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太陽と月  作者: 夢水四季
15/33

ハルストンの海戦

 月陣営、天空基地・ラピュータ。


 ウィル、ガルーダ、潤子はヤマトの国から帰還した。


「お疲れさん」


 光明が三人を出迎える。


「そろそろ戦いが始まる頃や」


「た、戦いですか⁉ それって本物の? Uチェスではなく?」


「せやで。ドンパチやる、あの戦争や」


 中立国ヤマト出身の潤子は、戦争とはテレビで報道されるものという認識しかない。


「ほ、本当にやってるんですね」


「当たり前だ。お前も戦場に出れるようにしておけ」


「ヒッ」


 潤子は、まだガルーダに苦手意識を持っており、彼の命令口調に怯えてしまう。


「もうガルさん、あんま新人いびんなや」


「五月蝿い。半端な覚悟で来られる方が迷惑だ。特にヤマトの平和ボケ連中には」


「す、すみません……」


「謝らんくてええで。覚悟なんか、そのうち付いてくるもんやろ」


「ふん。勝手にしろ。足手まといにだけはなるな」


「は、はい」




「今回、あんさんらに行ってもらうのはハルストン海峡や。そこをどっちが取るかで揉めとる」


 ハルストン海峡は太平洋側にある水域だ。


「海峡付近でシンドバッド大佐の隊と合流や」


「あいつか」


 そういえば、ミーナが超えるべき相手だと言っていたな、とウィルは思った。


「じゃあ、早速行ってきてもらおか」




 ウィルたちはヘリコプターに乗り込み、ハルストン海峡付近まで向かった。


 会話は特になかった。ウィルは元々、口数が多い方ではなかったし、潤子も大人しめの性格なので何か話すことはしない。ガルーダは光明から注意され、気まずいのか黙っていた。




「ウィル!」


 シンドバッド大佐に会う前にミーナから声をかけられた。


 ミーナ隊は船に乗っており、ウィルに向かって手を振っている。


 ウィル達はヘリからミーナ達の船に乗り移る。


「こんな下っ端ではなく、シンドバッドと合流のはずだが?」


 ガルーダが嫌味を言う。


「下っ端で悪かったわね!」


「ふん」


「シンドバッド大佐は後方にいるわ。挨拶だけでもしてきたらどう?」


「ああ、分かった」


 ウィル達は、またヘリに戻り、後方の船に向かう。


「君達が武器の子達か」


 シンドバッド大佐の元に来て軽く挨拶をする。


「翼の君、ガルーダ君とは以前も会ったことあるが、他の二人は初めまして、かな」


「ウィルだ」


「た、立花潤子です」


「立花潤子さん、可愛らしいね。ついでにウィル君、よろしく頼むよ」


「は、はいっ」


「女たらしめ」


「今回は君達にも前線で戦ってもらう」




戦いにはルールがある。


まずUチェスでどうにかなるなら、それで決める。決着に納得が出来ない場合、本当に戦争になる。基本的に奇襲、ゲリラ戦は行わないというのが、ここ10年で決まった。





 ナイト・オブ・スペード母艦。


「今日は我々の初任務だ。アポロン様に勝利を!」


「「「アポロン様に勝利を!」」」




 開戦の幕が上がる。




 始めはアポロン軍が、やや優勢だった。


 アーサー率いるNA部隊が、手前の軍艦を破っていく。


 ミーナは隣の船が砲撃を受けたのを見て、義手に描かれた錬成陣から炎を出す。


「一機墜としたわ!」


「ミーナさんに続けー!」




「流石、私が育てたミーナだ」


 シンドバッドは空を見上げる。


「そろそろかな」




「ディアナ様がいらっしゃった!」


 ディアナの目には既に光明が装備されていた。


「俺達もいくぞ!」


 ガルーダが掛け声をかけると、翼に変身してディアナに向かっていった。


 ウィルと潤子も続く。


 


 ウィルは武器になって、ディアナと一体化する感覚を味わった。


(これが武器になって戦うということか!)


 翼で飛び、自ら剣を振り回すディアナに月陣営は湧く。


 


 ディアナ一人にナイト・オブ・スペードは陣形を崩されていった。


「くっ。撤退だ!」


 アーサーは苦渋の決断を下した。




「俺達の勝利だ!」


 月陣営は湧いていた。





ナイト・オブ・スペード艦内。


死傷者が運ばれてくる。


初実戦のアンは茫然としていた。


「まだ息のある者を早く医務室へ!」


 コフィがギリギリ息をしている状態で運ばれてきた。


「アン看護長!」


 アーサーの声に、ハッとする。


「はい!」


「何をぼーっとしている! 君が治療するんだ!」


「は、はい!」


 コフィの傷口を診る。


 本物の血だった。とめどなく溢れる赤い血。


(私が治療しないと、この人は死ぬ?)


「あ……、え……」


 何をするべきか分からなかった。いや、血を止めたり治療をしなければならないことは頭では分かっている。しかし、身体が動かない。


「アン看護長!」


 気付いた時には手遅れだった。コフィは息を引き取っていた。


「わ、私が……、ころ、した……?」


「そういう訳ではない!」


 アーサーがアンの肩に手を置く。


「で、でも、私がちゃんとやれていたら、コフィさんは……」


「戦場に出るのは初めてだったのだろう? 血を見て動けなくなってしまうのも仕方がない」


「そんなっ、私はっ」


(慰められていい訳がない、叱られるべきところだ)


「罪の意識があるのなら、後で始末書を提出してもらおうか」


「はい!」





 こうしてハルストンの海戦は、月陣営の勝利で幕を閉じたのだった。

実習とは違う本物の血、アンは怖気づいてしまいます。

これからの成長に期待です。

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