勇者ですが、最初のおつかいイベントでたらい回しにされまくって困る
「勇者ラーセルよ、魔王を倒してくれ! 頼んだぞ!」
「はっ!」
国王の命を受け、魔王討伐の旅に出た勇者ラーセル。
まだ10代ながら卓越した剣技を持ち、正義と勇敢さに満ちた若者である。
街で装備を整えた彼は、さっそく橋で隣の大陸に渡ろうとするが――
「工事中?」
「ああ、海の魔物に橋を壊されちまって……。勇者様、悪いんだが森の精霊様に頼んで、橋を直すための木材を持ってきてくれないかねえ?」
「分かった!」
作業員の頼みを聞き、ラーセルは森にやってきた。
森の精霊に頼めば、質のいい木材を手に入れられる。
ところが、森の精霊の表情は暗かった。
事情を聞いてみると――
「森の大黒柱である大樹が弱っているせいで、森全体の木が生命力を失いつつあるのです。大樹をよみがえらせるために、ドリーの泉の女神様から泉の水を分けてもらってきてくださいませんか?」
「すぐに向かうよ!」
ラーセルはその足で、ドリーの泉に向かう。
しかし、女神の顔つきも険しかった。その理由はこのようなものだった。
「近頃、泉の水質が悪くなっていて、この水では大樹をよみがえらせることは難しいでしょう。水質を回復できるのは術師ヒードのみ。ヒードに泉に来るよう依頼をしていただけませんか?」
「お安い御用です」
ラーセルは術師ヒードの家を訪ねる。
ドリーの泉の水質を回復させて欲しいと頼むが――
「すまないが、大きな仕事を終えたばかりで、疲労が溜まっていてね。この疲労は単なる休息では取れないんだ……」
「疲労……どうしたらいい?」
「モンテ山の麓にある店で、栄養ドリンクを買ってきて欲しいんだ。あれを飲めば一発で回復する」
「栄養ドリンクか、行ってくるよ!」
店で栄養ドリンクを買おうとすると、店主は新しい商品を入荷できずにいるという。
ラーセルが事情を聞くと、モンテ山の山賊が活発に活動しており、流通が滞っているとのことだ。
「モンテ山の山賊は、元々悪い連中じゃなかったんだが、この頃は通行人から金をせびるようになってね。なんかあったんじゃと思うんだが……」
「分かった。話を聞いてくるよ」
ラーセルは山賊たちのアジトに向かう。そこでは山賊たちが横たわり、苦しんでいた。
眼帯をつけた山賊の頭目が申し訳なさそうに話す。
「実はみんな流行り病にかかっちまって……治療費のために、仕方なく金を集めてたんだ」
山賊とはいえ、ラーセルも放ってはおけない。
「残りの金はなんとかしよう。薬を作ってもらえるよう薬師に頼みに行ってくるよ」
薬師を訪ねると、薬師はこう返す。
「その病気に効く薬は作れる。だが、ピリン草という薬草が必要だ。空を飛べる竜にしか行けない場所にあるから、竜に協力を仰いでくれまいか」
ラーセルがすぐさま竜の元に向かうと、竜は条件を突きつけてきた。
「よかろう。ただし、魔女カステラを持ってきたらだ」
「魔女カステラ?」
「魔女ブルネだけが作れるカステラだ。あれを持ってくれば貴様に力を貸そう」
魔女の家に行き、カステラの依頼をすると――
「カステラの材料は魔王の生き血と黄金鳥の卵さ。カステラが欲しいなら持ってきておくれ」
「魔王のところにはどうやって行けば?」
「あたしが魔法で送ってやるよ。それぐらいはしてやらないとね」
「お願いします」
ブルネの魔法によって、ラーセルは魔王の元に飛ばされる。
「なんだ、貴様は!? どこから現れた!?」
「悪いが、生き血を貰うぞ」
すぐにカステラが欲しいラーセルは、一刀のもとに魔王を倒した。
「流れた血を瓶に詰めて、と……。あとは黄金鳥か……」
ラーセルが黄金鳥のところに向かうと「栄養不足で卵が産めない」と言われてしまう。
こうなってはラーセルにやれることは一つだ。
「よーし、栄養不足を解消できるカロロ豆ってやつを手に入れてくるよ!」
***
冒険を続けるラーセルの元に国王の使者が訪れる。
使者はうやうやしく跪いた。
「ラーセル殿、魔王を倒してくださりありがとうございます! つきましては、ぜひ王都に戻って祝賀パーティーに参加を……」
「申し訳ありませんが、今忙しいんで。ドゥールゥ星人さんの惑星を救うためにおつかいしてるんです」
「そうですか……失礼しました」
使者の依頼を断ったラーセルは慌ただしくどこかに向かう。
ちなみに、橋は未だに直っていない。
おわり
お読み下さいましてありがとうございました。




