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#16「おしゃぶり幼児退行」

16話です。

 今日は御手洗麗綺が、由人と防子に手伝いをしてほしいと自身の家に呼び出した。二人は麗綺の家に向かう。

 麗綺の家は、能野町の隣町「別等町(べっとうちょう)」にあり、能野町からバスを使って三十分の距離である。

 二人は助っ人に呼ばれた事を話しながらバスに乗って移動していた。


「何だろうね...麗綺ちゃんが手伝ってほしい事って」


「まさか...道端にあるウンコの回収の手伝い...とかじゃないだろうな?」


「そんな事でわざわざ私達を呼ばないでしょ。...多分。」


 そんな会話をしていたら、バス停に到着し、バス停に少し離れた所に麗綺が住んでいるマンションに到着した。そのマンションは町を一望できるような高層マンションであり、二人は驚愕した。防子も麗綺がマンションに住んでいるのは知らなかった。


「あの娘、こんなデカくて高いマンションに住んでたのか...」


「麗綺ちゃんの家は裕福なのは聞いてたけど、まさかマンションに住んでるとは思わなかったよ...」


 防子はマンションに着いた事を麗綺にLINEで伝えた。しばらくすると防子はマンションから出てきて、二人を出迎えた。


「二人共今日は来てくれてありがとうございます!では早速、私の部屋に案内しますね!」


 二人は相変わらず可愛くて美しいなと同時にこんな娘がウンコ集めてるんだよね...と思いつつ、部屋に案内される。

 マンションは三十階建てになっており、麗綺の部屋は真ん中の十五階の1519号室だ。部屋の中は見た目通りに広く、二人のアパートのおそらく三倍ぐらいは広いと思われる。案内された由人は今日呼び出した用件を聞いた。すると麗綺は部屋の隅に指を指した。指を指した先はベビーベッドが一台。そこには眠っている赤ん坊の姿があった。


「かわいい〜!どうしたのこの子!」


「親戚の子なんだ。新婚旅行になかなか行けなくて、やっと行けるようになったから一週間、私の家で預かる事になったんだ。」


「性別と名前と年齢は?」


「男の子で或輝(あるき)くんです。二歳です。」


「でも、何で他の親戚じゃなくて麗綺ちゃんに?ちゃんとしたベビーシッターに預けた方がいいと思うんだけど。」


「私、ベビーシッターになりたくて...だから或輝くんを預かる事に私から志願したんです。」


「なるほど...それで、俺達は何を?」


「私、まだ未熟だから、手伝って欲しくて...」


「そういう事なら手伝わせもらうよ。」


「ありがとうございます!じゃあ由人さんは買い物、防子ちゃんは私の手伝いをしてください!」


 由人は麗綺から買い物リストを貰い、外に出る。そして、家から持ってきた物と防子から借りた二台のアリツタブレットを擬人化させ、ポアスとバドルの姿に変形させる。


[PERSONNIFICATION]


「買い物を頼みたいんだけど、普通の服装に着替えてくれない?」


「かしこまりました。」

「おう!わかったぜ!」


 二人はカジュアルな服装に変化させ、買い物をするように命じ、三人は手分けしてそれぞれ買い物を開始した。

 防子は麗綺の手伝いをする。或輝の食事やトイレ等、一通りの事をやった。食事を作るのは防子が手伝ったが、それ以外は一人でこなしてみせた。


「すごい!これならベビーシッターも出来るんじゃない?」


「そうかな?でもそう言われるのは嬉しいな//」


(照れてる...初めて見たかも。)


 或輝を寝かしつけた後に麗綺は雑談は始める。


「そういえば、私従姉妹いるんだよね〜。」


「それって或輝くんとは、別の人?」


「そうそう、高三の女子高生なんだけど、その子ったらびっくりすると、ひぃん!って言うの。」


「へぇ〜なんか可愛いね。会ってみたいな。その子は仕事はどうするのかな?」


「家の仕事を継ぐみたいだよ。全然会ってないから、久しぶりに会ってみたいな〜。」


 **


 三人はエコバッグで両手が塞がるぐらいの買い物を済ませ、麗綺の元に戻ろうとしていた。


「いっぱい買い物したな!」


「赤ちゃんの世話のためには、これぐらい必要のでしょう。それにしてもビニール袋をこんな大量に買うなんて、それぐらい赤ちゃんのお世話は大変なのでしょうね。」


(多分、ウンコを回収するため何だろうな..)


 帰り道の途中、母親と赤ん坊の親子を公園で見かけた。しかし何か様子がおかしかった。その親子は禍々しい形をしたおしゃぶりのような物を咥えていた。赤ん坊は眠っているが、咥えているおしゃぶりは点滅していた。母親のおしゃぶりも同様に点滅しており、なんとその場で四つん這いになり、まるで赤ん坊になったかのようにハイハイ歩きをしていた。

 その時、人間サイズのおしゃぶりに手足がついているカテラスが現れる。


「この親子をこんなにしたのはお前か?」


「ご名答!俺様はパシファイヤーカテラス!赤子から生気を吸い取り、自らの力を蓄えてんだ!」


「じゃあ!母親はなぜ四つん這いになっている!」


「赤ん坊以外は幼児退行させて、俺様の操り人形となるのよぉ!おい!こいつを抑えろ!」


 四つん這いになっていた母親は、立ち上って由人の手足を抑えた。


「しまった!」


「よし!では、咥えやがれ!」


 由人は、パシファイヤーカテラスが飛ばしたおしゃぶりを咥えてしまい、幼児退行してしまった。


「バブ〜」


「由人様!」


「お前らも咥えろ!」


 擬人態の二人も咥えたが、二人には効かなかった。


「ほう...お前さん達は普通の人間ではないという事か...」


「仕方ありません...私達で止めますよ!バドル!」


「おう!防子がくるまでな!」


 **


 防子のアリツフォンから警告音が鳴り響く。


「何か鳴ってるよ?」


「えっ?あ、あ〜きっと由ちゃんからね。荷物を持つの手伝ってほしいのかな〜?」


「そっか〜頼みすぎちゃったかな?ごめんね」


「だ、大丈夫!大丈夫!じゃあ、手伝ってくるね!」


 防子は麗綺をごまかし現場に急行した。


 **


 現場の公園では、パシファイヤーカテラスは大勢の赤ん坊におしゃぶりを咥えさせ、生気を吸い取っていた。由人を含めたおしゃぶりを咥えた大人達は四つん這いになって、パシファイヤーカテラスの周りを囲っていた。その横には倒れているポアスとバドルの姿が。それを光景を目撃した防子は口を抑え、思わず全身が固まりそうになるが、物陰に隠れて、武着装を行う。

 アリツフォンにアリツチップを装填する。


[Defence IN]


待機音が流れ、掛け声を掛ける。


「武着装!」


[CERTIFICATION]


画面をタップすると、防子に光が纏い、アリツシーリアに武着装させた!

 シーリアは倒れている二人をタブレットに戻し、回収した。


「やはり、人間ではなかったか...」


「赤ちゃんの生気を吸って、町の人達を幼児退行させるなんて!」


「よし、大人共!この女をひっ捕えろ!」


 大人達は、操られシーリアに襲いかかる!


「そうはさせない!」


 シーリアはアリツフォンを取り出し、大量のアリツパシファイヤーを大人達に投げつけた。すると禍々しいおしゃぶりを破壊し、アリツパシファイヤーを咥えられた。シーリアはアリツフォンにアリツブレイクチップを装填する。


[Break Standby]


[Defence Break]


 ディフェンスブレイクを発動。すると赤ん坊達は生気を取り戻し、大人達の幼児退行は解け、元に戻った。


「皆さん逃げてください!」


 人々は公園から逃げていった。


(助かったよ防子。俺も加勢するよ!)


(由ちゃんは荷物を半分持って、麗綺ちゃんの家に行って。あんまり遅いと怪しまれるから。)


(えっ?でも...)


(私もすぐに行くから)


(...分かった)


 シーリアにそう言われると、由人は荷物を半分持ち、その場を後にした。


「俺様に勝てると思ってるのか!」


 パシファイヤーカテラスは巨大なラトルのような物でシーリアに襲いかかる。シーリアはまともに喰らってしまう。


「も〜痛いな!...ん?なんか光ってる?」


 シーリアのアリツフォンの画面の項目の一つが点滅している。点滅した項目である「アリツハジキ」をタップした。するとシーリアはアリツソードを構えながらじっとした姿勢になる。


「何だ?怖気付いたか?じゃあ、これで永遠にお寝んねしな!」


 ラトルを振り落とすと、シーリアは身を引きラトルを弾き上げる。パシファイヤーカテラスはその場で硬直してしまう。


「か、体が動かねぇ!?」


(体が勝手に動いて、カテラスを動けなくした!こんな事も出来るんだ!)


 シーリアはこの隙に相手の持っているラトルを逆袈裟斬りでラトルを吹っ飛ばし、その直後に袈裟斬りにした。パシファイヤーカテラスは地面に倒れ込み、シーリアは剣先をカテラスに向ける。


「ぼ、ボクちん、赤ちゃんが好きだから、ついイタズラしちゃっただけなんでちゅ〜!ごめんなちゃ〜い!」


「生まれたばかりの赤ちゃんから生気を吸い取ろうとした外道の言葉なんか、耳に入ってこない。」


 パシファイヤーカテラスの命乞いを聞く耳を持たず、シーリアはアリツソードにアリツブレイクチップを装填する。


[Break Standby]


[Defence Break]


 ディフェンスブレイクを発動し、倒れ込んだパシファイヤーカテラスに頭上から振り上げ、真向斬りにした。


「パシィィィィ!?」


 斬られたパシファイヤーカテラスは爆散した。


 **


 麗綺を元に帰り、無事に買い物をすませた二人。


「今日はありがとうございました!」


「どうってことないよ!ベビーシッターになれるように頑張ってね!麗綺ちゃん!」


「そういえば何故、ベビーシッターになろうと?」


「それは子供が好きなのもあるけど、ウンコが回収しやすくなるからです!」


(やっぱり、ウンコに結びつくんだ…)


「そうだ!お二人にお見せしますね!」


 麗綺は二人を自分の部屋に正体した。麗綺の部屋にはショーケースに囲まれており、ショーケースの中には大便が種類に分けられて飾られていた。


(一体この子の中の何が、ここまでさせるんだ…?)


(さすがの親友の私でも、引くかも…)


「これからも、もっと集められるように頑張りますね!」


 そんなの頑張らなくて良いよ…と心の底から思う二人であった。


次回も防子の新たな知り合いが登場します。

感想や意見を頂けたら嬉しいです。

次回は来週の日曜日更新です。

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