ウィルとエルフィン
太陽国・技術開発室。
「バーガーさん、調子はどうですか?」
新人のバーガーがNAを操作しているところに、エルフィンが声をかけた。
「はい! 上々です。戦えそうです」
「それは良かったです」
NAトリッカーの整備をしているテオもグーサインを出している。
「一応、模擬戦をやってみましょうか」
「はい!」
ペイント弾がトリッカーに当たる。
「やっぱりエルフィンさんには敵わないなあ」
「まあ性能の差でしょう。仕方ありませんよ」
アポロンズ・ハート、ミーティングルーム。
「次の戦いが決まった」
オルフェがスライドに映像を映しながら説明をする。
「アテネの所有権をかけた戦いだ」
◇
月国基地アトランティス、ミーティングルーム。
「次の戦いはアテネか!」
ガルーダがさも楽しそうに言う。
「今回もシンドバッド大佐の隊との共同戦線になるで」
「ふん! 俺の方が強い!」
「何でこうも自信満々なのか疑問やわ」
今回も光明は留守番で、ウィル、ガルーダ、潤子の三人で任務に当たることになった。
三人はシンドバッド大佐と合流し、簡単な作戦会議をする。
両陣営が向かい合っていた。
「あの機体は⁉」
「どうした?」
「あれはエルフィンの⁉」
「エルフィン? 誰だ、そいつは?」
「俺の元上司だ」
「そうか、傭兵時代の」
「あいつを叩けば、戦況が動く!」
「分かった。俺の翼を貸してやる。立花潤子、貴様も鎧を貸せ」
「は、はいっ」
「どういうことだ?」
「俺達は俺達同士を武器として使用できるんだ」
「そんなことが出来るのか」
「ああ。実際にやってみた方が早い。――――ふんっ」
ガルーダが翼になり、浮いていた。
「ほら、立花潤子、貴様も」
「は、はいっ」
潤子が鎧になる。
「着ろ」
「分かった」
「よ、よろしくお願いします」
鎧を着ると、翼も装着されに来た。
「ほら。これで奴を倒してこい」
「ああ。任せておけ」
戦闘開始の合図が鳴った。
ウィルは一直線にエルフィンの機体に向かっていく。
邪魔する者は自分の剣で斬っていった。とどめまで刺せたかどうかは分からない。
「エルフィンさんはやらせない!」
先ほど斬ったと思った機体が立ち上がり、後ろから襲いかかる。
部隊の奥にいるエルフィンは、味方が次々とやられているのに危機感を抱いた。
(あれは傭兵部隊にいた、名前は……)
名前までは思い出せなかったが、あの顔には見覚えがあった。
(僕を恨んでいるでしょうね)
すごい気迫だった。こちらが圧されていくようだ。
自分の前にいるのはバーガーだけになっていた。
「この先には行かせない! 俺が止める!」
(バーガーさん……、彼がやられたら次は僕が……)
恐怖、今まで抱いたことのない感情が胸を支配する。
「……死にたくない死にたくない死にたくない」
エルフィンは逃げた。
「死にたくない死にたくない死にたくない」
アポロンズ・ハート母艦。
「は? あいつ逃げ出してる?」
オルフェはモニターを驚愕した顔で見ていた。
「死にたくない死にたくない死にたくない」
逃げるエルフィンを確認したウィルは、そちらへ行こうとするが、バーガーが立ちはだかる。
「行かせないって言ってるだろ」
「邪魔だ」
ウィルはバーガーを斬り捨てる。しっかり、とどめを刺したのを確認した。
バーガーの足止めが効いたのか、エルフィンは戦闘区域から離脱していた。
「クソッ」
「追うな。もう戻っては来ないだろう。あいつの部隊も壊滅させたしな」
「分かった」
「持ち場に戻るぞ」
「ああ」
バーガーが死んだ。
「僕のミスです」
エルフィンは初めて「仲間」が死んだ感覚を味わった。
「反省は次に生かせ」
オルフェは厳しい言葉を飲み込んで、簡潔に言った。
エルフィンのメンタルの弱さが露呈しましたね。
トリックリックは速い機体なので逃げ足も速いです。




