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社交界でその名を知らぬ者はいないとされるクリュスタロス公爵と邂逅したミレイアは、自分を捨てたリスティン家に復讐するために公爵を利用しようとする。


まだ残酷描写はありません。

クリュスタロス公爵様に連れてこられた宿は王都でも1番ランクの高い宿で、通された部屋は最上階の1番高い部屋だった。


ソファーに座らされ、セルジオと呼ばれた執事が用意した紅茶を頂く。

生家でも色んなブランドの紅茶を飲んできたが、今口にしている物はそのどれよりも香り高く、渋みもなくて、とても美味しい。


「……さて、リスティン伯爵の……」

「ミレイアですわ」

「ではミレイア、私に助けを求めてきたが……一体君の身に何があったのかな?」


テーブルを挟んで向かい側のソファーに座った公爵様が私を吟味するように見つめてくる。

私の心の内を探るような目が恐ろしくも美しく、息を呑んだ。

けど此処で臆する事なく、私は目にいっぱい涙を溜め、声と体を震わせながら、部屋来るまで考えた台詞を語る。


「わ、私には、婚約者がいたのです…ですが……お姉様が、私の婚約者を誑かして…奪っていったのです……」

「………」

「挙句……私が長年お姉様に嫌がらせをしてきたと偽りを述べて、お父様達を騙し……私を勘当し……リスティン家から追い出したのです……うぅぅぅっ!」


手で顔を覆い、声を上げて泣くフリをする。


私は涙を自在に流せるのが得意で、この特技と演技で大抵の人間はコロッと騙されてくれて、欲しい物は手に入れてきた。


お姉様の婚約者には効かなかったけれど。


「…………つまり、今の君は行くあてがないと言うことかね?」

「そうなんです!恐らく親族にも私への悪評を知らせているはずなので、私には…頼れるものが何もっ…….」


公爵様の目には今の私は身寄りがなく、不幸のどん底に落とされた、非力で哀れな令嬢に見えているはず。

私の知る限り、クリュスタロス公爵様は冷徹であったり人でなしではないはず。

それに、つい先ほどあった伯爵家の家庭内事情が公爵様の耳に届いている訳がない。

私がリスティン家に復讐できるチャンスを得られか否かは、ここで決まる。


「…………分かった、では私の屋敷に来るかい?」

「ーーーーっ!」


やはり、私はまだ神に愛されている!


「よ、よろしいのですか…?」

「ああ、泣いている女性を見捨てるなんて、紳士の行動ではないからね」


ええ、ええ!今の公爵様ほど紳士と言う名が相応しい方はいらっしゃらないでしょう!

これで私の逆転劇の幕が上がった!


ーーーけど、まだ、安心はできない。


「とても、とてもありがたいのですが…その…公爵様のお屋敷の方々……特に、『奥様』には、ご迷惑では……?」


そう、クリュスタロス公爵様には奥方がいる。


『カーミラ・クリュスタロス』


私は直接会った事はないが、社交界にて『氷の妖精』という異名を持つ程に美しい女性だと聞いている。

しかし噂では5年前に大病を患い、以降は社交界どころか、公爵邸から一歩も出ずに引き篭もっているとか。


「カーミラの事を気遣ってくれてありがとう、安心してくれ、君の事は私から言って聞かせるし、君が屋敷内で彼女に近付かなければ何も問題は起きない」

「近付かなければ、とは?」

「…病に侵されてから、妻は私とセルジオ以外の人間と関わる事を嫌ってしまってね、ずっと自室に篭ってしまっているんだ、だからカーミラに近付かないと約束してくれれば、いくらでも屋敷に居ていいの」


屋敷どころか部屋から出ていないとはね。


……それならそれで好都合だわ。


カーミラ夫人が部屋に引き篭もっている間に、公爵様…そして公爵邸の人間全てを私のモノにして、私が公爵夫人になってやる。


そして、社交界でリスティン家の奴らに、公爵夫人となった私の姿を見せつけてやるのよ!

今回も読んでくださりありがとうございます。

カーミラ夫人は次で出てくる予定です。

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