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太陽と月  作者: 夢水四季
10/33

ウィルとミーナ

「ウィル、南部へ行ってみなさい」


 ディアナに言われるがままに何やら四角い薄い箱を持たされて、海中基地・アトランティスの外に出された。


「そんじゃあ、ナビしますんでよろしゅう」


「うわっ、何だこれ⁉」


 謎の薄い箱が突然喋り出したので、驚いて落としそうになる。


「ああ、あんさんスマートフォンとか見たことないのん? 田舎もんやねぇ」


 そういえば、こんなようなものをエルフィンが持っていたような気もする。一般兵の俺ごときが触らせてもらえることはなかったが。


「あっち、アポロンはんの方々がよう使うとる機械をちいっと真似てみたんや。ま、あっちのよりは性能ええで。魔法製やから水に濡れても、落としても、百人乗ってもダイジョウブ」





 列車を乗り継いで栄えていそうな街に辿り着いた。


「テキトーに腹ごしらえでもしてきなさいよ」


 このスマホとかいうやつは便利だ。行先を教えてくれるし、財布代わりにもなる。


 俺はレストランに入りメニューを見る。ディアナに救われてから、俺の暮らしは格段に豊かになっている。レストランに入ってステーキが食える日が来るなんて思わなかった。




 飯を食い終え、スマホで支払いを済ませる。




 何やら外が騒がしい。


「こら~、待ちなさい!」


 どうやら大捕物が展開されているようだ。


 まあ、俺には関係ないか。


「ほな南方司令部まで案内しますわ」




 月陣営・南方司令部は大聖堂のような建物だった。


「はい、ディアナ様から聞いております。ウィル様ですね」


「~様」付けで呼ばれるのが初めてで、何だかこそばゆい感じがする。


「ここでお待ち下さい」


 待合室の、ふかふかの椅子に座って待っていると、廊下からドタドタと足音がした。


「おまたせっ。ちょっと泥棒追いかけてたら遅くなっちゃって」


 元気のいい女性が入ってきた。


「あんたがディアナ様のお気に入りのウィル?」


「お気に入りかは知らないが、俺がウィルだ」


「私はミーナ・バーンズ。階級は大尉よ。よろしく。あんたと協力して、怪物を退治してくれと頼まれているの」


「怪物?」


「私の手をこんなのにした奴を早く牢屋にぶち込んでやるのよ」


 ミーナが軍服の袖を捲り上げる。金属の義手が現れる。


「怪物はこの南部の街に現れて、人を襲ったり、食べ物を盗んだりしてるの。ここ数か月、軍でも行方を追っているけれど、まだ捕まえられていない」


「何で俺も」


「さあ、経験値稼ぎじゃない?」


「経験値?」


「あんた、戦闘経験とかあるの?」


「ある。ディアナに拾われる前は傭兵部隊にいた」


「へえ、大変だったわね。今度は怪物を倒してレベルアップしろってことよ」


「分かった」


「んじゃ、夜行性の怪物に合わせて、今日の夜8時ここで集合で」


「分かった」





「来たわね、ウィル」


「ああ」


「これ付けて」


 耳に付けるタイプの無線機だった。


「これで私からの指示が聞こえるから。何か武器はある?」


「ええと」


「あんさん、剣の人やろ」


 久しぶりにスマホが喋った。


「だったら念じるだけで剣が出るはずや」


「剣」


 手の中に剣が収まっていた。


「あんたそれ、どうなってんの? 魔法?」


「俺も分からない」


「じゃあ頑張りぃや」


 特に説明もなく、スマホは喋らなくなった。




 アォーン


「怪物の鳴き声よ」


「狼か?」


「人狼よ」


「人狼?」


「人型の狼、知能が発達してるから、手ごわいわよ」




『C班、人狼の居場所を捕捉! 25番通りの青果店を襲撃中』


「了解! 住民の保護を優先!」


 ミーナが耳に付けたイヤホンから指示を出す。


「行くわよ!」


 ミーナが走り出す。ウィルはミーナを追う。




 人狼は青果店の前でC班に囲まれていた。


「皆、引き付けてくれて、ありがとう!」


ミーナが両手を合わせると、義手に描かれた錬成陣が光り、炎が発射される。


炎は人狼を包み込んだ。人狼はその中で暴れている。


「⁉」


「錬金術を見るのは初めて?」


「これが錬金術」


「魔法と違って無限じゃない、錬成陣がないと使えない。魔法使い共には馬鹿にされるけどね」


 人狼が何かを唱えると、炎が氷漬けになる。


「でも人狼は魔法が使えるの。厄介よ」


「炎で氷に勝つのか」


「理論上は勝てるはずなのよ。でも魔法が理論の邪魔をする」


 ウィルは魔法使いエルフィンを思い出す。確かに、あいつは強かった。


「あなたの剣、魔法製よね」


「せやで。これ上手く使おたら勝てるんちゃう?」


 スマホが喋る。


「分かったわ。やってみる」


 人狼が氷の範囲を広げていく。


 ミーナが氷を炎で溶かしつつ、距離を詰めていく。


 ウィルは人狼の裏に回り込んでいた。


 ミーナが銃を人狼に向けて放つ。人狼はそれを避けると、後ろのウィルの刀身に銃の弾が当たる。当たると同時に弾は弾け、剣に炎を纏わせる。


「うおおおおぉ」


 ウィルは炎を纏った剣で人狼に斬りかかる。


 人狼の首が落ちる。


「勝った!」






「その人狼の遺体、回収してほしいんよ」


「何故?」


「そいつは恐らくキメラや」


「キメラ?」


「聞いたことあるわ。人と動物の遺伝子を掛け合わせた生物のこと?」


「せやで。うちの研究所、中々物騒なことやってるんや」


「逃げ出した怪物を回収しろと」


「よろしゅうたのんます」




 キメラの遺体を回収し、スマホに言われた通り、カプセルに詰めて保存した。




 次の日は一日、祝勝会が行われた。


「人狼、討伐、おめでとう!」


「「乾杯‼」」


 ミーナとその部下達、街の皆が酒場に集まって、騒いでいる。ミーナは街のアイドルのようだった。


「私はいつかシンドバッド大佐を超えて見せる!」


「さっすが、隊長!」


「よっ、ミーナ!」


「シンドバッド大佐?」


「ミーナが目の敵にしてる錬金術師の先輩だよ」


「何故、目の敵に?」


「まあ、色々あったのさ」


「色々……」




「じゃあ、また南部に寄ることがあったらよろしく」


「ああ、世話になったな」


 ミーナと別れ、ウィルは列車に乗って帰って行く。





 月陣営、天空基地・ラピュータ。


「お疲れさん」


 スマホで聞いた声の主がいた。


「わいの名前は光明や。ま、ペンネームなんやけど」


「ウィルだ。ナビゲートありがとう」


「どういたしまして。キメラ渡してくれるかいな」


「ああ」


 ウィルはカプセルを渡す。


「ご苦労さん」


「それは何処へやるんだ?」


「研究所やな。解剖でもするんちゃう?」


「その研究所っていうのは?」


「うちの錬金術師のトップが室長やってるんや。怪しさてんこ盛り」


「錬金術師のトップ?」


「ラヴクラフトさん言うんやけど。ま、いつか会えるかもな」


「そうか」




「で、わいの説明をしてもええか?」


「ああ」


「わいの立場は、あんさんと似たようなもんや」


「どういうことだ?」


「あんさんは剣、わいは眼」


「?」


「ディアナ様の武器」


「ディアナの?」




「おい、ディアナ様と呼べ」


「ああ、めんどいのが来たで」


「俺の名前はガルーダ、ディアナ様の翼だ!」


「ディアナの翼?」


「だから、様を付けろと言っているだろうが!」


「おお、怖い怖い、ディアナ教には近付かんのが一番や」


「だから、翼って」


「言ったやろ。わいらはディアナ様の武器やって」


「それがどういうことだ?」


「武器になれるんや。ディアナ様と一体になってな」


「?」


「まあ、時が来たら分かるやろ」




「で、ここにわいらが集められたのは理由があるんや」


「鎧の探索だ」


「鎧?」


「わいらと同じ武器になる人間や」





ミーナは錬金術師ですが、感覚は一般人に近いです。

街の皆に慕われる素直な良い子です。

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