ヨルムンガンド
領主会議にて、フリードは先日の負けについて、こってり灸を据えられていた。
「いやぁ、大変でしたねぇ」
フリードに話しかけてきたのはホルムの領主・ヨルムンガンドであった。
Uチェス6位、飄々とした男だ。
フリードは面倒臭い相手に会ったという顔をして、無視をしようとした。
「あぁ、無視しないでくださいよぉ」
「何だ」
「楽しかったですか? 理人・アップルとのUチェスは」
「それがどうした」
「これで負け越しじゃないですか。研究が足りないのでは?」
「五月蝿い」
「まあ良いでしょう。次の作戦の指揮は私が執ります。あなたはしばらく休んでいて下さい」
フリードは返事をせずに、その場を去った。
現在、月国の領地だったオルレアンがジャンヌ・ヴァルキリアの元に戻り、統治体制も出来かけている。
オルレアンは先日までヨルムンガンドの領地だったが、出来損ないの部下のせいで、ジャンヌに取り返された。しかも、その部下はジャンヌに入信したとかで戻って来ない。こんなことならば、自分がUチェスの相手をすれば良かったと後悔している。
このオルレアンをもう一度取り戻す。
幸い、オルレアンの周りは全て月国で囲んである。兵糧攻めでもすればいいだろう。
オルレアン再攻略作戦の開始だ。
ジャンヌの元にヨルムンガンドから書状が届いた。
「取返しにくるか。ヨルムンガンドめ、十年前の雪辱を果たしてやる」
エコーはジャンヌに、擦り寄りながら言う。
「きっとぉ、ヨルムン様はぁ、エコーのミスを怒ってらっしゃいますぅ」
「それは、そうだろうな」
「だからぁ、エコーのこと、守ってくださいませね、ジャンヌ様ぁ」
「分かっている。お前は、もうダイヤモンド・ウィングスの仲間だ」
「うわぁん、ありがとうございますぅ」
エコーは嬉し泣きをした。
オルレアンの四方は全て月国の領地なので、どこからでも攻めることは可能であった。
それに補給路も絶たれている。
所謂、兵糧攻めだ。
敵を包囲し、食糧補給を絶ち、戦闘力を弱めた上で、武力を使わずに降参させる。
ヨルムンガンドが取ったのは、この戦略であった。
オルレアン自体は比較的、食糧自給率は高めであったが、こう補給路を絶たれてしまうと、ジリ貧である。
「救援を要請する」
太陽国リモート、リーダーズ会議にて、ジャンヌはオルレアンの窮状を訴えた。
「早急に対応しよう」
アポロンは答えた。
補給係に任じられたのはナイト・オブ・スペードであった。
ミーティングルームにて、アーサーが地球儀を指差しながら説明している。
「補給路はただ一つに絞られる。海側だ」
確かに、細くだが、オルレアンの西側には敵地を通らずに向かえるルートがあった。
「しかし、敵もそれは分かりますよね」
アンが至極当然のことを言う。
「ああ、この海上で戦闘になるのは必須だ」
「戦闘……」
アンはハルストンの海戦での、自分の不甲斐なさを感じていた。
「大丈夫だ、次は出来る」
「……はい」
オルレアンに向かう途中には、ヨルムンガンドが配備した艦隊が並んでいた。
「あれを突破する」
「俺が行きます!」
リンボが先陣を切る。
アーサーの機体は「エクスカリバー」といい、その部下の機体は「エクス」という。
「俺も行きます!」
ジーンがリンボに続けて、ヨルムンガンド艦隊を攻撃する。
艦隊からの攻撃をかわし、ビームを放ち、艦を落としていく。
「行くぞ、エクスカリバー!」
アーサーの機体から高出力ビームが発射され、いくつかの艦が沈む。
これを機に、食糧コンテナの入った艦が動線上に入り込む。
リンボやジーン、アーサーの機体を先頭にオルレアンまでの道を切り開いていく。
ヨルムンガンドの用意した艦隊には魔法使いも乗っており、魔法を放っているが、効かない。
アーサー達の機体にはマジックキャンセラーが施されているからだ。
開発俱楽部が総力を挙げて作った特別製だ。
魔法攻撃の嵐の中を駆け抜け、オルレアンに到着、食糧を届けた。
「アーサー殿。感謝する」
ジャンヌからの謝辞を受け取り、アーサーは帰途に立った。
アーサーと言えば、やっぱりエクスカリバーですよね!




