「オタク趣味のヤンキーちゃん」
「さすが姉御!」
「姉御なら勝てるって信じてました」
「…………」
は、恥ずかしい……。
「さすが姉御、クールだぜ」
「こんなやつを相手に言うことすらないんですね」
「…………」
ち、違うって言おうとしたけど、恥ずかしくてどもっちゃう。
それにこの子たちのの期待に満ちた目を見てると否定するの申し訳なく思ってくる。
恥ずかしさと緊張のあまり、私は足早にその場を去る。
た、倒した人には申し訳ないけど、喧嘩うってきたのあっちだから、仕方ない……よね……ど、どうなんだろう……うーん。
とりあえず、今日は用があるので足早に帰ることにした。
あたしは家に帰り、絶対にばれないように用心深く着替えた。
瓶底眼鏡よし、ウィッグよし、すごく地味な服装よし。
これで、あの子たちにあたしとばれないはず。
たまたま喧嘩しているあの子たちを見つけて、不利になってから助けたけど、それ以来、姉御としてあの子たちに慕われてるけど……正直、あたしそんなガラじゃないと思うのです。
ボクシングジムが実家だから小さいころからボクシングを習ってて、腕には自身があるけど……どうしたものかしら。
正直、恥ずかしくて言い出せない。
口下手なうえに、目つきが悪いからよく誤解されてきたけど、今回みたいに姉御扱いされるとは思わなかった。
それよりも重要なのは今日は『百合のマリア』の発売日……!
あたし、正直、本とか読んでる方が好きなのです。
そして、今、一番はまってる漫画が『百合のマリア』なの。
これだけは、これだけは絶対にほしい。
けど、みんなの期待を裏切るのはすごく心が痛い。
だから、絶対にばれないように『百合のマリア』の新刊を手に入れて見せる……!