆談です。

「そりゃあよかった。アタイとしても『霧の粛清』の実行犯なんかと戦いたくはないからね。受け入れてくれるならそれに越したことはないよ。」

 ムギさんは心の底から安心したというような表情を見せています。


「あーでもさ、狐姫様のシマで経験値を稼がないとしたらどこで稼ぐつもりなんだい?」

「そうですね…。」

 確かに問題ではあります。そもそも狐姫の機嫌を損ねたくないのは、彼女がこの国の西側を実効支配している上に、クロキリの勢力拡大を阻止してくださる貴重な戦力だからです。

 となると…


「海を越えて大陸の方で稼ごうと考えています。」

「ハア!?」

 ああ、やっぱりそういう顔になりますか。まあ最新情報では大陸につながる半島までの最短航路でさえ、出航した船の10隻中6隻が行きで沈み、帰りにもう3隻沈んで、帰ってくるのは1隻だけという話ですからね。しかもその1隻もボロボロという。


「しょうがないでしょう。X-J5は未だに引きこもりで侵入不可ですし、そちらのシマを荒らさないとするならそれぐらいしか方法がないのですから。」

「それは…確かにそうだけどさ…。えっ、あー、ちょっと待ってね。」

「(?)」

「はい。はい。えっ…!」

 恐らくは狐姫との通信ですね。そう言えば眷族通信に距離的な限界などはあるのですかね?


「あー、イチコちゃんだっけ?今、狐姫様から通信が会ったんだけど、一度お会いしたいんだって、そういうわけでとりあえず今夜はウチの指定する宿に泊まってくれるか?」

 むっ。これは意外と困る申し出ですね。一応は敵地なのですし。ですが、断るとなると更なる問題が…


「(おいしいものある?)」

「勿論あるでーイズミちゃん。」

 行きましょう。今の私にとって食事は嗜好品でしかありませんが、嗜好品でしかないが故に大切でもあります。それにどれだけ食べても霧人の体なら全て魔力などに変換されるので何の心配もありませんしね。


「それでは、その申し出。喜んで受けさせていただきます。」

「おー、本当にありがとうな。なら精一杯おもてなしさせてもらうから安心してな。」

 そうして私は狐姫が統治する古都に足を踏み入れ、彼女らが指定する宿に泊まることになりました。

 宿の中身はもちろん素晴らしいもので、久しぶりにお風呂にも入れました。疲れという疲れが吹っ飛んだ気もします。


 そして、草木も眠る丑三つ時。寝ているイズミを見守っていた私の前に彼女は現れました。

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