ジョーカー ~ジークの場合~
俺の名前はジーク。
太陽国・諜報部隊ジョーカーの隊長だ。
ジョーカーの任務は諜報活動、つまりはスパイだ。
構成員は各地に散らばり、主に月国の情報を収集している。
構成員の顔と名前は俺が一括して管理している。
メンバー同士は、任務で一緒にならない限り、互いに名前も顔も知らない。
そんな組織である。
ジョーカーという組織名が出来たのは、けっこう最近で、それまでは諜報部などと呼ばれていた。その頃から体制は、ほとんど変わらず、メンバーもほぼ持ち上がりでジョーカーと呼ばれるようになった。
俺が軍に入ったのはアポロン様への恩返しのためだ。
孤児だった俺を拾い上げてくれ、孤児院に多額の寄付をしてくれた。
士官学校に入った後も、何者でもない俺を何かと気にかけてくれた。
NAの操縦もUチェスも程々に出来た。
でも突出している訳ではなかった。
諜報部という選択をしたのは「かくれんぼ」が得意だったからだ。
アポロン様が、諜報部員が不足しているということを、ぼそっと呟いていたのを聞いて、力になりたいと思った。
入ってみれば入ってみたらで、やはり諜報活動・内部監査は自分に向いていた。
そうしたら、いつの間にか諜報部のトップになっていた。
そんな俺は、とある長期任務に就いている。
ナポリの領主に成り代わり、月国の情報を集めること。
アポロン様から受けた特命だ。
ナポリの領主・フリードは若いながらも、見事な手腕で領内をまとめていた。
しかし彼は病に侵されていた。
そこに狙いをつけ、俺はナポリに潜り込んだ。
間近でフリードを見て、彼の所作を確認した。
病に臥せったフリードの側に付き、彼を看取った。
俺の魔法で人払いは済ませておいた。
フリードの今際の際を見たのは俺だけだ。
俺は密かにフリードを埋葬し、成り代わった。
病を克服した領主として俺の人気は更に高まった。
フリードに成り代わって早十数年が経過した。
その間、理人との出会いから俺のUチェスの才能が開花したりしたが、それ以外は生前のフリードのやっていたことと何ら変わりがない毎日だ。
太陽国での用事がある時は、ナポリに魔法で作ったダミー人形を置いてきている。
そんな感じで俺の二重生活は続いている。
二人の名前を合わせると「ジークフリード」『ニーベルンゲンの歌』に登場する英雄の名になります。




