第二十四話
「あ? もしかして、誰か来たのか?」
あの後、勢いをなくしたカメリア様はすぐに授業へ戻っていった。
授業が終わる前だったのでルディとすれ違うことはなかったはず、なのだが。
何で気がついたのだろう、と部屋中をキョロキョロと見回してみる。けれど特に変わったところはない。
ルディは先ほどまでカメリア様が腰掛けていた場所にドカリと座った。
「んで、誰が来た?」
「カメリア様が」
ルディの眉がピクリと動く。
「授業中にわざわざこの部屋に来た理由は?」
「ルドルフとの婚約を解消してくれないかしら、って」
「……は?」
今度は盛大に眉が動き、不快感を顕にしている。
「どうやらルディが後継者に選ばれたからダニエル様との婚約を解消して私が無理やり婚約者を変えさせたと思われているみたい」
「何だ、それ」
ルディは眉間に刻まれたシワを深くした。
「でもね、あまりにも不快だったから、ちょっと言い返しちゃった」
私がふふっと笑うと、ルディが一瞬にしてその表情を変え、首を傾けた。
「他の家から口を挟まれる筋合いはないし、一令嬢が言うなんて以ての外だって。それにやっぱり私のことを頭の悪い令嬢だと思っているみたいだったから――私が後期中間考査で一位を取ったら、この部屋のもう一つの鍵をくださいって、約束を取り付けたわ」
私が満足げに口角を上げると、ルディの顔がへにゃりと綻んだ。
「じゃあ、俺も約束を取り付けようかな」
いったい何を誰に約束させようとしているのか不明で、今度は私が首を傾けた。
「俺はフィーに負けるつもりはない。全力でいかせてもらう。俺が一位を取ったら、フィーからの褒美がほしい」
「え……ルディにあげられるものなんてないと思うけど……」
侯爵家の令息で何でも自分で用意できる財力もあるし、流行りのものなど領地やタウンハウスでほぼ引きこもり生活を送っていた私よりも断然、ルディの方が詳しいだろう。
「まあ、それは一位を取った時に言うよ」
「わかった」
多分、ルディなりに忖度はしないと私に宣言しておきたかったのだろう。
生徒会を一緒にやりたいからと、わざと手を抜かれたりしたら嫌だし、私がそう思っていることもわかっているだろうから。
結局、ルディはいつも私のことを一番理解してくれている。
「私がルディにご褒美をあげることはないと思うけどね」
ルディの欲しいものが何なのか少し気になるけど。
私も忖度はしない。
そして、後期中間考査の日がやってきた。
◇
「くっそぉ! 二点差って、あと一問じゃねーか」
「厳密に言えば、あと二問正解できていたら、ね」
中間考査の結果は私が学園で一位となり、二点差でルディが学園二位の成績を収めた。
ルディよりも点数がよかったこともあり、変な言いがかりをつけられることもないだろうし、今まで散々バカだと罵っていた者たちに一泡吹かせることができただろう。大満足だ。
さっそくカメリア様から鍵をもらおうと一年用の生徒会室で生徒会役員が来るのを待っていた。
しかし、誰一人、来ない。
「まだ来ないなんて……ちょっと遅ずぎない?」
「だな。とっくに授業は終わってるし」
普段ならこの時間には全員揃っているはずだ。
まだ生徒会役員ではなかったが、ルディの婚約者としてずっと一緒にいたから知っている。
「約束は守ってもらわないと」
結果的に生徒会役員は皆、学園十位以内にも入れていなかった。ゆえに私の圧勝だ。
生徒会役員の候補に挙がった一年の頃はきっと成績がよかったのだろうから、もう少し頑張ってほしいものである。
そんな話をしていると、室内にノック音が響いた。




