06 ダンジョン都市
諸事情でしばらく空いてしまいましたが、再開していきたいと思います。
久しぶりに書いたので変なところがあっても許してください。
こんにちは四津谷界人です。異世界に来て4ヶ月が経ちました。僕のお尻は限界突破しました。
現在界人は、アバンダンス王国東部にあるダンジョン都市『カライル』でこの世界に来て初めての苦痛を味わっていた。
王都からこの『カライル』までは街道で結ばれており、馬車で10日ほどの距離がある。いくら整備された街道を用いようとも長時間の慣れない馬車移動は誰であっても苦痛であろう。
「四津谷君大丈夫?」
お尻を抑えうずくまっている界人を心配したのは小夜であった。
「大丈夫だよ。少し休めば収まると思うから。それよりも有本さんの方は大丈夫なの?」
「うん。流石に全く痛くないわけじゃないけど、大丈夫よ。やっぱり勇者だからなのか他の人よりも丈夫なのかしら?」
「ズルいっ!」
この時ばかり界人は久々に勇者としてのスペックを羨んだ。
本来このダンジョン遠征は戦闘職の生徒たちの実践訓練とレベル上げを目的としたものである。もちろん強制ではないが、戦闘職の生徒たちは全員が参加していた。それは全員訓練を経て日に日に強くなり自信がついたからなのか自分の力を試したがっている者が多かったからだ。
そんな中で戦闘職ではない界人が何故この遠征に参加したのか、それは一ヶ月前に遡る。
ハミルトンから鍛冶師として基礎を学んでいた界人は驚異的な速度で成長していった。その技量は師であるハミルトンに追いつきそうな勢いで。
元々、趣味の一環としてプラモデルやフィギュアの自主製作をよくしていた界人は手先が器用であった。それがこの世界に来て鍛冶師になってからモノづくりの才が開花したようで、すでにハミルトンからは一人前と認められるほどに。
魔術の腕はまだ未熟だが、それでも簡易的な魔方式を組み合わせて魔方陣は書けるようになりスクロールの製作も出来るようになった。そうなると界人が次にやることは自作のナイフに魔方陣を刻むことであった。
ナイフに魔方陣を刻むこと自体容易ではなかったが、なんとか刻み試作品が出来たので魔術が発動するか試してみた。だが結果は全く、起動すらしなかった。それから魔方陣を刻む場所を変えたり、術式を変えたりナイフの材質を変えたりとトライ&エラーを繰り返した。
結果としてどれも発動はしなかったが、起動の前兆が見えたのはミスリル製のナイフで試した物のみ。しかしミスリル製ナイフは一回魔力を流すとボロボロと崩れてしまった。
そこからミスリルに可能性を見出した界人はハミルトンから安くミスリルを譲ってもらい(費用は王国政府持ち但し上限もある)、魔道具の製作研究に勤しんでいたのだが、とうとうミスリルを使い果たしてしまった。
ミスリルは貴重な金属のため、高額で市場にもあまり出回らないのでどうやって調達しようか悩んでいた時にダンジョン遠征の話とその行き先を聞きつけた界人はすぐさま同行を懇願し今に至るという経緯だった。
ダンジョン都市『カライル』は元々、鉱山として鉱物資源を採掘している者達が偶然ダンジョンと繋がってしまって発見された場所だった。そこから冒険者や商人が集まり、急速に都市へと発展していった経緯がある。
今でこそダンジョンとして有名だが、鉱床自体は掘りつくされた訳ではないのでダンジョン内からでも貴重なミスリルなどを採掘することが出来る。そして界人が[眼識]のスキルを使えばダンジョン内でもミスリルを容易に見つけられるので買うよりも自分で採ったほうがいいと思ったのだった。
「ダンジョンに潜るから少しはステータスも鍛えてたのに本職には敵わないか・・・」
いちおうダンジョンではモンスターとの遭遇に備えて、界人も生き残れるように筋トレなどをしてステータスを伸ばしていた。ただ、準備期間が短かった界人の現在のステータスは―――
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Name(名前):四津谷 界人 Gender(性別): 男 Age(年齢): 16
Job(職業): 鍛冶師
Level :1
STR(筋力):33
VIT(耐久):18
DEX(器用):92
AGI(敏捷):15
MP(魔力):46
Skill(技能):[鍛冶Lv2] [眼識Lv2] [言語理解]
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鍛冶師として鎚を振るっていたので、筋力と器用の数値が伸びており、魔術の訓練で魔力も枯渇寸前まで使っていたので多少伸びていた。それ以外はあまり伸びていないといった具合だ。
一方最初から界人よりもステータスが高かった小夜は戦闘訓練を欠かさず行ってきたことでダンジョンの7層目までは単独で行動できるほど成長していた。
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Name(名前):有本 小夜 Gender(性別): 女 Age(年齢):15
Job(職業):勇者
Level:1
STR(筋力):298
VIT(耐久):300
DEX(器用):362
AGI(敏捷):401
MP(魔力):268
Skill(技能):[全属性耐性Lv1] [物理耐性Lv2] [体力回復Lv2] [火魔法] [水魔法] [風魔法] [土魔法] [光魔法] [回復魔法] [魔力操作Lv1] [魔力回復Lv1] [魔力感知Lv1] [気配感知Lv2] [先読みLv1] [剛力Lv1] [縮地Lv1] [思考加速LV2] [並列思考Lv1] [言語理解]
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「大丈夫よ。四津谷君は私が守ってあげるから!」
「はい。お願いします・・・」
クラスメイトの女の子から守ってあげると言われ微妙な気持ちになるも自分より数倍数値が高く本格的な戦闘訓練をこなしてきた彼女の方が強いのだから大人しく守られることにした。
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界人達が宿泊するのは宿屋ではなくこの都市の行政を運営をする代官所であった。理由はダンジョン遠征に行く界人達に同行する騎士も含めると50人近くなってしまうため、一つの宿屋では収まりきらないからだ。代官所は広く作られており部屋数も多い、他領地の貴族がこの都市に来た時に寝泊まりするのにも使われるため大所帯の使用に適していた。
代官所の会議室で翌日の明朝にダンジョンに向けて出発する事とそれまでは各自部屋で休んだり都市を見て回ってもいいと説明を受けた後、一時解散となった。
今回のダンジョン遠征は界人達が初めてダンジョンに潜りモンスターと戦うことになるので体を慣らす意味でも深い階層までは潜らず、上層と言われる11層目までを2ヶ月掛けて攻略していく予定である。
ダンジョン上層はゴブリンなど弱いモンスターしかおらず、その出現数も下の階層に比べて少ないため安全に経験値を稼ぐには適した場所である。
それでも、ダンジョン内では何が起こるか分からないので生還率を上げるべく界人は街で情報や役立ちそうな道具を集めることにした。
「やっぱりダンジョンと言えば、冒険者ギルドだよなぁ」
界人が来ていたのはこの都市で代官所と同じぐらい目立つ建物であった。目立つといっても、代官所は広い庭に英国貴族のカントリーハウスのような美しい見た目だったのに対し、冒険者ギルドは石と木造が合わさった統一感の無い大きい建物だったため目立っていただけだった。
ギルドの中に入り、すぐ目の前が横長のカウンター受付で複数の窓口になっていたので空いている方に向かった。
「ようこそ冒険者ギルドへ!本日はどのようなご用件でしょうか?」
おぉー流石!冒険者ギルドの受付嬢だな。キレイどころばかりじゃん
界人は受付カウンターの向かいにいる受付嬢と思われる女性職員とさっきチラッと他の窓口で見た職員も皆一様に容姿が整っているという異世界のテンプレート的出来事に感動してしまっていた。
もちろん、冒険者ギルドも受付嬢という看板を利用して冒険者からの人気を集めようとわざとそういう人材を選んでいる。ギルドの収入源は依頼の仲介手数料やダンジョンで得た資源の売買など多岐にわたり、冒険者の割合は男性が多いので美人な受付嬢相手に皆、張り切っていい所を見せようとする。その結果、依頼の受注数が増え達成報告と共にギルドの信頼も上がっていきさらに依頼数が増える。最終的にギルドの収入もどんどん潤っていくという流れになっている。
「ダンジョンのミスリル鉱石が採掘出来る階層と11層までの出現するモンスターと地形の情報を下さい」
「かしこまりました。冒険者カードをお持ちでしょうか?」
「はい」
「少々お待ちください。ただいま集めてまいりますので」
界人は受付嬢に用件を伝え、カードをカウンターの上に置いた。
受付嬢は席を立ち、界人の前から奥に消えていった。
冒険者ギルドでは中級や上級の冒険者育成のため新人や初級冒険者に11層までのダンジョンに関する情報を無料で公開している。もちろん界人も遠征に着いて行くにあたって出発前に王国から事前に情報を貰ったり、集めたりしている。
だが、界人は情報とは常に変化し続けるものだと考えており現地の生の情報と知り得ている情報に齟齬がないか確認したいと思って冒険者ギルドに訪れていた。
少しして、受付嬢が戻って来ると書類の束と一冊の本のような物を持っていた。
「まず、冒険者カードをお返ししますね」
カードを受け取り受付嬢が続けて説明をする。
「こちらが11層までの簡易的な全体地図になります。最低限の情報は記入されてますが、ご自分で必要だと思ったことなどがありましたら書き加えてご自由にお使いください」
そう言って渡されたのはB4より少し大きいぐらいの11枚の紙だった。階層ごとの地図に地形やよく出現するモンスターの名前と採取される素材などが大雑把に記載されていた。
「そしてこちらは11層までのモンスターの弱点や買取り部位、採取出来る素材の取り扱い事項や買取り価格などをまとめた物となっております」
今度は教科書ぐらいの厚さの冊子を渡され、中をパラパラとめくって流し見する。
「今、お渡しした地図と冊子に使われている紙は通常の紙よりも丈夫なため破損しにくくダンジョン内でも気軽にお使いいただけます。但し、破損や紛失など如何なる理由であろうと二回目以降の発行には代金が発生致しますのでご注意ください」
界人はなるほどと思った。確かにこれだけの物を無料で渡すにしても無制限に渡していたら、冒険者ギルドは今頃大赤字だろう。
そうならないようにしっかりと制限をかけつつ、冒険者の成長を促すようにサポートする。そうすることで中級や上級の冒険者を増やしギルドの収入が増えるというわけだ。全くよく出来た仕組みだ。
「他に何かご質問はございますでしょうか?」
「そうですねぇ・・・11層までで最近何か変わったこととがなかったかぐらいですかね」
「変わったことでございますか。11層までに関しては特にございませんね。かなり下の方では、少々変わったことも報告されたりしていますが、よくあることですので気にされずとも良いと思いますよ」
受付嬢にそう言われ、大丈夫かと思ったが一応気になったので尋ねてみた。
「ちなみにそういう報告がされてる階層って何階層からなんですか?」
「えーっとですねぇ、45層以降から妙な音が聞こえてくるという報告が3件ほど来ていますね」
受付嬢は手元にあった書類の束から報告書を取り出し内容を読んでいた。
「モンスターの鳴き声と思われる音とリズミカルな何かを叩く音だそうです。もう少し同じような報告が増えるなら高ランクの冒険者に依頼し調査隊を派遣するとのことみたいですね」
「・・・とりあえず分かりました」
現時点では何も詳細が判明していないが、今回の遠征で潜ることになる階層には何も影響していないため多分大丈夫だと思った。もし何かが起こるなら下からであり、出口に近い上層ならすぐに脱出できるだろうと考えて。
その後、冒険者ギルドを出て役に立ちそうなスクロールや傷や疲労を癒すのに使うポーションや軟膏を売っている店に訪れ情報収集に明け暮れた。
因みにスクロールを扱っている店では火種を出す物と水を出す物以外に臭いと音が鳴るのを抑える効果の物があったのでそれぞれ試しに買ってみた。
準備万端なのかは分からないがとりあえず、今できることはこんなものだろう。後は、ギルドで貰った地図やモンスターの情報などを頭に入れて明日に備えよう




