第138話
チリトたちがゲートをくぐってこちらに出てくる。
「これは……凄いですね……。」
チリトがゲート周囲で蠢く構造物を見て思わずと言った様子で呟く。
さて、チリト以外の連中もイズミを除いてこの『超長距離転移陣専用立体構造型多因子自動調整式補助魔法陣』……長いし、『転移部屋』でいいや。『転移部屋』の光景に唖然としているようだし、早いところ声をかけてやるか。
「お前ら長期間の任務ご苦労様。」
「あっ、霧王様。」
「クロキリ兄ちゃん久しぶり。」
俺はチリトたちに人間形態で声をかけてやる。
それに対してチリトとイズミの二人は普通に返すが、他のメンバーは完全に凍りつく。
あれか?取って食われるとでも思っているのか?失礼な。俺が取って食うのは可愛い子だけ……うん。この場に居るメンバーなら十分範囲内だな。凍りつくのが当たり前だったわ。
「あー、心配すんな。さすがにこの流れで何かをしたりはしないから。とりあえず、あっちにダンジョン外に出るための扉を用意してあるからそっちに行け。」
俺は『転移部屋』の片隅に作っておいた『白霧と黒沼の森』の外に直接繋がっている扉を指差し、そちらに全員を誘導する。
そして、俺の誘導に従って転移してきたメンバーが『白霧と黒沼の森』の外に出て、俺は私室に移動。そこからフォッグを外に飛ばした。
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フォッグの視界にそれぞれがそれぞれの主に連絡を取っているであろう姿が映る。
その中で俺は地上近くまで移動して声をかける。
「で、目論み通りの物が出来たって事でいいんだよな。」
「霧王か。勿論そう思ってもらって構わないよ。」
ムギが俺の質問にそう答えてくれる。
「なら、時間も惜しいしな。早いところ狐姫に連絡を取って突入メンバーに渡せるようにしておいてくれ。俺は後をイチコとリョウの二人に任せて、『超長距離転移陣』の再起動準備に入る。」
「分かったよ。」
「わかりました。」
「任されましたわ。」
「あっ、僕はミバコたちに会いに行っていいですか?」
「好きにしろー。」
俺がフォッグのコントロールを放棄するとともにイチコとリョウがやって来て、代わりにチリトが『白霧と黒沼の森』の中に入っていく。
さて、とりあえず、チリトの家の周囲は丸一日ぐらいは立ち入り禁止にしておくか。高すぎる糖度のせいで中毒患者が出ても困るしな。
「じゃ、まずは魔源装置-MPの補給からだな。」
そして俺は『超長距離転移陣』の再起動準備を始めた。
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「これが今の情勢ですわ。」
「なるほどね。そりゃあ狐姫様も霧王も急ぐように言うはずだ。」
私のした現在この国に迫りつつある危機に関する説明にムギたちが納得と言った表情を浮かべています。
「この話。一般には?」
「まだ未発表です。なので内密にお願いします。」
ユキコという雪人の女性の問いにはイチコがそう答え、ユキコは雪翁に裏を取っているのか独り言のように喋り始めます。
「蛸王のダンジョンに突入するメンバーってもう決まっているの?」
最後に見た時とは随分と姿が変わったイズミが私に質問を問いかけてきます。
というか、よく見ると際どい格好ですし、狼の耳に尻尾も生えていて、一部特殊な嗜好を持っている人間が大歓喜しそうな姿ですわね。
と、質問に答えなければ、
「ひとまず、我が国の四魔王の配下から一人ずつは確定で出すそうですわ。」
「となると、クロキリ兄ちゃんの所からはリョウ姉ちゃん?」
「ええそうなりますわ。」
なお、現状では狐姫の所からはまだ未定ですが恐らくはムギが、雪翁の所からはユウと言う名前の腹心の雪人が、竜君の所からは今ここに居るハチさんが出るのではないかと言われており、そこにイチコと可能ならチリトが加わる予定です。
「イズミが加わるのは有り?」
「イズミに関しては本人が望めばむしろ参加してほしいとのことですわ。」
「うん。分かった。そう言う事なら参加させてもらうよ。」
ふう。イズミが加わってくれましたか。これは心強いですわね。
「ああ、それとウネにデボラさん…でしたわね。貴方方も望めば参加可能ですわ。」
「糖王様しだいだけド、たぶん大丈夫ネ。」
「私は問題ありません。」
二人とも大丈夫ですか。さて、そうなると現状の予定メンバーですと、
リョウ(霧人):指揮官 兼 サブヒーラー
チリト(霧人):解析
イチコ(半魔王):物理アタッカー 兼 回避盾
ムギ(狐人):魔法アタッカー
ユウ(雪人):物理盾 兼 サブ物理アタッカー
ハチ(桜火人):ヒーラー 兼 サブ魔法アタッカー
ウネ(糖人):補助
デボラ(神仕人):探索 兼 サブ物理アタッカー
イズミ(魔王):物理アタッカー 兼 肉壁
の計9人ですか。攻撃役5人、性質違いの盾3人、回復2人、支援3人……中々バランスがいいと思いますわね。
というか、このメンバーだと大抵の相手はオーバーキルになる気がしますわね。『這い寄る混沌の蛸王』という魔王が相手ですから油断はできませんけど。
「いずれにしてもクロキリの準備が済むまでに1週間ほどかかりますからその間は警戒しつつも休息ですわ。」
「だね。」
そして、この場は一時解散となりました。
実際並の相手なら間違いなくオーバーキルです。




