三人目「ええ、痛くないわ………
今回は若干の短めとなっています。やっと学校に入りました…
「では、土岐野くん。自己紹介お願いしますって先に先生が言っちゃったね。あははは。じゃ、改めてよろしく」
「……土岐野渉です。よろしくお願いします」
渉は教室の中、クラスメートとなる生徒達の注目を浴びる。
あの村から帰ってきた後、
「つまり、渉くんの超能力は、これから起こる未来をあらかじめ体験することができる、まさに未来予見ならぬ未来予験ってとこだね」
「未来予験……」
皆堂に呼び出され、渉の能力について話していた。
「まだどの未来を体験するか時間は指定できないみたいだし、発動条件もわからないけど、まあその辺はこれから鍛えていくしかないね」
「はい。頑張ります」
「いい返事だね。そうだ、実は今日呼んだのはこの事だけじゃないんだよね」
「この事だけじゃない?」
「そう。あと宗次くん達も関係ある話だからちょっと待とうか」
待つこと数分、部屋に宗次、愛風、かなの三人が入ってきた。
「今日みんなを呼んだのは学校についてなんだよね」
「学校ですか?」
「そう。かな君に至ってはまだ義務教育中だしね。君たち三人もなるべくなら高校に通ってほしいんだけど、どうかな」
「もちろん!俺は通いたいです」
「私も行きたい大学があったので高校で勉強しておきたいです」
宗次、愛風が答える。
「鬼灯たちはどうしてるんですか」
「鬼灯君は学校には通ってるよ。頼貴君はベック君やウォルフ君と一緒にあちこち飛び回っているからね。高校には行ってないんだ。渉君はどうする?」
「俺は、能力を鍛えるのに支障がでなければ通いたいです」
「それはもちろん保証するよ。ちゃんと学校に通いながらでも練習できるようにしてあげる」
と、かながおずおずと手を上げる。
「それで、その、学校はどこになるんですか…」
「学校なんだけどね、こっちの都合で悪いんだけど『斎納高校』って所に通ってもらうことになるね。中等部もあるからかな君も一緒だね。
この学校は私立で僕たちの関係者が設立した学校なんだ。だからなにかと融通がきくんだよね。ちなみに鬼灯君だけじゃなくて他の子達も通ってるんだ」
へえ(俺と宗次)、あら(愛風)、はあ(かな)、とそれぞれが反応する。
「しかし、時期が微妙じゃないですか。あと二ヶ月経たないで冬休みになりますよ」
「まあそこは慣れるという意味も含んでね。みんな結構の間学校に行ってないでしょ?勉強もそうだし、環境にも慣れないと。大丈夫、不自然にならないように配慮してもらうから」
と言われ、俺たちは斎納高校に転校してきた。
そして、準備して今日自己紹介をしているわけだが、
好意三、興味二、期待外れ四、無関心一、といったところか。適当だけど…
まあ最初から嫌われているよりはましか。
「土岐野には席についてもらう前に。実は!もう一人転校生がいまーす!」
おお!?、とクラスが若干動いた。その反応を期待してたのか、この担任はふっふっふと笑い、
「じゃあ水無瀬!はいってきてー!」
宗次が教室に入ると、きゃ、と一部女子から声が上がった(気がする)。
「水無瀬宗次です。趣味は体を動かすこと、スポーツ全般、特に水泳が好きです!微妙な時期の転校、じゃない転入ですが、よろしくお願いします!」
と、先程渉が挨拶した時よりクラスの反応がいい気がする(特に女子)。
「これでビックリすることなかれ諸君、最後に登場するのはー」
と、注目させようと担任が教室の扉を見る。が、誰も入ってこない。
ステステと教室の外に出ていく担任教師。
「なんだよ、まだ転入生がいるのか」
「次こそは女子、次こそは女子…」
「ふおおぉぉバカな、占条の占いが現実になるとワアぁぁ」
「甘いですよ科学さん、所詮、えすぱーではその程度が限界ですよ」
ぬぁにおーと教室は様々なざわめきが止まらない。
「さすがにこれは怪しいよな?」
「ていうか皆堂さん、不自然過ぎじゃないですか…」
「おまたせ野郎共!三人目の転校生は、この子だ!」
おお、と今度は男子から確かにどよめきが上がった。
「私は屋敷金穂という。ここで色々学べば一石二鳥と皆堂としゃべった!学ぶのは楽しいことじゃ!いっぱいしゃべってくれ!」
「金穂ちゃんは日本人だけど今まで、スロガリア?っていう国にいたからまだまだ日本語が不慣れらしいんだけど変な言葉教えないように」
「せんせー、スロガリアなんて国ありませーん」
「スロガリアはありますー。先生が中学生の時にできましたー」
『そりゃあんたの答案の上でだろ!』
クラス全員のツッコミが入るが、担任はいつものことなのかまるっきりスルーだ。
そういえば金穂の超能力について。
金穂はメタモルフォーゼ、簡単にいうといろんなものに変身できる能力らしい。
ただ金穂自身はあの狐以外の姿にはなった事はないらしい。そして、長年尻尾と耳を生やしたままでいたので、
「帽子かわいいなぁ」
尻尾は制服の中にかくす事ができたが、耳はそうもいかない。なので、能力をコントロールできるようになるまでは帽子をかぶりごまかすことにしたのだ。
新たな転入生三人に教室が蜂の巣をつついたように騒がしくなった。
「俺の話を聞けー!ということで、三人とも席はまとまってわったしのまえ〜。はい、ここ三列一つ後ろに下がる」
ずるっ!と文句が出つつも渉達のためにスペースがあく。
「せんせー席ないでーす」
「お前ら三人今日は空気イスだ。机も空気で」
『いやムリだろ!!』
教室後ろの三人のツッコミが被る。
「なんだよ~演劇部の見せどころだろ」
「先生俺演劇部じゃないですー。一緒にしないでくださくぃ」
「俺も俺も!」
「おまえは助っ人やったんだからもう演劇部の一員だろ」
「いや、勝手に入れるなよ!」
「はいそこで小劇始めない。じゃああとで練習に使ってる教室から持ってきていいから」
「ココ二階!ココ二階!準備室五階だから!」
その時、一限目の始まりを告げるチャイムが鳴った。
「あーあ、間に合わなかったなお前ら。では授業始めまーす。一限目が担任の授業で良かったな」
結局、後ろの演劇部三人(?)は空気イス&机で授業をするはめになって、宗次と渉は思わず苦笑した。
担任の先生は大桃胡桃。三年前にこの学校に来たらしい女性教師で、生徒への接し方と話し方、若さもあってか生徒達に人気の教師らしい。
元々は演劇部はなかったこの学校で、今年から自らのクラスの生徒を部員にし立ち上げた。
行動力が何よりすごい。最初の授業も金穂が気に入ったのか、ほとんどが金穂と話すことで終わってしまった。
でもその行動力のおかげで、三人同時に転入、という珍事をクラスメートたちは不思議に思うことなく受け入れてしまった。
それから午前の授業が終わり昼休み、
「ねえねえ水無瀬くん、一緒にお昼食べよ!」
「水無瀬!食べ終わったらサッカーしようぜ」
「屋敷さんて結局どこの国にいたの?」
「髪きれい。金穂ちゃんの髪の色って地毛なの?」
など渉の両隣では人垣ができている。その中には他のクラスの生徒も混ざっていた。
だから渉一人ぽつん、ということはなかった。
「土岐野、あたしらと昼飯食べようぜ」
「あー、俺も混ぜて有川氏。土岐野氏にはまだ聞くことが」
渉にも二人ほどではないがクラスの生徒が集まってきた。
有川、と呼ばれた女子が周りの机をくっつけ席を作り上げていく。
「はい、じゃあ食べようぜ!ほら、あんたはそっちに座る」
「あ、う、うん……」
「んじゃ改めて自己紹介するかな。あたしは有川恭。こっちの恭子の親友、くらいに覚えてくれればいいから。よろしく」
と渉の正面、有川はさばさばとした口調で自己紹介をする。
「ほら、次々」
「あ、えと、高梨恭子です。これからよろしくおねがいします…」
渉の右に座った、親友の有川につつかれながら高梨はおとなしく自己紹介をした。
「ちなみに趣味がお菓子作りだから仲良くなっておくといいことあるよ?」
「ちょっと、きょうちゃん、」
「いいじゃんヤスコ」
渉が一瞬混乱すると、
「あの二人は名前が同じ漢字なんですよ。けど読みがきょうとやす、だからお互いに読み方を交換して呼び合ってるんです」
と、渉の左に座っている男子が話しかけてきた。
「自分は文谷情事。情報の情に事件の事、で情事です。名前の通り情報屋やってるんで何か知りたいことがあったら教えますよ。そして土岐野氏についてなんですが他二人の転入生とはどんな関係ですかね」
と、自称情報屋、文谷は自己紹介だけでなく渉に質問までしてきた。
「こら文屋、土岐野をもってくな。で、土岐野は甘いものは好きか」
「文屋、じゃなくて情報屋です」
有川は文谷の言葉を無視し、渉の答えを待つ。
「え、ああ好きです」
「別に敬語とか使わなくていいぜ。甘いもの好きだってよ、よかったな」
「うん。…あの、今日は持ってきてないんですけどよかったら明日つくってこようと思うんだけど?」
高梨は渉に聞いてくる。
「菓子ってどんなのが作れるんだ?クッキーとか?」
「はい。あとはケーキとかキャラメルとか」
「ケーキ作れるのか。すごいな」
「いえ、ケーキっていってもショートケーキのようなものじゃないですよ」
「食べたことないかも」
「じゃあ明日ケーキ作ってくるね!」
高梨と約束した。その後も学校についてや文谷の話で盛り上がり気がつくとあっという間に昼休みが過ぎていった。
放課後、
午後の授業も終わり、渉は校舎の中を歩いていた。
有川たちに一緒に帰らないかと誘われたが渉にはやることがあったので断っておいた。
皆堂さんに聞いたところ、
「もし渉君が自分の能力を鍛えるつもりなら『自己探索部』に入るといいよ。あの部活は超能力者しか入れない部活だし、自分の能力を使いこなしてる子が多いからね。今の部長さんには僕から連絡を入れとくね」
と、言っていたので現在渉はその「自己探索部」の活動場所へと向かっていた。
宗次と金穂も来る予定だったが宗次は体育会系部活にも入りたいらしく一通り見学してから来るそうで、金穂は教室で新しくできた友達と話していたので置いてきた。
「宗次は自分で来るだろうし、金穂はあとで迎えに行けばいいだろ」
渉が目的地に近づいていく程人影が減っていっていた。
「部室があるのはこの廊下か?」
「なにか用かね?」
振り向けばそこには眼鏡で長身の男子とまぶたを閉じた髪の長い女子がいた。
「おや、君は、君はたしか土岐野君、だったかな?」
「あ、確か同じクラスの」
「そういえばまだ名乗ってなかったね。僕は居能科学。こっちは占条未来」
よろしく、と占条が頭をこくんとさせる。そして、何やら居能に小声で何か言っている。
「科学さん。もしかしてとうとうあなたの予言が当たるんじゃない?」
「なんと!そうだったのか!」
居能は叫び、渉の肩をつかむ。
「土岐野君、ここへは何をしに……」
何やら怖い感じだが渉は引きつつも素直に答えた。
「えっと、部活を探しに」
「やはり!」
また叫ぶ。しかも目の前なので肩をつかまれていたが渉は思わず耳をふさいだ。
「ふっふっふっ。今度こそ……!ついに!きた!土岐野君!僕は君の存在を待っていた。」
なにやら誤解されていそうな雰囲気である。
止めてくれないかと占条を見たが、なぜか泣いてもいないのにハンカチで目尻を拭いていた。
「さあでは部室に案内しようではないか」
「悪いけど、その手を離してくれる?」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
最後が誰だよ、って感じですが、まあ近い内に次話がのせられれば、と…………
今回は一般人(?)の新キャラが出てきて、この後渉の学校生活がどうなるか(は未定?)
次の投稿は多分この作品じゃないですね、わざわざここまで読んでいただきありがとうございました。