アポロンズ・ハートスカウトキャラバン
「プリズムっていう悪徳傭兵集団ねえ……」
オルフェウスは、報告書を読みながら呟いた。
自社の利益最優先、裏切り上等、評判は最悪だ。ついに、軍部が討伐に動くことになった。
「神出鬼没だから見つけるのも一苦労か……」
「理人くん、大丈夫? 疲れてない?」
「ああ、問題ない」
プリズムの構成員が潜伏していそうな所で張り込んでいるのは、アポロンズ・ハート所属のテオと理人の二人だった。
警察から軍部に、プリズムが関わっている疑いのある事件の情報が寄せられた。
年寄りを狙った詐欺。
資金繰りに困ったのだろうか、そんなセコいことをやっているそうだ。
「プリズムの連中っぽいね」
「追うぞ」
今回、騙されたフリ作戦で、通報者の年寄りにも協力してもらっている。
今、理人達の前に現れたのは年端もいかない少年だった。所謂、受け子だ。
協力者の年寄りと受け子がカフェの中で金の受け渡しをする。
「今です」
「OK」
先に待機していたオルフェとザックが受け子の座るテーブルを囲む。
「おれおれ詐欺かよ。セコいことするなあ」
「プリズムの構成員だな?」
逃げようとする受け子をザックが取り押さえる。
「さあボスの居場所を吐いてもらおうか」
オルフェが、手錠をかけながら、言った。
取調室。
プリズム構成員を吐かせるのは、簡単だった。
忠誠心なんて毛ほどもないというのは本当だったのだ。
「とりあえず、そのエルフィンとかいう奴を呼び出してもらえるか?」
「ああ、はい。連絡先は知ってます」
「エルフィン・フォールス、どっかで聞いたことあると思ったら、ランカーじゃねえか」
ランカーというのはUチェスの世界ランク10位までに入った者をいう。
「ああ、そうだ」
理人はチェリストとしてのエルフィンを思い返す。
飄々として捉えどころのないプレイスタイル。デッキは確か、魔術師シリーズを使っていた。
ランクは6~10位辺りを転々としている。
「こんな悪徳業者に所属してたとはな」
今まで、エルフィンは様々な組織の助っ人チェリストをやっていたが、本所属はプリズムということだ。
「しかも魔法が使える」
「なら、対策をしないとな」
エルフィンにUチェスの公式試合を申し込むことにした。
オルフェは中立国・ヤマトに連絡を入れた。
忍・J・キサラギ。
Uチェスの発案者。
太陽国と月国が二大勢力ならば、ヤマトは第三勢力となる。
Uチェスが開催される時には、ヤマトの国は祭のようになる。
特設ステージには理人とエルフィンが、それぞれ立っている。
「ランキング1位の理人・アップルVS ランク10位のエルフィン・フォールス、ランカー同士の対決だー! 理人が勝てば、傭兵会社プリズムの解体、そしてエルフィンのアポロン軍所属。エルフィンが勝てば一億の報奨金!」」
キサラギは実況・解説も行う。
1ターン目。それぞれポーンを進める。バトルなし。
「理人はドラゴン、エルフィンは魔術師、どちらもデッキに変化はなし!」
2ターン目、3ターン目は ポーンをお互いに進める。バトルなし。
4ターン目 理人がナイト「ドラゴノイド(パワー10000)」、エルフィンがポーンを進める。バトルなし。
5ターン目 エルフィンがポーン、理人が「ドラゴノイド」を進める。
6ターン目 理人のナイト「ドラゴノイド」がエルフィンのポーンを破る。
7ターン目 お互いにポーンを進める。バトルなし。
8ターン目 エルフィンのナイト「スカイペガサス(パワー9000)」が理人のポーンを破る。
9ターン目 エルフィンの「スカイペガサス」が理人のビショップを破る。
10ターン目 理人のナイト「ドラゴノイド」がエルフィンのポーンを破る。
11ターン目 理人のポーンがエルフィンのポーンを破る。
12ターン目 エルフィンのクイーン「魔導師ウィング(パワー12000)」が理人のポーンを破る。
13ターン目 エルフィンの「魔導師ウィング」が理人のポーンを破り、理人のキング「アルティメット・ドラゴン(パワー15000)」がそのクイーンを破る。
14ターン目 エルフィンがビショップ、理人がクイーン「スカーレット・ドラゴン(パワー12000)」を動かす。バトルなし。
15ターン目 エルフィンのポーンが理人のポーンを破る。
16ターン目 エルフィンのポーンが理人のポーンを破る。
17ターン目 理人のビショップ「レックス(パワー7000)がマジックカードでパワー+3000、エルフィンの「スカイペガサス」を破る。
18ターン目 エルフィンがビショップ、理人がルークを動かす。バトルなし。
19ターン目 お互いにビショップを動かす。バトルなし。
20ターン目と21ターン目 理人の「スカーレット・ドラゴン」がエルフィンのポーンを続けざまに破る。
22ターン目 エルフィンのビショップ「魔獣ベヒモス(パワー8000)」が理人のポーンを破る。
23ターン目 エルフィンの「魔獣ベヒモス」が理人のルークを破る。
24ターン目 理人がルーク、エルフィンがポーンを動かす。バトルなし。
25ターン目 理人の「スカーレット・ドラゴン」がエルフィンの「魔獣ベヒモス」を破る。
26ターン目 エルフィンのナイト「星獣リーン(パワー9000)」が理人のビショップを破る。
27ターン目 理人がナイト、エルフィンがキング「大魔導師マーリン(パワー15000)」を動かす。バトルなし。
28ターン目 理人が「スカーレット・ドラゴン」を動かす。
29ターン目 「大魔導師マーリン」のスキルパワーダウンで「スカーレット・ドラゴン」のパワーが下がる(10000に)も、理人はマジック「烈火乱舞」で+5000、両者相打ち。
「チェックメイト」
「理人の勝利だ~! さあ太陽軍の皆さん、勝ちの報酬は?」
オルフェがキサラギの隣に来て、言う。
「約束通り、悪徳傭兵会社プリズムの解体、そしてエルフィン・フォールスのスカウト」
「エルフィン何負けてんだ! 会社が潰れるだろう!」
「ランク1位の理人さん相手ですよ。最初から勝てる訳ないと思ってました」
「手を抜いたってことか?」
理人がムッとして言う。
「いえ、僕なりに頑張りましたけど」
「なら、いい」
「プリズムの社長さん、どうする? エルフィンを渡してもらうことになるけど」
「会社もなくなって、ボディーガードも失うなんて、あんまりだ!」
「もう一度言う。エルフィン、軍に所属してみないか?」
エルフィンはもうプリズムの仕事には飽き飽きしていたので、社長を見限ることにした。
「エルフィン・フォールスです。よろしくお願いします」
「エルフィン! お前に俺がどんだけ尽くしてやったと思ってるんだ!」
「もう何回も命を救ったでしょう」
この社長の下で仕事をするのは、もう嫌だった。彼の采配は最悪で、そのせいで沢山の少年兵が死んだ。エルフィンは飄々としている風を装っているが、もう限界だった。
「酷いことも沢山してるので、適当に逮捕しといて下さい」
「エルフィン‼」
社長は警察に連行されていった。
プリズムが解体されたことで、後始末をすることになった。
アポロンズ・ハートの指令室に連行されたエルフィンは、ソファーに座らされると、こう言った。
「僕も持ってるんですよ」
NA ナイトアーマー、アポロン軍が開発した戦闘機である。
「トリックリックという名前です。可変型でスナイパータイプです」
「トリックリック、良い機体ですね」
メカニックのテオが機体を見ながら言う。
「少し整備して、うちの母艦に入るようにしておきます」
「よろしくお願いします」
数日後。
「エルフィン、お前をうちのエースパイロットに任命する」
「僕でいいんですか?」
「残念ながら、少数精鋭部隊のせいで、お前しかいないんだな」
「そうですか」
「てな訳で、これからよろしく頼む、エルフィン」
Uチェスの描写は、このように進んでいきます。
どんなモンスターカードなのか想像しながら読んでみてください。




