二人目続2
前回に続き二人目(2話)の続きその2です。
※こちらを読む前に前のお話を読むことをおすすめします。(というか読まないとわかりません)
「また変なのが出てきたぜ」
頼貴があきれ気味に肩をすくめる。
「余裕があるのも今のうちだぞ?」
「“マミー”!お前の能力を発揮しろ!」
「こいつも超能力者か!」
包帯人間はその六爪を地面に突き刺した。
同時に地面から包帯が飛び出て周りに倒れていた敵能力者の体に巻き付いていく。
「うぁ………」
「ぁあぁぅ………」
包帯に巻き付かれた者たちがうめきながら次々と立ち上がる。
「げっ、ゾンビか!?」
「頼貴、どちらかっていうとミイラよ。でもどちらも死者から蘇っているわけだしはっきりと区別する基準ていうとやっぱり包帯が巻いてあるかそれとも…」
「鬼灯よ、考え込むのは後にしたらどうだ」
ウォルフの一言でハッと鬼灯が自分の思考から戻ってきた。
「どうだ!これがマミーの超能力、不死者行進だ!」
「けっどのみち雑魚は雑魚だろうが」
頼貴が再び紫電を包帯集団に放つ。が、
「むだむだ」
「こいつらはマミーが操っているから例え貴様らに攻撃されようとも何度でも襲いかかる」
「さすがに無限に湧き出る雑魚には勝てまい」
「今さら後悔しても遅いがな」
と、白黒白黒と交互にしゃべり四人をニヤついた顔でにらみつける。
一方、鬼灯たち四人は一ヶ所にまとまり動かない。いや、すでに立ち上がった不死者たちに囲まれて動けない。
それを諦めととったかのか、白黒揃って腕を振り上げ、
「マミーよ、」
「やつらにとどめの合図を」
と言って同時に振り下ろした。
そして、包帯人間、マミーは頭からのけ反り吹っ飛んだ。
場が沈黙に包まれる中、ウォルフが構えたまま口を開く。
「右拳『マグナム』…不死身だろうが操っている本体を倒せば意味がないだろう」
その言葉と同時に包帯が緩み操られていた敵達が再び倒れた。
白黒の二人組は今度こそ策が尽きたのか四人に背を向けて逃げ出した。
「はあ……しかたがない。頼貴、白い方を頼む」
「りょーかい」
返事をすると、頼貴は指輪を一つゆっくりと振りかぶって投げ、ウォルフは体が地面と平行になるまで片足を上げ、その場で蹴りを放った。
紫電の槍と蹴りによる衝撃波が逃げた白黒を追い、槍が白に、衝撃波が黒に、それぞれの背中に直撃した。
ウォルフは何事もなかったかのように足を下ろし、
「さて、ここからは別行動を開始する。頼貴とベックはここに倒れている敵をまとめておけ。俺はあの白黒を拾ってくる。鬼灯はこのまま村に向かい例の少女のもとへ迎え」
「わかりました、じゃあねベック、頼貴」
「おう、気を付けてな」
「またね、ズッキー」
鬼灯は頼貴、ベックとハイタッチして一人、穂路端村への道を走った。
「やつらと戦ってるのはなぜですか?」
説明が一段落ついたところで再び宗次が質問する。
「それは、自分達の身を守るため」
「身を守るため?」
「そう。彼らの目的を果たす上で僕たちが邪魔だから、らしい」
「彼らの目的?」
渉以外も首をかしげている。すると、階堂が苦笑気味に答えた。
「世界征服、だよ」
「せかいせいふく、ですか?」
名加那かながあまりにも予想外だったのかそのまま棒読みで言った。
「そうだよ。今時小さい子ですら言わないようなことを彼らは本気でやろうとしている。しかも、困った事に彼らにはそれを成すだけの力があるんだよね。
これは最近手に入れた情報なんだけどね、これから仲間をどんどん増やし、最終的に人工的に造り出した超能力者達をまとめ上げその頂点に君臨するつもりらしい。
といっても彼らの下っ端からの情報だから信憑性は低いんだけどね」
渉はそれだけが目的じゃない気がすると思った。なら、二人がさらわれた理由は一体…?
「さて、眠くなる説明会はこれで終わり!次は体を動かそうか!」
次に渉たち四人は階堂のあとについていき、一通りの体力テスト、そして心理テストを受けさせられた。
体力テストに関しては宗次が一番で渉は運動不足を感じた。
心理テストは四人とも体を動かした後だったので終わった後更にぐったりしていた。
「ふむふむ、ほうほう…」
階堂は答案用紙を見ながら何やら呟いていたが、見終わると顔を上げ、
「お疲れさま、じゃあ最後に皆がどんな能力を持ってるのか、確認しようか」
「ここが穂路端村……」
鬼灯は単独行動を始めて目的の村に着いた。
隠れつつ様子を見ようとしたが、村には人のいる様子が全くなく、道は舗装されてなく土道で、あるものと言えば田んぼと数えられる程度の家だけだった。
目立つものと言えば村の中心に一際大きい家、というより屋敷が建っているだけだった。
…家があるということは完全に無人というわけでもないはず。
となると一番怪しいのはあの大きな屋敷。
一番立派だし、よく見ると屋根が少し沿ってとがっているのが耳、にも見えなくない。
まるで昔話に出てくる村みたいな場所ね。もしかしたら村人全員が頭には獣耳、おしりには尻尾が生えてたりして。
鬼灯がそこまで考えているとちょうどその家からぞろぞろ人が出てきた。
そのほとんどが年寄り、せいぜいが働く盛りの男の人しかいなく、子供、又は若い成人がほとんどいない。
人が出てきたのに気づいた鬼灯は近くの木に飛び移った。
どうやらそれぞれの家に一度戻って行くらしい。が、数人は家の前に留まり話し合っている。
「侵入するなら今ね。そういえば別に皆耳をつけてるとか、頭にリンゴをのせてるとか、そういうことはないのね…」
余計なことを考えつつも木から移動を始めた。
「やっぱり屋根から侵入できたわね」
鬼灯は屋敷の床に静かに下りた。
この屋敷は特別なのか、村の様子に比べれば遥かにきれいで質素な装飾もほどかされていた。
中は薄暗く、電気ではなく燭台が置いてあるだけだった。そして、獣耳少女は目の前の障子戸の向こうにいるらしい。
戸を開けようとすると中から鬼灯にかかる声があった。
「なんじゃそこの者、用があるならはよ入らんか」
ほおずきがなぜ、と動きを止めると、
「灯りで影が浮き出ておるのじゃから当然であろ。それも、見知らぬおなごの影ではの」
「私は敵じゃないわ。あなたを傷つけるつもりはない」
「そんなことはどうでもよい。それより早くこっちに来てしゃべりたまえ」
その一言でほおずきは障子戸を開けた。
そこは豪奢な造りになっていた。
紅の柱、金の布で部屋中が装飾されて、畳には傷一つなかった。この部屋の主は明らかに祀られていた。部屋の奥、部屋の主がいた。
部屋の主はうつ伏せで両手で頬杖ついてこちらを見ていた。
顔は大人びていてややつり目、金、というよりは狐のような黄色に近い髪の色だった。
やはり、頭にはとがった耳が生えており、きれいな背中のラインに続く柔らかそうな臀部には先が白くなっている尻尾が…
「ってなんで裸なのよ!」
「ん?わざわざ羽織る必要もあるまいて。それよりそちはどこから来たのじゃ!そこはどんなとこなのじゃ!」
「ま、まずは服を着るー!」
いくら女の子同士とはいえやはり気になる。
特に胸とか…いやいや別に大きいなぁとかじゃなくてそんな見たっていうかちらっとしか、しかもうつ伏せだからきっとそう!寄ってるだけ寄せて上げてるだけ…!
「ったくしょーがないのう。と、?そち、さっきから何をぶつぶつ唱えておるのだ?」
「!別に、なんでもないなんでもない!なんでもないよ?」
狐少女は着物の袖を通すだけで、再びねっころがる。
「一人でぶつぶつ唱えるだけなら村人達と同じでつまらん。せっかくなのだ、そちの話を聞かせておくれ」
「あなた、」
「金穂様、と呼ばれておる。そう呼ぶがよい」
「金の麦穂でかなほさま………かなほちゃんはそうやってしゃべるように言われてるの?」
「いんや、言葉は適当に村人がしゃべっておるのを聞いておぼえたのじゃ。そう言えばそちはしゃべり方も村人達と違うの?」
「自分で覚えたの?誰も教えてくれなかった?」
「ジブン、そうじゃ!じぶんでおぼえたのじゃ!村人は自分がしゃべると臭そうな顔をするのでの。だから、滅多にしゃべることもなくて暇なのじゃ」
「じぶんで言葉を覚えた…?しかも村人達は彼女が話すのを臭そうな顔、て事は話すのを嫌がった?不気味に思った……つまり、同じ人として扱ってないのね」
「だから、一人で唱えるでない!自分としゃべりたまえ」
「かなほちゃん、自分、じゃなくて私、っていうのよ」
「自分はワタシ、なのか?なるほど、ワタシとは自分の事なのか!そちとしゃべると面白いの!」
「そちじゃなくて鬼灯、鬼灯って呼んで」
「そちはほおずき、ほおずきじゃな!よし、ほおずき!もっともっとしゃべるのじゃ!」
その時、外から人の歩く音が近づいてくる。鬼灯は緊張して、
「そうしたいけど、時間がないの。かなほちゃん、ここから逃げましょ」
「ほ、ほおずき…?」
「いや、一回隠れなきゃ。今逃げたらすぐにばれる。ごめんね、ちょっとやりすごすね」
「なあ?今話し声が聞こえなかったか?」
「ああ、………またあの狐の独り言だ。しかも着物まで羽織ってるぜ。わざわざ」
「にしても勝手にしゃべりだした時はびびったぜ」
「俺もさすが神様、て思ったぜ」
「でもやっぱ不気味だよな」
「ああ、早く“渡しの儀”がおきねえかな。このままじゃ俺たちもこんな村でじいさんになっちまうぜ」
「“この世の終わり”なんて来ないだろ。さっさと見張りに戻ろうぜ」
ああ、と二人の若者は部屋から去り、歩いていった。
ほおずきは天井の柱から手を離し降りてきた。
「……あんな感じなのね」
「ほおずき」
「かなほちゃん、渡しの義って聞いたことある?」
「…………」
「かなほちゃん?」
「今のほおずきはいやじゃ」
「いやって……」
「いやな臭いがする。さっきまで楽しかったのに、急にほおずきがいやじゃ!」
いやな臭いってなに…?
鬼灯がそう訪ねる前に屋敷の外からうめきのような雄叫びが響き渡った。
「ごめんね、かな君の用意がまだ出来てなくてね」
「いえすみません……あの、その、お気遣いなく……」
「謝らなくて良いんだよ。じゃあ最後に渉くんだね」
俺たちは順番にそれぞれの超能力を見せ合っていた。
最初は水無瀬宗次。宗次は汚れた水を清めることができ、そして清めた水を操ることが出来た。
次は風間愛風。風間は自分で言った通り風を操り、空中散歩をしてくれた。
そして、渉の超能力だが、
「俺、自分の能力なんて分かんないですよ?」
「その点に関しては大丈夫。こっちである程度見当はつけてるから」
そこへ、部屋にエプロンをつけた女性が入ってきた。
「どうも、はじめまして!私は元木菜子です。よろしくね」
「彼女の能力を利用して渉くんのパワーアップしたいと思います」
「私の能力は皆を元気にすること。お花だったりふさぎこんだ人を元気に出来るんだよ」
「元木くんは普段はガーデニングショップで働いていてね。自分の能力を活かした仕事をしてるんだよ」
「確かに今の渉は疲れてますけど、元気にすることと超能力って関係があるんですか?」
「それは元木くんから説明してもらおうか」
「私の能力は超能力者にはもう一つ効果があるの。それは能力を強くする力、つまりその人の能力も元気にする事が出来るの」
「元木さんの能力で俺の超能力をパワーアップしてみると」
「まあ一時的だからずっとパワーアップしてる訳じゃないらしいからね。せめて半日は続くかな」
「なんだ、じゃあ俺たち全員パワーアップっみたいな事にはできないのか」
宗次が残念そうに言う。
「そうだね、漫画みたいにそう簡単に強くはなれないからね。さて、じゃあ渉君、さっそく始めようか」
渉と元木は向かい合い席についた。
「じゃあ、渉くんだっけ?はい、手出して」
と、元木が両手を差し出す。
渉も一瞬照れたが、手を握り返した。
「それで、どうすればいいんだ?」
「渉君は予知系の超能力だと思うんだ。だから何か考えてみて」
「何か、って言われても……」
「なんでもいいよ、人とか将来の事とか気になること」
気になることか、そう言えば鬼灯達はどうしてるだろうか。
次の瞬間、渉の意識が急速に飛んでいく。
本当に意識が飛ぶ、というより車に乗って加速したみたいだ。
体が置いてきぼりになる感覚。実際、意識が体から離れていた。
しばらくするとその感覚も落ち着き、意識がはっきりする。
ここは―?
渉の体は浮いていた。見下ろすと、林の中だろうか、木や植物が生えていてその中を人が歩いている。
あれは、おれ―?
と気づいた瞬間、意識が再び加速し、
なんだ、どうなっているー?俺が走りながら、その俺を見下ろしている!?―
つまり渉は今、林の中を走っている自分の視点とその走っている自分を見下ろしている視点、二つを同時に見ている状況だ。
渉は走り続け、やがて開けた場所に出た。
どこかの村のようだったが、すでに炎に包まれてもはや村とは呼べなくなっていた。
そこには人影が二つ。
そしてその一つは、鬼灯。
鬼灯―!
渉の口がそのように動く。鬼灯がこちらに気づき口を動かすが、炎の波へと飲まれていった――。
今回も続けて読んでくださっている方、ありがとうございました。
ふと思ったのが投稿する量。これ大丈夫ですかね?一応削ったり調整はしてるんですが多いんですかね?少ないんですかね?
もちろん一般的な小説に比べれば少ないはずですが。
そこで評価順で参考にならないかとチェックしたところ、いやファンタジー系はやっぱり気合い入ってますね。面白そうだなぁとか言ってるうちに結局チェックすることを忘れ、参考にできませんでした。
とまあここまでズラズラと書いた辺りでひこうかと。
ここまで読んでくださってありがとうございました!