四人目「………そんなあたしってとぉーーーってもす☆て☆き☆」
四人目今回でラストです。今回は短いです・・・
「鬼灯!」
「本当はライブが終わって皆が帰ってから捜索するつもりだったけど外で待機してるメンバーに来るよう連絡した!」
鬼灯はペースを合わせて走ってくれてるだろうけど、正直ついていくのにいっぱいいっぱいだった。
「もう!何で任せてくれなかったのよ!皆堂さんに聞いたでしょ!」
どうやら意外にも怒っていたらしい。
「だって………いてもたっても……」
「それはわかるけど。けど、もっと信頼してくれても」
どうやら渉がほおずきを信じてないと思っているらしい。
「そうじゃないんだ」
渉は一度止まる。鬼灯もそれに気づき止まる。
「鬼灯が、とかじゃないんだ。自分でも正直鬼灯たちの邪魔をして何してんだ、て思うよ。けど、俺はここに来なくちゃいけなかったんだ。訓練の時話した夢の話、覚えてる?」
最近、訓練の時見た夢の場面が先ほど行われたばかりだった。渉の夢は未来のことを先に経験することができる未来予験になる。
「それのせいもあるけど、多分予験してなくても来ていたと思うんだ。なんていうか、任せちゃいけないんだ。俺も、俺も何かしなくちゃいけないんだ!」
勝手な言い分だというのは分かっていた。けど、二人は渉が巻き込んでしまっただけだから。なのに…
「渉君……………。わかった、そのためにもまずは追いかけなくちゃ」
鬼灯は何か言いたそうにするが、今はハートロックと佐藤を追うことを優先した。
立ち止まったりもしたため見失うかと思ったけど、意外にも向こうがこちらを待っていた。
ハートロックの後ろには大きな扉。多分、その先は舞台になっているはずだ。
「あれ☆あたしは~あくあんずを待ってたんだけどな☆」
「彼らなら当分来ないわよ」
「そっかぁ、そっちにいた金髪イケメン君に足止めされてるんだ〜」
ハートロックは顔を下に向けながらしゃべる。次に顔をあげた時、
「はぁぁぁぁぁあああ!ったくこれだから下っ端は使えねえんだよ!このあたしの護衛ならあたしと互角かそれ以上の奴つけろってんだよ。たくよ~」
今までのしゃべり方とは明らかに違っていた。
「あくまでもファンの前ではネコかぶるのね」
「ああ?ああ、それがあたしのプロ意識?ってかテメーらは違うからどーーーーーでもいいし」
はあ、と大袈裟にため息をつく。
「まあいいや、気分ワリぃからおまえらぶちのめしてトーク終わったら遊んであげるわ。そうね、新しくできたファンの子達の前で赤っ恥トナカイにしてやんよ」
「新しいファンって、まさかこのライブそのための!」
鬼灯が気づき、ハートロックがニヤリと笑う。
「そう、あたしはライブでかわいくて、キレイでセクシーな姿を見せてみぃぃんなあたしの下僕にしてあげるの。んふふ、ほとんどの人が喜んであたしの下僕になり果てるのよ」
あっははははは、と高らかに笑う。
「………最低」
「は、なんてとでも言いなブッチャイクちゃん☆オラ、さっさとかかってこいよ」
鬼灯が吐き出すようにいうが、どこ吹く風で逆に挑発する。
鬼灯がハートロックに一瞬で距離を詰め殴りかかる。鬼灯の本気の一撃を避けるかと思いきや、
「なぁに?この程度〜?」
片手で受け止めた。
そんなばかな、とでも言いたげに鬼灯が目を見開く。
「そんなに意外かしらこの脳筋ブスが!」
手を放し、衣装の尻尾で鬼灯の横腹を叩く。鬼灯は勢いよく飛び、壁にぶつかる。
「ぶっ!ざまぁ!」
ロックが追い打ちをかけるように足をあげる。
「させるかよ!」
戦闘に向いてないのはわかっているが渉は体当たりをしかける。が、ロックの方が速く動きかわされ渉はバランスを崩し転んだ。
「ナニナに今の?ハズ~」
その代わり鬼灯が体勢を整える。時間稼ぎ程度にはなったらしい。
「渉君は下がってて!この人、強い」
「なーにがこの人、強い、よ。当たり前じゃない。そうだ、あたしの能力教えてあげる」
「え?」
自分から能力をばらす?だいぶ前に戦った敵も能力を自慢げにしゃべっていたけど、それほど自信があるのか?
「あたしの能力は『偶像崇拝』。あたしはね、下僕の分だけ強くなる力。どう?まさにあたしにぴったりの能力でしょ☆ちなみにこの会場にはあたしの下僕五千人を連れてきてまーす☆」
五千対二。普通なら勝ち目はない。さっき鬼灯の拳を受け止められたのもそのファン五千人分の力があったからか?
「ま、知ったところで詰んでるわ」
今度は翼を動かし、ワイヤーを使わずに宙に浮く。
「どこみてんだよ」
「!」
次の瞬間には鬼灯の後ろにいて、蹴りをかます。
渉はともかく鬼灯もh-トロックの動きが見えていなかったらしくギリギリのところで蹴りを受け止め距離を取る。
ここからは完全に鬼灯の防戦一方だった。鬼灯の攻撃はほとんどがかわされ、ロックの攻撃は見えない動きで死角から攻撃がくる。その度に鬼灯はギリギリでかわすか受け止めていた。
結局見ていることしかできない渉だが、この戦いに違和感を感じていた。
なんだか、鬼灯の動きが変だ………?
確かに敵の動きは速いし攻撃も当てられている。しかし、さっきみたいに瞬間移動みたいな動きはしていない。なのに、鬼灯にはまるで相手の動きが見えていないかのように戦っている。
そもそも、いくら鬼灯でも五千人分の蹴りや拳を受け止められるのか?
と考えていると、ある感覚が渉を襲う。
この感じは………!
鬼灯と渉がいた。
視点は相変わらず空中に漂っているかのごとく見下ろしている。と同時に鬼灯と一緒にいる自分の視点からも見えていた。
廊下は天井から雨のように水が降り、水浸しで二人も水浸しになっていた。
「くそっ、くそ!」
「…………」
渉は膝を付き、拳を廊下に叩きつけた。
鬼灯はそれを何も言わずただただ見ているだけだった。
渉は廊下にいる渉の方の気持ちがわかった。
それは、どうしようもない悔しさ
まるで、見つけたものをあと一歩という所で逃したような、どうしようもない悔しさ
時間にしてほんの一瞬。だが、渉は確かに自分のみた光景を覚えていた。
今のは、このあとに起きる出来事だったのか。
多少の立ち眩みを感じながらも渉は冷静に考える。
もし、あれがこの後の出来事ならそこにハートロックの姿はなかった。なら、倒したのか、少なくとも退けたはず。
一体どうやって……………?
「いい加減しぶといわねぇ。もう時間ないんだからさっさとくたばれ脳筋ブスが!」
また口汚く鬼灯を罵るハートロック。彼女の動きは疲れてきたのか段々と遅くなってきている。それでも鬼灯は動きが見えていないのか、戦いにくそうだ。
そこで、渉はふとひらめいたことを試した。
廊下にある赤いコーンを拾い、鬼灯に当てないよう投げつける。
鬼灯の速攻ですら避けていたロックに弛く投げたコーンが頭に命中する。
「あて………?」
その事により両者の動きが止まりロックが渉の方に振り替える。
「て、て、てめえ!」
今まで遅く動いていたロックが顔を真っ赤にして急に渉の目の前に現れ、渉の腹に蹴りを叩き込む。
「がはっ」
「ふざけた事してくれんじゃねえか、あんん!?」
ロックが渉に気を取られている隙に今度は鬼灯の攻撃があたる。
「っち!」
ハートロックは腕でガードして鬼灯から距離をとる。
「鬼灯!そこのテーブルを投げるんだ!」
渉が叫ぶと鬼灯は廊下で畳まれていたテーブルを片手でつかみ、ロックに向かって投げつける。
「えっ?きゃあ!?」
自分に向かって飛んでくる物体に驚きしゃがんで避ける。
テーブルは斜め上へ逸れ、回転しながら天井にぶつかる。そして天井から大量の水が雨のように吹き出してきた。
「うわっ!冷たっ!つめたーーーーーい!」
どうやらこの水の正体は天井についていたスクリンプラーの水だったらしい。
「渉君?これって一体…………」
「ああ、あいつの偶像崇拝って能力、多分嘘だ」
今まで見ていた戦闘の違和感がそれだった。
偶像崇拝。その力は自分のファン、つまり自分を崇める者の力を自分のものにすることができるという能力、とハートロックは言っていた。
今回は五千人分といっていたが、それならそんな力で殴られたさすがに鬼灯でも受け止められるはずがない。
「そして何より今ので確信した。鬼灯ですら片手で投げられるテーブルをわざわざ避けた」
五千人分の力があるのに普通に避けた。これはつまり、
「偶像崇拝の能力は嘘……?」
「あるいは本当は別の能力なのか」
冷たい冷たい、と連呼して悶えていたハートロックの動きが渉の言葉に反応して止まる。
「……………ふ」
「ふふ、ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」
何がおかしいのかハートロックが突然笑いだす。
「ばっかみたい。もしかしてあたしの言ったこと馬鹿正直に信じてたわけ?敵に能力教えるわけねーだろばーーーーーーか。………はぁ、ずぶ濡れだしやる気マジ失せた。このままじゃ風邪引くし。今日はもうおしまい」
「待てよ!佐藤は、喜美はどこ行ったんだよ!」
渉の言葉にハートロックは何の反応もせず、背を向け一瞬のうちに消えてしまった。
『ご来場のお客様にご連絡いたします。ロックの体調不良につき本日のトークショーは中止とさせていただきます』
その放送が流れた時、客席からは不満の嵐が起きた。有川も不満の声を上げる。
それにも関わらず、係員は放送と同じことを繰り返し出口へと誘導している。
意外にも最初に出口へと向かったのはいつの間にか装備も変えていたあの限定Tシャツを来ていたファン達だった。彼らは何も言わずまるで行進のごとく出口に向かうのでいつしか不満を上げていた客達も係員に従う。
占条、居能、そして文谷も帰る準備を始めたので有川も仕方がなく
「そうだよ!神山はどうしたんだよ!」
「神山さんですか?」
「そう言えば水無瀬くんも土岐野くんを追っかけてどこかに行ったままだぞ」
「あたしは神山達が戻ってくるまでこの席で待ってるからな」
「しかし放送を聞いて先に会場の外に出てしまったのでは?」
「だって荷物を置いたままだぜ?普通取りに戻ってくるだろ?」
「では電話かメールしてみましょう。誰か知っている方は」
「ごめんね、心配かけちゃった?」
「神、てか神山!何でずぶ濡れなんだよ!風邪引くぞ」
「これは、その、さっきスクリンプラーの誤作動に巻き込まれちゃって。それでハートロックさんのトークショーも中止になったんだって」
「なるほどなるほど」
「なるほど、じゃねえだろが文屋!お前その服貸せ!てかあたしの服に着替えろ神山」
「いいよいいよ!大丈夫!」
「ぜってー大丈夫じゃねえだろ!」
「ううん、本当に大丈夫だから!もうタクシーも呼んであるし。渉君達も一緒に先帰るね」
じゃ、と鬼灯は荷物を持って先に行ってしまう。
少し前、
廊下は水浸しで鬼灯、渉も水浸しになっていた。
「くそっ、くそ!」
「…………」
渉は膝を付き、拳を廊下に叩きつけた。
鬼灯はそれを何も言わずただただ見ているだけだった。
こうなるとは分かっていたけどやはり渉の中に悔しさが残る。佐藤とせっかく再会したのに結局はまた見失ってしまった。
「渉………?」
そこに宗次がやってきた。あくあんずとの戦いで怪我をしたらしく腕をおさえていた。
「佐藤はどうなったんだ?」
「佐藤は……だめだった…」
「だめってなんだよ……まだ会場にいるはずだろ。探せるならだめなんて言って……!」
『ご来場のお客様にご連絡いたします。ロックの体調不良につき本日のトークショーは中止とさせていただきます』
宗次が渉に叫んでいる時、放送が流れる。
「これって……!」
「こうなるのはわかってたんだ。今の自分の姿を俺は先にみていたんだから」
「渉君………」
「佐藤が見つかってせっかくのチャンスを取り逃がして。…結局俺って何一つ変わってない!」
「そんな事はないよ!渉君のおかげで佐藤くんは見つかったし、何よりさっきハートロックの能力を見破ったのだって渉君じゃない!だから、」
「いや、渉は確かに変わってない。役立たずだな」
「水無瀬君!」
「だってそうだろ?じゃなきゃ佐藤だって今ごろここにいて、伊集院さんだっけか?も一緒にいたんだ。何もせず何もしなかった渉が全部悪い」
渉が立ち上がり、宗次を見る。
「じゃあ……じゃあ何をすればよかったんだよ!あの時見た未来から結局こうなるってわかってて何をすればよかったんだよ!」
「今はもうその未来も過去だろう!その時の未来にできた事もしてやれることもない!」
「だったら、」
「だから、こんなとこでいつまでもこうしてないで今からの事に考えて行動すればいいじゃねえか。またチャンスがやって来る。その時に今と同じ結果にならないよう渉が頑張って、頑張っていけばいいじゃないか」
宗次が渉の肩に怪我をした方の手を乗せる。その怪我からは血が流れるが、すぐに水に流されていく。
宗次の言うようにそう簡単に今回のようなチャンスが来るとは思えないが、今は宗次の言葉を信じたかった。
「外で待機しているメンバーに連絡した。戦闘に入った人もいたけど手が空いてる人にシャツを来たファンを片っ端から保護するように、言ってみた。渉君と水無瀬君は会場の外に車が来ているからそれに乗って」
「鬼灯は……?」
「私は事後処理をしないと。今日って有川さん達と一緒に来たじゃない?それから金穂ちゃんも迎えにいかないと」
「だったら俺も行くぜ?」
「水無瀬君が来たらその怪我の説明がつかないでしょ。それに二人とも早くしないと風邪引いちゃうよ?」
鬼灯に言われて体の末端の感覚がないくらい冷えきっているのに気がついた。きっと唇も紫色になってるに違いない。
それから、宗次の助っ人に来たメンバーの人と一緒に(先にあくあんずを捕まえて運んでいたらしい)車に乗り、帰った。
帰るまでずぶ濡れで帰ってすぐに風呂に入れられたけど色々重なって長風呂になった。宗次は「こりゃ三人揃って明日は風邪だな」と言って自分の部屋に戻って早々に寝てしまったらしい。
時間はクリスマスをとっくに過ぎていたけど、聖夜のに渉にプレゼントは送られてこなかった。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
今回は短めとなっています。お話も今とは逆の季節なので何とも……
だからなんだ、ッて感じなんですが。