08 下層の異変
明けましておめでとうございます。今年は頑張って投稿頻度を増やしたい(期待しないで下さい)。
ダンジョンに潜るようになって2週間が経った。
それぞれの班ごとに分かれて探索しているので他のクラスメイト達がどこの階層を探索しているのかは分からないが、俺たちの班は今のところ順調に階層を攻略しながら進んでいる。
そして現在、念願の9層へとたどり着いた。
「ここで四津谷君とはいったんお別れだね」
そう言うのは学級委員長の有本さんである。俺の目的であるミスリル鉱石を採掘するためこの階層まで有本さん達の班に混ぜてもらっていた。
「ここまで2週間ありがとう。思ってたより楽しかったよ、ホントにありがとう」
「もぉー、何水臭いこと言ってんの。また帰る時も一緒なんだから、いったん分かれるだけじゃない」
「そうだぞ!四津谷!俺たちがこれまで築いてきた絆は少し離れたぐらいで切れはせんぞ!」
有本さんだけじゃなくM4にもここまで何度も助けられた。戦闘だけじゃなく回収した素材の運搬なども手伝ってもらったりしていた。
以外にも話してみると筋肉以外の話題にも答えてくれたし、戦闘時の体の動かし方なども教えてくれて楽しかった。
ただ、暑苦しいのにはどうも慣れなかったけど。
「じゃあ、また後でね。四津谷君。いくよ、マッチョ軍団」
俺との別れを惜しんで男泣きしているM4を有本さんが引き連れてダンジョンの奥へと進んでいった。
この2週間、俺はM4達と仲良くなったが、有本さんと彼らの仲は全く進展しないどころか遠ざかったように思う。
彼らも年頃の男子でありこの班で紅一点の有本さんに良い姿を見せようと色々としていたようだが、どれも失敗に終わっていた。悪い奴らではなくむしろ良い奴らではあるのだが、バカなのだ。
例えば、戦闘中に有本さんの死角から飛びかかり攻撃しようとしたモンスターをタックルして阻止したのは良かったのだがサイドチェストしながら有本さんにウィンクしていた。
他にも食事休憩中に有本さんが食べてる物をカロリー計算してこうした方がいい、ああした方がいいと言ってくるのである。彼ら的には栄養バランスなどの観点から言っているのだろうが、頼まれてもいないのに女子が食べている物を見てカロリー計算するとかちょっとキモイと思ってしまった。
そんなことを何回かしていたら有本さんからとうとう名前で呼ばれなくなったようで、マッチョ軍団やマッチョ1号などと呼ばれるようになった。うん、バカだ。
だが、彼らのおかげで俺もこの2週間でモンスターを倒し、無事にレベルを上げることに成功した。レッサーマウスやゴブリン、スライムなど上層でも比較的弱く簡単に倒せるモンスターだが、M4が足止めしている間に俺が弱点を攻撃することで安全にモンスターを倒していった。
その成果は―――
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Name(名前):四津谷 界人 Gender(性別): 男 Age(年齢): 16
Job(職業): 鍛冶師
Level :4
STR(筋力):105
VIT(耐久):42
DEX(器用):168
AGI(敏捷):34
MP(魔力):75
Skill(技能):[鍛冶Lv3] [眼識Lv3] [採取Lv1] [解体Lv1] [言語理解]
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モンスターを倒したことで経験値的なものが入ったのかステータスが結構伸びた。それでも戦闘職のやつらよりは伸びは低いが。
スキルの欄に採取と解体が新たに追加されていた。採取は採取したい素材がどこにあるのか直感的に知らせてくれるスキルでレベルによって方角や距離が細かく分かるようになるらしい。ただし、一度採取したことがある物に限る。もう一つの解体はモンスターを解体する際に体内にある臓器・血管・魔石の位置や大きさが分かるスキルだ。このスキルもレベルが付いているので最初の内は制限されるだろうが使っていけば上がるので問題ないだろう。
それよりもこのスキルがあればモンスターを効率よく解体することができるようになったので獲得できたのは嬉しかった。
同じモンスターを解体する際でも、個体によって体内の構造が若干違ったりするので一苦労するのだ。下手にやるとせっかくの素材に傷をつけたりしてしまう恐れがあるから。
有本さん達と別れた後、補助の騎士団員が護衛として一人来てくれたので適当に話しながらミスリル鉱石が採掘できるポイントまで歩いていく。
「では、私はここで辺りを見張っていますので、界人殿は採掘作業の方を初めて下さい」
「はい、お願いします」
界人の目の前には所々に何かを掘り出した跡が残っているダンジョンの壁がある。それは今までにミスリル鉱石が掘られたであろう跡だった。
界人はカバンの横に括り付けていたピッケルを手に取り誰かが掘った跡のすぐ近くの壁をたたき出した。
「とりあえず、自分で最初に採らないと [採取] のスキルが発動しないからなッーーー」
カンッ!カンッ!ガンッ!ガンッ!
暫くピッケルで壁を掘り進めてみてようやくそれらしきものを発見できた。
「っ!・・・」
ピッケルで砕いた壁の一部から淡く青みがかった銀青色の金属が見えたのだ。それはまさしくミスリルの特徴の一つである。
ミスリルは魔力の伝導率が高く魔力を込めると硬くなる性質以外にも、美しい色合いが特徴的である。金属の銀色に青みを帯びたような色が混ざり合い光沢を放っているのだ。また、青色が濃いほどミスリルとして純度も高くなる。
「手痛ッたー。やっと一つか・・・でもこれでスキルが使えるようになるから効率は上がるか」
界人は掘り出したミスリル鉱石を手に持ちながら見つめた。
ここまで掘り進めてミスリルを手に入れるのに1時間はかかっている。ただ、正確にどこに埋まっているか分からない状態で発見できたのだ。それを1時間で見つけられたのだから運が良かったと言えるだろう。下手をすれば、何時間も掘り進めても成果0という結果だったのかもしれないのだから。
界人はそれから [採取] のスキルを使いながら、順調に掘り進めて言った。
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冒険者にはランクがあり、それによってギルドから依頼を斡旋してもらえる仕事内容が違ったりする。もちろん高ランク冒険者ともなれば依頼内容は難しくそのぶん報酬は高いのだが。
冒険者のランクは下から順に鉄・銅・銀・金・白金の五段階に分かれていて、これらはステータスプレートの色で見分けれられるようになっている。冒険者ギルドには教会と同じ魔道具があり、それを使ってステータスプレートの色を変えることが出来る。
鉄で初心者の半人前。銅で一人前。銀で一流と言われる中級冒険者となる。比率的には銅と銀が一番多い内訳になっている。その上の金までになると超一流と言われ依頼内容は貴族や国からの物がほとんどとなり地位や名誉、冒険者としては莫大な財を築けるとまで言われている。白金はいるのかどうかすら怪しまれていて金ランクの冒険者の士気高揚の為に作られただけの地位と考えられている。それ故に実質的に金ランクがトップという扱いになっている。
金ランクの冒険者は全体的に数が少ないがダンジョンのあるカライルには2パーティー存在する。
「なぁ、今回の依頼報酬って可笑しくないか?」
「・・・・」
「なぁ、オイって!」
男がダンジョンで何か考え込んで隣を歩いている別の男に話しかけた。
「・・・ん?ああ、すまない。調査依頼で破格の報酬、勿論何かがあるのだろう。だがそれを承知で受けたのだろう?」
「前金で金貨200枚。何らかの成果報告を持ち帰ることでさらに金貨800枚だもんなぁ」
そんな会話をしているのは金ランク冒険者『ハウンドドッグ』と『ホワイトイーグル』のパーティーリーダーである。
カライルで活動する冒険者の中でもトップと呼ばれる2つのパーティーがギルドからの同様の依頼を受け一緒にダンジョンに潜っていた。
現在彼らがいるのはダンジョン45層。下層と呼ばれる領域である。そして、もうすぐ46層の差し掛かろう所まで来ていた。
「・・・ドルンすまない。我々は次の階層に入るのは遠慮させてもらう。今回の依頼、ホワイトイーグルは放棄させてもらう」
「おいおい。元騎士様のハスターがここまで来て降りちまうのかよ。金ランクが2パーティーもいるんだぞ?しかも、ここに来るまでいつものダンジョンと変わらなかっただろ?」
「だが、ここの階層に入ってから妙な胸騒ぎがする・・・」
「考えすぎなだけだと思うぞ?第一ウチとお前んトコの斥候は何も異常はないと言ってるし、変な気配も感じない。だからーーー」
パカパカ。パカパカ。
「ッ!?」
会話していた2人の耳にダンジョン内からリズミカルな音が響くのが聞こえた。
すでに2つのパーティーは各々の武器を構え、いつでも戦闘ができるように構えていた。
やがて音が近づいて聞こえた頃には冒険者達の目にもその存在が見えるようになった。黒い靄のような物で包まれた体は全体像がつかめないが紅く光る瞳孔はこちらを睨んでいる。恐らくモンスターではあるのだろう。
「なんだありゃぁ!?」
「分からん!だが、すぐに逃げるべきだ!あんなものは見たことがない。幸いまだ距離があるうちにーーー」
二人のリーダーは近づいてきた何かを目にした瞬間最大限に危機感を持った。いつでも撤退できるようにモンスターから目を逸らさずにいたが、彼らの目から忽然と消えた。
そして気づいた時には彼らの背後にそのモンスターは移動していた。そこから謎のモンスターによる奇襲が始まった。
まず、冒険者達の背後にいつの間にか移動していたモンスターは後衛にいた内の一人の頭を噛み潰しもう一人の後衛を後ろ脚で蹴り飛ばした。蹴り飛ばされた後衛の冒険者は身に着けていた防具が原型を止めないほど凹み、内臓を潰され即死した。
この時点で弓使いと神官がやられ、遠距離攻撃役と回復役が潰されたことになる。
「コイツッ!コッティーとフランをっ!」
突然仲間が二人殺され、動揺して立ち止まっていた残りの冒険者達はすぐに立ち直り冷静になる者と怒りに顔を歪ませる者に分かれた。
そして怒りに顔を歪ませていたドルンと呼ばれた男が手に持つ大剣を構え謎のモンスターに飛びかかって行った。
「やめろっ!バカっ!止まれっ!」
ハスターが止まるように怒鳴るが既に耳に入っていないのかドルンは真っすぐモンスターに向かって行く。
「リーダーどうします?」
「私があのバカを連れ戻す。お前たちは残りのハウンドドッグのメンバーと共にすぐ撤退出来るように離れておけ。そして合図を出したら閃光玉を投げろ。私もすぐに撤退する」
ハスターは自分のパーティーメンバーに指示を出し直ぐにドルンの後を追った。
「ハァァァァッ!!!」
ドルンがモンスターの直前まで迫り、脚に向けて右から横薙ぎを払おうとした。
「うっ!?」
だが、払う前にドルンの体が立ち止まり動かなくなった。
モンスターは動けなくなったドルンを踏み潰そうと前脚を持ち上げた。
「させるかっ!」
後ろから追っていたハスターがダガーナイフを投擲しモンスターの攻撃を数瞬遅らせる。その間に前脚が振り落とされる前にドルンとモンスターの間に無理やり体をねじ込み左手に持つ小盾で攻撃防ぐ。
「くッ!?」
小盾が砕け、左腕に直接鈍い衝撃と痛みが走ったハスターは苦悶の声を上げながら仲間に合図を出す。するとすぐに閃光玉が飛んできてモンスターの傍に落ちた。
地面に落ちた閃光玉はすぐにその効果を発揮した。辺り一帯を直視出来ないほど眩しく光り、薄暗いダンジョン内に少しだけ太陽が昇ったかのよう照らした。
モンスターが一瞬怯んだのを見逃さずハスターは右腕でドルンを抱き起こし、引っ張りながら仲間達の方に向かった。
閃光玉は数秒間光り続けていたが、やがて光が止む頃には冒険者達の姿はなくモンスターだけがその場に残っていた。
モンスターは逃げた冒険者達の後を追わずに自分が殺した二人の冒険者の骸に近づき骨も残さず喰い尽くした。そして、紅い瞳孔は次の獲物を探すように爛々と輝いていた。




