↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR

勇者魔王短編作品

勇者ですが、最初のおつかいイベントでたらい回しにされまくって困る

掲載日:2026/09/10

「勇者ラーセルよ、魔王を倒してくれ! 頼んだぞ!」


「はっ!」


 国王の命を受け、魔王討伐の旅に出た勇者ラーセル。

 まだ10代ながら卓越した剣技を持ち、正義と勇敢さに満ちた若者である。

 街で装備を整えた彼は、さっそく橋で隣の大陸に渡ろうとするが――


「工事中?」


「ああ、海の魔物に橋を壊されちまって……。勇者様、悪いんだが森の精霊様に頼んで、橋を直すための木材を持ってきてくれないかねえ?」


「分かった!」


 作業員の頼みを聞き、ラーセルは森にやってきた。

 森の精霊に頼めば、質のいい木材を手に入れられる。

 ところが、森の精霊の表情は暗かった。

 事情を聞いてみると――


「森の大黒柱である大樹が弱っているせいで、森全体の木が生命力を失いつつあるのです。大樹をよみがえらせるために、ドリーの泉の女神様から泉の水を分けてもらってきてくださいませんか?」


「すぐに向かうよ!」


 ラーセルはその足で、ドリーの泉に向かう。

 しかし、女神の顔つきも険しかった。その理由はこのようなものだった。


「近頃、泉の水質が悪くなっていて、この水では大樹をよみがえらせることは難しいでしょう。水質を回復できるのは術師ヒードのみ。ヒードに泉に来るよう依頼をしていただけませんか?」


「お安い御用です」


 ラーセルは術師ヒードの家を訪ねる。

 ドリーの泉の水質を回復させて欲しいと頼むが――


「すまないが、大きな仕事を終えたばかりで、疲労が溜まっていてね。この疲労は単なる休息では取れないんだ……」


「疲労……どうしたらいい?」


「モンテ山の麓にある店で、栄養ドリンクを買ってきて欲しいんだ。あれを飲めば一発で回復する」


「栄養ドリンクか、行ってくるよ!」


 店で栄養ドリンクを買おうとすると、店主は新しい商品を入荷できずにいるという。

 ラーセルが事情を聞くと、モンテ山の山賊が活発に活動しており、流通が滞っているとのことだ。


「モンテ山の山賊は、元々悪い連中じゃなかったんだが、この頃は通行人から金をせびるようになってね。なんかあったんじゃと思うんだが……」


「分かった。話を聞いてくるよ」


 ラーセルは山賊たちのアジトに向かう。そこでは山賊たちが横たわり、苦しんでいた。

 眼帯をつけた山賊の頭目が申し訳なさそうに話す。


「実はみんな流行り病にかかっちまって……治療費のために、仕方なく金を集めてたんだ」


 山賊とはいえ、ラーセルも放ってはおけない。


「残りの金はなんとかしよう。薬を作ってもらえるよう薬師に頼みに行ってくるよ」


 薬師を訪ねると、薬師はこう返す。


「その病気に効く薬は作れる。だが、ピリン草という薬草が必要だ。空を飛べる竜にしか行けない場所にあるから、竜に協力を仰いでくれまいか」


 ラーセルがすぐさま竜の元に向かうと、竜は条件を突きつけてきた。


「よかろう。ただし、魔女カステラを持ってきたらだ」


「魔女カステラ?」


「魔女ブルネだけが作れるカステラだ。あれを持ってくれば貴様に力を貸そう」


 魔女の家に行き、カステラの依頼をすると――


「カステラの材料は魔王の生き血と黄金鳥の卵さ。カステラが欲しいなら持ってきておくれ」


「魔王のところにはどうやって行けば?」


「あたしが魔法で送ってやるよ。それぐらいはしてやらないとね」


「お願いします」


 ブルネの魔法によって、ラーセルは魔王の元に飛ばされる。


「なんだ、貴様は!? どこから現れた!?」


「悪いが、生き血を貰うぞ」


 すぐにカステラが欲しいラーセルは、一刀のもとに魔王を倒した。


「流れた血を瓶に詰めて、と……。あとは黄金鳥か……」


 ラーセルが黄金鳥のところに向かうと「栄養不足で卵が産めない」と言われてしまう。

 こうなってはラーセルにやれることは一つだ。


「よーし、栄養不足を解消できるカロロ豆ってやつを手に入れてくるよ!」



***



 冒険を続けるラーセルの元に国王の使者が訪れる。

 使者はうやうやしく跪いた。


「ラーセル殿、魔王を倒してくださりありがとうございます! つきましては、ぜひ王都に戻って祝賀パーティーに参加を……」


「申し訳ありませんが、今忙しいんで。ドゥールゥ星人さんの惑星を救うためにおつかいしてるんです」


「そうですか……失礼しました」


 使者の依頼を断ったラーセルは慌ただしくどこかに向かう。

 ちなみに、橋は未だに直っていない。






おわり

お読み下さいましてありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
魔王ついでに倒されて不憫wwww
カステラの材料は魔王の生き血と黄金鳥の卵…どんなカステラだろう…そのレシピ過程もすごいけど、それまでの供給はきっと魔王様の善意の献血?それを一刀の元にズバシャーしちゃう勇者ぇ 使命クリアは、おつかい…
すごすぎる……もはや何を頼まれたのか私なら忘れちゃいそう。 ラーセルさん、頼りになりすぎです!(`・ω・´) おつかいイベントもここまでくると大冒険ですね笑。 面白かったです! エタメタノールさん、あ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。