ナイト・オブ・スペード発足
「募集ポスターを作ってはくれないか?」
アーサーは「開発倶楽部」室長であり友人の周瑜に頭を下げていた。
「ああ、部隊再編か。苦労してるみたいだね」
開発倶楽部は元の技術開発室持ち上がりなので楽だった。
ジャンヌ・ヴァルキリアが率いるダイヤモンド・ウィングスも、そのままの持ち上がりに加え、ジャンヌのカリスマ性に惚れた入隊希望者が多々いる。
目下のライバルであるオルフェウス・アップル率いるアポロンズ・ハートは、積極的なスカウトにより勢力を伸ばしつつある。
人事方面が苦手で遅れを取っているアーサーの相談に乗る周瑜。
「で、今、何人集まってるの?」
「…………二人」
しかも自分の直属の元部下の二人だけだ。
「それは少な過ぎ。アーサー何かやらかしたっけ」
「全く思い付かん!」
機械に弱いアーサーのことだから、部下からのメール全無視とかしていそうだな、と周瑜は思った。
「ポスター作りには協力するけど」
「ありがとう! 友よ!」
周瑜は頭の中でポスターの図案を考え、いくつかの案を思い付いた。
「とりあえず、撮影しに行こうか」
「え? 撮影?」
開発倶楽部に何故かある撮影ルームに連れて行かれたアーサーは、何も分からないまま、ポーズを取らされ、写真を撮られていた。あれよあれよという間にポスターが出来上がっていく。
「来たれ、若人!」という言葉の隣に、決め顔のアーサーが大きく写っている。
「アーサー、顔は良いからね。これで何人か来るでしょ」
「そうなのか」
「うん。後はスカウトだね」
「誰に声をかけたらいいか分からん!」
「まあその辺は僕達の方でやっておくよ。人事系は得意だ」
アーサーは未だ三人しかいないナイト・オブ・スペードの談話室に帰った。
「隊長、どうでしたか⁉」
数少ない隊員の一人、リンボが話しかけてくる。
「ポスターが出来たぞ」
「良いじゃないですか」
もう一人の隊員ジーンが褒めてくれる。
「後は周瑜の方でスカウトしてくれるそうだ」
「どんな人が来るか楽しみですね」
「ああ」
「こちらアン・フロートさん。開発俱楽部と兼任。オペレーターと整備、看護、栄養管理と色々出来る大学飛び級の才女だ。確かNAの免許も持ってるんだよね?」
「ええ、まだペーパーですが」
「こんな優秀な人材が来てくれるとは! ありがとう! 歓迎しよう!」
その他、約20名の隊員が新しく入ってくれた。アンの他は皆、NA乗りだ。
一人一人、自己紹介をしつつ、アーサーが一言コメントをしていく流れになった。
「俺はコフィ。特に目立った功績はないが、応募した。まあよろしく」
「ああ、よろしく。これから頑張ってくれ」
これで握手をするのが流れだったが、コフィは手を避けた。
「くれぐれもフレンドリーファイアはしないでくれよ、隊長さん」
その言葉に周りがざわつく。
「フレンドリーファイア?」
「アーサー隊長がまさか」
「でも噂で聞いたことあるぞ」
「アーサー……」
周瑜が、この騒ぎを収めようとするが、アーサーはそれを制した。
「その噂は本当だ。私はかつて上官を撃ったことがある。しかし、それはやむにやまれぬ事情があったからだ。今でも悔いている。だが、同じ間違いは二度としないと誓おう」
それで、アーサーは騒ぎを止めた。
「ねえ、アンちゃんだっけ?」
コフィがアンに軽い口調で話しかける。
「はい。どうかしましたか?」
「これから、お茶でもどう?」
「はあ……」
「行こうよ。この後、何もないんでしょ?」
「ええっと」
アンは困り顔をして、どうにか逃げようとしていたが、コフィはしつこかった。
「おい」
アーサーはコフィの手を掴み、アンから引き離す。
「ここはナンパをする場所ではない」
「チッ、お堅い隊長さんだぜ」
コフィは捨て台詞を吐きながら去って行った。
「大丈夫か?」
「ええ。ありがとうございました」
「また、こういうことがあったら遠慮なく言うといい」
「はい」
「そういえば、君は何故、軍に?」
「兄が軍人だったんです。もう殉職してしまいましたが……。でも兄の後を追うっていうことじゃなくて、私が人々を救いたいと思ったからなんです」
「そうか。君の今後に期待している」
「はい、ありがとうございます」
こうして他のチームに遅れて、ナイト・オブ・スペードも発足することが出来たのだった。
アーサーは女性には紳士的です。
顔も良いのでモテるはずですが、アポロンのことが好きなので彼女が出来ることはありませんでした。




