鎧の探索
天空基地・ラピュータ。
「何故、俺がお前と一緒に行かねばならんのだ」
「まあまあ、ディアナ様も二人に期待しているっつーことで」
ゴネたガルーダを光明が宥めている。
「本当だな」
「ああ、ホンマやで」
「大体、お前もずっとこもってばかりで気に入らない」
「わいは頭脳労働専門なんで堪忍な。またスマホでナビするさかい、許してぇな」
「ふん。鎧などいなくても十分過ぎる程、ディアナ様はお強いが、仕方ない。この俺が直々に出向いてやろう。鎧め、感謝しろ」
「で、次はどこに行けばいいんだ?」
「ヤマトの国や。先日、そこのUチェスの大会中に探知機が反応した」
「どうすればいい?」
「君らもUチェスの会場に潜り込んで鎧を探すんや」
Uチェスは確か、エルフィンがやっていたやつで、そこそこ強かったことを思い出す。下っ端のウィルはカードすら触らせてもらえなかったが。
「俺はUチェスをやったことがない」
「何だ、Uチェスもやったことがないのか」
「なら初心者大会にエントリーするのがええで。ガルさんはスタンダードの大会に出て」
「分かった」
「ふん。俺のUチェスの腕前にひれ伏せよ」
「いや、ガルさん、そんな強くないやん。この前、子どもに普通に負けてたやん」
「五月蝿い」
「そんな訳でヤマトの国へ出発や」
ウィルとガルーダは、まず列車に乗ってヤマトの国に向かった。ヤマトの国は島国なので、途中で船に乗り換える。
道中、ガルーダは寝ている時以外は、ディアナがどれ程強いか美しいか、自分のUチェスの腕前を盛って話していた。
ヤマトの国に着いた。
「明日、Uチェスの大きなイベントが首都・トーキョーであるさかい、そこにエントリーするんや」
会場までの地図をスマホで表示し、近くのホテルの予約も取ってもらう。
「お前と一緒の部屋に泊まるのは気に障るが、仕方ない。お前が寂しがるからな」
「別に寂しがってない」
イベント当日。
ガルーダはスタンダード大会にサッサと行ってしまった。
「初心者大会というものに出ればいいのか?」
「ああ、でも、あんさん本っ当の初心者やろ。まずは体験会やな」
「分かった」
体験会は十歳以下の子どもが多かった。ウィルは、それに混じってルールを覚えたりするのは少し恥ずかしく思った。
教師役の大人が言う。
「好きな種族のデッキを選んでね」
「種族……」
「好きなものを選べばええんやで」
ウィルは今まで与えられたものを使ってきた。自ら何かを選ぶという経験がなかった。
「そんな迷わんでも、ピンと来たやつでええんや」
「じゃあ、これ」
自分が出せる剣と同じようなものを持っている男性が描かれている。
「勇者シリーズやん。主人公っぽい選択やね」
「俺が勇者で主人公? 似合わないな」
「クール系主人公って感じちゃう?」
「どうだか」
この後、駒の動かし方や基本ルールをレクチャーされた。
「じゃあ二人組作ってバトルしてみよう」
「ルールが分からなくなったら呼んでね」
見守り役の大人が巡回する中、バトルが始まった。
「今日はデッキの回りが良いぞ!」
ガルーダは調子良く、決勝戦まで進んでいた。
「さあ、決勝戦は、サムライ使いのガルーダとロボ使いの立花潤子だ!」
決勝戦は中央のステージで忍・J・キサラギの司会の下、行われる。
1, 2、3ターン目 お互いにポーンを動かす。
4ターン目 潤子がナイト「ヨル01(パワー10000)」、ガルーダがクイーン「雨竜(パワー13000)」を動かす。
5ターン目 マジックを使った潤子のポーン「グールV2」が、ガルーダのクイーン「雨竜」を破る。
「何だと……」
「パワーチェンジマジックだね! ポーンの下剋上!」
6ターン目 マジックを使い、ガルーダのビショップが潤子のナイト「ヨル01」を破る。
7ターン目 潤子のナイト「ヨル01」が、ガルーダのポーンを破る。
8ターン目 マジックを使い、潤子のルークが、ガルーダのビショップを破る。
9ターン目 ガルーダのポーンが潤子のポーンを破る。
10ターン目 潤子のナイト「ヨル01」が、ガルーダのポーンを破る。
11、12、13、14,15、ターン目 それぞれ駒を進める。
16ターン目 ガルーダのビショップが、潤子のビショップを破る。
「どうだ!」
17ターン目 マジックを使い、潤子のポーンが、ガルーダのビショップを破る。
18ターン目 マジックを使い、ガルーダのポーンが潤子のナイトを破る。
「おおっ、マジック合戦だ!」
19ターン目 ナイト一騎打ち 「ヨル01」VS「吹雪(パワー11000)」ガルーダが破る。
20ターン目 ガルーダのナイト「吹雪」が、潤子のルークを破る。
21ターン目 潤子のクイーン「キュリオス(パワー13000)」が、ガルーダのナイト「吹雪」を破る。
22ターン目 潤子のルークが、ガルーダのポーンを破る。
23ターン目 ガルーダのルークが、潤子のポーンを破る。
24ターン目 ガルーダのルークが、潤子のポーンを破る。
25ターン目 潤子のクイーン「キュリオス」が、ガルーダのポーンを破る。
26ターン目 ガルーダのルークが、潤子のポーンを破る。
27ターン目 ルーク一騎打ち。ガルーダが破る。
「よしっ!」
28、29ターン目 それぞれ駒を進める。
30ターン目 ガルーダのルークが潤子のポーンを破る。
31ターン目 潤子のキング「戦艦ヤマト(パワー16000)」が、ガルーダのルークを破る。
32、33ターン目 ガルーダのルークが、潤子のポーンを破る。
34ターン目 潤子のキング「戦艦ヤマト」が、ガルーダのルークを破る。
35、36ターン目 それぞれ駒を進める。
37ターン目 潤子のクイーン「キュリオス」がマジックを使い、ガルーダのキングを破る。
「チェックメイトだ~!」
「クソッ、負けた!」
「はいはい、バトルが終わったら握手ね~」
「お手合わせ、ありがとうございました」
潤子が丁寧にお辞儀をして、手を差し出す。
ガルーダが、その手を嫌々握った瞬間――――
潤子とガルーダの身体が光り出した。
「これは……?」
「武器の共鳴や」
スマホから光明の声がする。
「この女が鎧ということか?」
「せやな」
「ってことは、月陣営の武器の子達だね!」
キサラギが嬉しそうに言った。
体験会でUチェスのルールを何となく覚えたウィルに光明は言った。
「鎧が見つかったで」
「本当か?」
「ステージの方へ行ってみぃ」
ウィルはステージに近付くにつれ、胸の奥が温かくなるのを感じていた。
ステージはキサラギが綺麗に収めて、ガルーダと潤子はステージ裏に下がっていた。
「立花潤子はん、あんたはディアナ様の武器や」
「ど、どういうことですか?」
「俺達と一緒に来い」
「え、え、え~」
「まあまあ。ディアナ様のために武器として働くっつうことや」
「武器?」
「文字通り、武器になれるんや。あんたの場合は鎧なんやけど。ああ、そうや、ガルさん、試しに翼に変身してみぃや」
「よし、見て驚け!」
ガルーダの身体が光に包まれ、次の瞬間には翼が浮いていた。
「どうだ、すごいだろう」
翼だけが浮いて話しているというシュールな絵面になっている。
「え~、何これえ」
「俺も剣になれるのか」
「なってみるか?」
「ほッ」
変な掛け声と共にウィルの身体が剣に変わった。
切っ先を下にし、壁にもたれかかり、バランスを取る。
「どうだ、剣になれているか?」
「な、なってます!」
「そうか。よかった」
「わ、私も鎧になってみます! ……ふんっ」
鉄製の西洋鎧になった。
「どうですか?」
「鎧になれてる」
「何かシュールな現場だねぇ」
ステージ撤収を終えたキサラギが微笑みながら見ていた。
「ほんで、一緒に来てもらうんやけど、ええかな? 準備とか」
「はい、ちょっと、お父さんに言ってきます!」
一時間程して潤子が戻ってきた。
「はい、一緒に行けます。学校にもオンラインの手続きをしてくれるそうです」
「ほな、月陣営に凱旋や」
立花潤子の家は父子家庭です。
お父さんはUチェスのランカーだったこともありますが、今は引退しています。




