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蝕む黒の霧  作者: 栗木下
3:深い世界

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143/157

第142話

ちょっと地上に戻ります。

 リョウたちが『深淵の宮』の攻略をしている一方、『白霧と黒沼の森』にて、


「さて、一通りの指示は出し終わったか。」

 俺はイチコたちを『深淵の宮』の前にまで送った後、各地に配備した霧人達に指示を出していて、今それが一通り完了した。


 俺は自分の左手を見る。

 今の俺は人間形態を保っているはずなのだが、左手を始めとして体の各部で時折形が崩れて黒い霧に変化しては元に戻っている。

 おまけにそうやって形が崩れる時には鈍痛が崩れた部分に襲い掛かってくるから、堪ったものじゃない。


「やっぱり無茶だったか。」

 こうなった原因は考えるまでも無く『超長距離転移陣』の発動だ。

 本来の『超長距離転移陣』の発動日は今日ではなく明日だった。そして『転移部屋』の各種構造物もそれに合わせて作成・配置してあった。

 それを今日使ったのだから当然その分だけ俺にかかる負担も大きくなり、その結果がこれだ。

 だが、いつまでもこんな状態になり続けているわけにはいかない。イチコとリョウの二人には突入したメンバーで手に負えない様な相手が居た場合には俺を呼び出すように言ってあるし、呼び出されたその時に戦えませんじゃ格好がつかなさすぎる。

 だから早急に失った分の力を補給する必要がある。


ブーーーーーーーーーーー!!


 それ故に今、適度に侵入者が来るのは都合がいい。

 俺は侵入者が出たという知らせを受け取って第3階層へと移動した。



---------------------



 さて、今更な話だが『白霧と黒沼の森』には大量の水が流れを持って存在している。

 その流れは当然ながら外にも続いていて、『白霧と黒沼の森』の外に元々あった川に続いている。

 で、今回の敵は揃いも揃って水生系であり、俺のダンジョンに川を介して密かに潜り込むことが出来るだろう。そして、俺が奴らにとってどういう存在であるかと言えば最優先で潰したい対象の一人であろう。

 となればだ。奴らの考える事はこちらの考えた事と同じ。


「やっぱり来たか。」

 暗殺だ。

 尤も、さすがにダンジョンに入ってもモンスター一匹おらず、数分で暗殺対象である俺と出会うとは思わなかっただろうから、侵入してきた20匹ほどの半漁人たちが唖然とした表情を浮かべるのは当然だが。

 ただ、集団の中の一匹。豪華な装飾の付けられた鰓と鋭い爪が特徴的な半漁人。恐らくはこちらのノーブルミスト相当の仮に半漁人リーダーとでも言うべき個体。そいつは落ち着いた様子でこちらを見ている。


「ふん。わざわざ出て来てくれるとは好都合だ。ここでその命取らせてもらおうか。」

 半漁人リーダーがそう言いつつも集団の中でも後ろの方に下がっていく。どうやら先頭に立って戦うタイプではなく、後方で指揮をするタイプのようだ。


「さあ、この数!どうにかできるならしてみるがいい!!」

 リーダーの指示を受けて半漁人たちが獲物を振りかざして一斉に襲い掛かってくる。


「ハッ!甘えよ!!」

 が、この程度の危機は今更だ。


「『全てを蝕む黒き霧よ。集い統べられ分けられて無数の球と成り、世界を回り巡り廻りてこの世の肉と魂を抉り削り切り裂いて我が下へと返せ。』」

 無数の半漁人の爪が俺に迫りくるが、俺の全身は詠唱の進行に伴って無数の黒い球体に変化していく。その事に気づかず半漁人たちは爪を振り続けるが、やがてリーダーが黒い球体に気付いて急いで逃げるように指示を出す。

 だがもう遅い。


「『アウタースキル・ムノセンコク』」

 アウタースキルの発動と共に周囲に浮かんでいた無数の黒い球体が半漁人たちを取り囲んだままゆっくりと動き出す。


「くそっ!円陣を組んで警戒しろ!何が来るか分からんぞ!」

 半漁人リーダーを中心に半漁人たちは円陣を組む。

 しかし、俺はそれを意にも介さずムノセンコクの回転スピードを少しずつ少しずつ上げていき、徐々に半漁人たちを囲む円も小さくしていく。


 そして、一匹の半漁人の爪先がムノセンコクに触れる。


「ギャアアアァァァ!?」

 その瞬間、ムノセンコクが触れた部分の体が削り取られて、その分だけ俺のHP等が回復していく。


 さて、アウタースキル・ムノセンコクについての説明をしておこうか。このスキルを構築するスキルは三つ。≪蝕む黒の霧≫、≪循環≫、≪気体分別≫だ。

 具体的には≪蝕む黒の霧≫の黒い霧を≪気体分別≫で凝集して球体化、そこに≪循環≫によって二種類の回転、つまりは球体一つ一つをドリルの様に回転させた上で球体全てを敵を取り囲むような竜巻状の回転をかける。


「畜生!出せ!出しやがれ!」「助けてくれ!お願いだから!」「こんな死に方は嫌だあああぁぁぁ!!」

 そして、その結果が目の前の惨状である。

 ムノセンコクは徐々に一点に集まっていき、その道中で邪魔者。つまりは半漁人の体を容赦無く削り取っている。

 で、この状態は中に居る連中にしてみれば触れれば即ミンチの壁が全方位から迫ってくるわけだからな。この上なく恐ろしくてエゲツナイだろう。


 ま、止める必要も義務も情けも無いから全員ありがたく俺の養分になってもらって終了だけどな。

 それに、これで多少は回復したし呼ばれた時には問題なく戦えるだろう。いやー、良かった。良かった。本当にごちそうさまです。

07/31 誤字修正

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