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蝕む黒の霧  作者: 栗木下
1:魔王降誕

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第41話

「百機の飛行機と百隻の船を出しても太平洋を越えられたのは0…ですか。酷いですわね。」

「この前うちの国が万全の態勢で出したはずの輸送団の話ですね。」

 私は『霧の粛清』でイチコと別れた後、一か月間自宅に引きこもっていました。

 けれど、このままではいけない。と思い、出て来たのが今朝で、そこでテレビから流れたのがこのニュースです。


「どうしてこんなことになりましたの…?」

「旦那様によりますと世界中の海底と上空に今まで見つかっていなかったダンジョンがあり、そこの魔王たちが積極的に行動し始めたのが原因だそうです。」

 なるほど。となると、今の状況は…


「で、当然ながら食料や資材の問題が起き始めています。この国は資源が少ないですから。」

「もしかしなくても不味い?」

「不味いですね。おかげでこの状況を打開できるスキルを持った方々は国から頭を下げられてスキルを使っています。ちなみにリョウお嬢様にも治療系スキルを生かしてほしいというお願いが来ていますよ。」

 い、一か月間自室に引きこもり続けていたのはさすがに不味かったですわね…眷属化のおかげで食事も睡眠も嗜好品化していたから誰にも迷惑をかけていないと思っていたのですけど。


「そ、そう言えばクロキリは何をしていますの?クロキリの立場上このような状況を黙って見ているとは…」

「さあ?ただ捨て子と軍人を中心に眷属は増やしているみたいです。後は転移魔法陣と言うものを設置したようですね。こちらはリョウお嬢様にも連絡がいっていたと思いますが。」

「あー、そう言えばそんなものもあった気が…。」

 ホウキはクロキリの今を殆ど知らない…か。


「ちなみにこの辺りはクロキリ様のおかげで治安もいいですけど、北の方などは魔王が攻め込んできていて大変なことになっているそうです。」

「西の方は?」

「クロキリ様と狐姫様の間に何か密約があって、互いのシマには手を出さない。という話が聞こえてきますが詳細は不明です。時期的にイチコ様が何かをしたとも言われていますね。」

「…。」

 イチコが…。いえ、あの子の事はもう気にしない。あの子は自分の意志で自分の道を選んだ。そう、あの子はどんな手段を使ってでも一つでも多くの命を救い、狩る道を選んだ。

 けれど、私は人のまま死ぬはずだった人たちを、人を捨てさせてまで助けようだなんて考えられない。だから私は助けられる人は助けるけど、死ぬ人はそのまま死なせる。

 いいえ、それだけではいつまで経っても憎いあの男(クロキリ)は殺せませんわね。もっと私自身が強くならなければいけない。そのためには…悔しいですけどクロキリと交渉しなければ。


「リョウお嬢様どちらへ?」

「クロキリに会ってきますわ。」

 私は席を立ち、地下へと向かいました。



---------------



「で、具体的にはどうして欲しいんだ?」

 私の前には霧状態のクロキリがいます。


「具体的…と言われましても…」

「言っておくが、イチコの稼いだ経験値はあの日からピンハネ分以外は全部イチコに流れているからな。」

「それは何となくですけど分かっていましたわ。ですからそれ以外で、です。」

「となるとこの先の経験値は自分で稼ぐしかないな。つまりお前に今必要なのは自分で経験値を稼ぐ手段という事になる。」

 クロキリは私の耳元に口を出し、囁いてきます。


「まっ、そういう事なら一つ稼ぎのいい狩場でも教えてやる。というか、今現在うちの国で問題が起きている地域があるからお前が行って解決して来い。」

「ダンジョン内でなければ大した経験値にはならないと思いますが?」

「数が多いから問題ねえよ。お前も聞いてるだろ?北の魔王『凍てつく銀の雪翁』が生んだ魔性が南下してきてるって。」

「そう言えば聞いた覚えがありますわね…。」

「と言うわけでミステスを一匹付けてやるから、お前、ホウキ、チリトの三人で一緒に行って来い。装備品と移動手段もあるから安心しろ。」

 そう言ってクロキリはどこからともなく靄大狼の毛皮製とかいうコートとブーツ、それに鱗のようなもので出来た短剣を押し付けてきました。


「これで頑張れ…と?」

「いつか自分を殺すと明言している奴に対する支援としては有情的だろうが。」

「…。分かりましたわ。いつか絶対に吠え面をかかせてあげますから覚悟していなさい。」

「へいへい。っと」

 そうして私はお父様に挨拶をすませた後、ホウキ、チリトにミステスのアリアと共に北へと向かう事になりました。

 目標はただ一つ。クロキリを私の手で倒せるほどに強くなること。その為ならば、魔王も人間も利用し尽くしてあげますわ。


「イチコ。私は貴方とは別の道を行かせていただきますわ…。」

05/02 誤字訂正

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