トンネルに挑戦
8か月になったぼくは、日頃お仕事に出かけるママさんとパパさんがいない間、
ハウスで寝てるか、敷物をかじってるかしてた。
あんまり、敷物を粉砕して食べてしまうぼくに、ママさんはもう敷物を入れてくれなくなった。
もちろん、ハウスからの脱走もくわだてたさ。
屋根をぶっ壊して、長老や、姉たんがハウスにいる間に、ちゃ~っかり、ママのベッドにもぐりこんだ。ママさんの匂い、ふわふわした布団、ぼくは、ねっ転がって、飛び跳ねて、
ママが帰ってくるまで寝て、フリータイムを満喫したのさ。
大満足のぼくは、ママさんが帰ってくると、尻尾をめいいっぱいふりふりして、お出迎えした。ママさんの目は大きくくりんくりんになって、ぼくを見つめた。
でも、怒らなかった。
次の日、ぼくは脱出を試みたけど、もう二度と開けることはできなかった。
呼び戻しがだいぶできるようになってきたぼく。
姉たんの練習グランドでは、そろそろ始めましょうか~ってぼくもいっしょにトレーニングが始まった。
まずは、トンネル。
黄色い色で、ひだひだで、長くて、丸い穴が開いている。
穴をのぞいてみたけど、向こう側は見えない。
ママさんは、それを指さして、ハウスって言った。
『ハウスって、ぼくの知ってるハウスと違う。でも入ったらおやつくれるかな?』
『でも怖い、中はどうなってるんだろう?』興味はあるけど、用心深いぼく・・
なかなか入れないぼくに、姉たんが、何回もぼくの前で、入口から入り、出口から出てきたり、逆回りしたり、横っ跳びをして、ぼくを誘ったり、ぼくは、いつの間にかつられて
姉たんを追いかけて、ハウスに飛びこんでいた。
『あれ?な~んだ、入ったら出られるんだ。中はな~んにも怖くないや』
ぼくがハウスっていうトンネルをマスターした瞬間だった。