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【連載版】あなたが『当たり前だ』と仰ったので。  作者: 夕綾 るか


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第二十五話


「お話があるの。少しよろしいかしら?」


 部屋に入ってきたのはカメリア様率いる生徒会の方々だった。

 代々使用してきた部屋だから勝手がわかっているようで、各々静かに席に着く。


「まずは学園一位、おめでとうございます」


 カメリア様が小さく頭を下げると、他の方々も一様に頭を下げた。


「ありがとうございます」


 まさかお祝いの言葉がいただけるとは思わず、少し驚いたが、彼女らの様子で心からそう思っているわけではないことはわかった。


「ただ――セラフィーナさんの提示した条件について皆で話し合ったのだけれど」


(ん? 提示した条件って……あれは約束だったんじゃないの?)


「後期中間考査の結果だけでもう一人の生徒会役員を決めるわけにはいかないの。例年、後期の最終考査で決めていて、後期期間中で決定するなんて前例はないのよ。わかっていただけるかしら」


 理屈としては通っている。けれど、理由はそれだけではないだろう。

 恐らく、私の成績を疑っている部分もあるはずだ。だから、後期最終考査を受けさせて、次も良い成績が取れるかどうか確かめたいのだ。


「では、後期最終考査の結果次第、ということでしょうか」

「ええ、そうなるわ」

「わかりました」


 あの時、この部屋には私とカメリア様の二人だけだったため、交わした約束の内容を証言してくれる人はいない。

 でも、今回は生徒会役員全員が証人だ。もちろん、その中にルディも含まれている。


 ルディに目をやると視線が交わる。ルディはそっと胸に手を当て、よそ行き王子様スマイルを浮かべ優しく微笑んだ。


「セラフィーナは優秀だから大丈夫だよ。でも次こそは負けないから。()()()()()()ね」


 強調された“約束”という言葉にカメリア様がピクリと反応する。


「もちろんよ。口約束も立派な()()ですから」


 先輩方がこの部屋へ入ってきたと同時に私の隣へと席を移動し、ピッタリとくっつくように座ったルディに微笑み返した。


「どんな約束をされたのですか?」


 二年のレジーナ様が黄色い瞳を輝かせ、興味津々といった感じで身を乗り出した。

 ルディは口元に人差し指を当て、目を細めた。


「それは秘密です。ただ――絶対に勝ちたいと思えるくらいに欲しいものを強請っています」


(わぁお。何だろう? めちゃくちゃ怖いんだけど)


 褒美が欲しいとは聞いているが、そんな大それたものをあげられる気がしないし、そもそも何が欲しいかなんて聞いていない。

 背筋をヒヤリとさせている私とは反対に、カメリア様とレジーナ様の頬は薄っすらと紅潮していた。


「なるほど。では今回の中間考査でも勝負していた、ということでしょうか」


 副会長のジェラルド様が眼鏡のブリッジを中指で押しながら問いかけた。


「はい。残念なことに負けましたけど」


 もしかしたら、学園中の生徒たちが同じように思っているのかもしれない。

 ルディが私にわざと負けた、と。

 

 一度たってしまった悪評を覆すのはそう簡単なことではないようだ。

 私が視線を下げると、ルディが優しく肩を抱いた。


「そもそも、私はセラフィーナに一度も勝てたことがないのです」

「え……?」


 今聞いたことが信じられないというように、皆一様に目を見開き驚いた表情になる。


「私とセラフィーナは侯爵家で一緒に学んでいましたから。その時から今まで、一度も勝てたことがありません。セラフィーナが学園に入らなかったのは、入る必要がないくらい優秀だったからです。ですから、セラフィーナについての噂を耳にした時、正直驚きました。誰が流したものか知りませんが、何の根拠もない証拠もないデマを鵜呑みにし、信じ切っている人たちにも」


 品行方正な侯爵令息様はいかにも残念そうな表情を浮かべ、憂いてみせる。


「自分の目で見て、耳で聞いて、事実を確かめようとは思わないのでしょうか。私なら噂話を鵜呑みにして信じるなど、怖くてとてもできません」


 ルディは細かく首を振った。

 生徒会役員の方々は気まずそうに俯いている。


「生徒会役員である先輩方はそのような噂に惑わされていないとは思いますが。特に後期は今後の進路が決まる大切な時期ですから。いつもより慎重に学園生活を送らなければなりませんからね」


 レイナイト侯爵家とグランディ公爵家を敵に回したくないだろ、と言いたそうなルディだが、品行方正の暗示にかかっている皆様の心にはきっと優しく響いているのだろう。

 まるで人を惹き付けてしまうセディお兄様をみているようだ。仕えていると自然と似てきてしまうものなのだろうか。


 兄のようになったらどうしよう、と婚約者に対して一抹の不安を覚えたのだった。


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