栄光
真珠湾攻撃は確かに成功した。それも鮮やかに。当然艦内も大盛り上がりだ。
「戦艦に魚雷をお見舞いしてやった!」
「米帝なんか敵じゃねえ!!」
実際華々しい戦果だと思う。
そういえばあの零戦はどうなったのだろうか。私を助けた。
たしか識別番号はA1-116だったはずだ。
私は水兵に聞いてみた。
「A1-116は帰艦しておりますか」
水兵は黙り込む。私はその瞬間察する。みなまでいわなくてもわかるのだ。
「変なことを聞いてしまい申し訳ありませんでした」
晩御飯のときぼおっとしてると隊長が話しかけてくれた。
「どうしたんだ、浮かない顔して」
事の経緯をありのまま説明する。
「そうか、この先同じようなことが続いてもくよくよするのか?」
珍しく隊長の口調が荒い。恐らく同じことを何度も経験しているんだろう。
「私の部隊だけでも3機が未帰還だ。彼らの分も頑張らなきゃ彼らに示しがつかないだろう?」
「そうですね、、、そうです」
そう言うと隊長は何もいわずに食事を続けた。
その夜は見張り予定の水兵が急病で急遽竹内と見張りにつく。
「そういえば、11月の末に変な夢を見たんだよ」竹内が言う。
「真珠湾の夢だった。突然空には警報が鳴り響いて、日の丸の飛行機が飛んでる。そして海軍基地は壊滅。。。」
まさに予知夢であった。しかしよっぽどのことがないと信じない。それが竹内という男だ。
「お前のことだから他になんかあるんだろ??」
「ああ。それで破壊した艦艇、そして未帰還航空機の数も一致している。」
「実際のところどうなんだ??お前は信じてるのか?」
「まあ夢が本当だったことは確からしい。だがそのあと、ワンカットではあるが日本機動部隊が黒煙に包まれていた」
「ワンカットって、敵性語だぞ」
「うわあそれいまお前気にする?仮にもあんたの上官だぞ???」
何も言えなくなってしまった。しかし自分自身も真珠湾攻撃を何処かで見たことがある、そんな気がした。
その後空母蒼龍はウェーク島攻略の援助を行った。最も、私は先の戦いで消耗していたため他の航空兵が出撃、だがF4Fの奇襲に遭って艦攻3機を失った。
横須賀へ寄港すると、国民からの大歓声が待っていた。どうやらラジオで大々的に報道されていたらしい。
「ここからは20日間休息だ」上官がいい、その瞬間水兵、航空兵が騒ぐ。
遠洋航海後の休息というのは楽しいものがある。家族に会いに戻るのももちろんのこと、夜の街に繰り出して〇〇したり、、、、
しかし私は呼び出され、一旦は地上勤務となる。
「真珠湾攻撃、よくやってくれた」
「お役に立てて光栄です」
などと適当な社交辞令を交わしながら、横須賀鎮守府での地上勤務を命じられる。
久々に家を訪れようかと思いたち、電車に揺られながら東京駅まで行き、そこからは徒歩で実家へ向かう。
そういえばあの謎の紙はどこへ言ったっけ。見つかってないといいけど、、、。
道中では海軍の服を着ているということもあり、珍しがられた。このあたりは普段洋服をきたお金持ちしかいない場所だからだ。
土産を買おうと思いたち、風月堂のカステラを手に取る。私の母の大好物だ。昔一緒に買いに行っては店前の軒先で食べていた。
しばらく歩く。船とは違い少しずつ踏み心地が違って案外おもしろい。
”川内”の表札を見つける。どうやら家をリフォームしたらしい。
家に入る。玄関”だけ”は立派になったらしい。