#12「二人の時間」
12話です。
武響由人は、町の噴水の前で待ち合わせをしていた。壁玉防子が所持金が貯まり由人の家を離れ、引越したため、必要な物を買い物するためである。引越したと言っても由人の隣の部屋なので、あまり変わらないだろう。前は防子の友人が同行したり、最近は戦いも多くなってきたので二人きりで出かける事は何年もなかった。
しばらくすると防子がやってくる。防子はいつもと違い、身なりを整えておめかしをしてやってきた。
「買い物に行くだけなのに、そんな格好する?」
「…いいでしょ、別に」
「そうなの?」
「分かってないな~由ちゃんは。」
由人に呆れながらも、防子は由人と共に目的地へと向かった。
二人は早速NOUYA MOLLへと向かう。まずは家具屋に行った。基本のテーブルや椅子を買ったりベッドは何故かダブルベッド、そしてインテリア等の家具を買った。
「何でダブルベッド?」
「…念のため?」
後は電気屋で掃除機や炊飯器にトーストにミキサー等の電化製品を買ったり、フードコートで昼食を食べたりした。
「昼食べたらどうすんの?」
「服とか見たいかな?」
「じゃあ服屋に行こうか。」
「そうだね。由ちゃんの服も選びたいし」
「えっ?」
昼食後は、服屋に行ってお互いの服を選んでいた。
「俺は、別に服いらないんだけど…」
「だめ!由ちゃんも見た目はいいんだから!おしゃれすればもっとカッコいいよ!」
そう言われて、由人は防子が選んだ自分の服を購入した。
その後はランジェリーショップに来ていた。
「どんなのがいいかな~?由ちゃん」
「俺、女性の下着なんて分からないんだけど…」
由人は周囲を気にしながらも、防子の下着を選んでいた。由人が選んだ下着を防子は次々に試着していった。防子の胸の膨らみを見て由人は思った。
(壁っていう字が苗字にあるけど、なくはないんだよね…。)
見つめてくる由人に防子は言った。
「…なんか変なこと考えてたよね?」
「いや、そんな事は…」
「失礼な事考えたと思うから、ここは由ちゃんが払ってね。」
「えぇ…まぁ、分かったよ。」
三着の防子の下着を購入した。由人の手持ちで。
その後は防子が映画を見たいと言い、ショッピングモール内の映画館「NOUYA CINEMA」にやってきた。映画の内容は特撮ヒーロー映画だった。男女で見る映画と言えば話題作や恋愛映画を普通なら見るだろう。このチョイスには由人も驚いていた。
何故ヒーロー映画を見たかったのかと聞いたら、自分達も日々戦っているので参考にしたかったのとテレビでも見ているので、せっかくだから映画でも見てみたかったらしい。由人は特撮ヒーローが好きで、毎週欠かさず見ていたが、防子は特撮ヒーローは見ていなかったので、まさか今日は特撮ヒーロー映画見るとは由人は思いもしていなかった。というより由人は防子がここまで真剣に日々の戦いに向き合っていた事に感動していた。
「見ていて思ったんだけど、私達って強化とかされるのかな?」
確かにヒーローと言えば強化されるのは定番だ。あるヒーローシリーズでは、本筋の話が終わった後にも強化される者もいる。中には二、三個強化を貰える者もいる。
しかし、アリツの超戦士は様々な道具や能力が追加され、幅広くその相手に対応する事を強みとしているので超戦士個人が強化されるかと言われると、そこは状況次第だろう。
映画を見たら、辺りはすっかり暗くなり、二人は夕食にしようとした。二人はファミレスに入り、夕食を食べた。食事をしている最中に由人は言った。
「帰る前に、せっかくだから寄りたい場所があるんだけどいい?」
「寄りたい場所?どこに?」
「それは着いてからのお楽しみだ。」
「由ちゃんがそんな提案できるなんて…成長したね
…」
食事を終え、ファミレスを出て、由人の寄りたい場所へと向かおうとしたその時、向こうから人々の悲鳴が聞こえた。
悲鳴がした場所に向かうと、そこには二体のカテラスがいた。
「俺はセミカテラス!俺の美声で人間を魅了してやるぜ!」
「僕はカメムシカテラス。僕はこの溢れ出る香りで人々を魅了するよ。」
二体はそれぞれの自分の鳴き声と放屁を自分の魅力と勘違いし、人々にそれを放っていた。(しかもカメムシカテラスは茶色でかなり臭い。)
当然人々にとっては騒音と悪臭でしかないので、阿鼻叫喚としていた。
その様子を見て防子は静かに怒った。そして、アリツフォンを出し、アリツノーズガードとアリツイヤーガードを出した。いわゆる鼻栓と耳栓だ。
防子はまずは由人に渡し、そして人々の所に向かって大量の鼻栓と耳栓を投げ、自動的に人々の鼻と耳に装着された。
「よし!カテラスを止め—」
「…武着装。」
防子はアリツシーリアに武着装し、瞬く間に二体のカテラスに近づく。
シーリアはアリツハンドを発動し、セミカテラスにラッシュを浴びせた。そして、アリツハンドのディフェンスブレイクを発動し、渾身のパンチを繰り出した。
「セミィィィィ!?」
あっという間にセミカテラスを倒した。
その様子を見てカメムシカテラスは怯んでしまう。
「な、何故そんなに怒りを露わにしている!?」
「当たり前でしょ!せっかく由ちゃんと二人きりの時間を楽しんでたのに、うるさい音と臭い匂いで町がめちゃくちゃになってるんだから!」
「それは僕たちのみりょ—」
「うるさい!せっかくの時間を台無しにしたんだから大人しく私に倒されなさい!」
シーリアはアリツソードを出し、カメムシカテラスに連続斬りを放つ。
「カム!?」
シーリアはアリツソードにアリツブレイクチップを装填した。
[Break Standby]
待機音が流れ、トリガーを引いた。
[Defence Break]
「ハイヤァァァァァァァァ!!」
アリツソードのディフェンスブレイクを発動し、カメムシカテラスを縦に真向斬りにした。
「カムゥゥゥゥゥ!?」
カメムシカテラスは爆散した。
武着装を解き、防子は由人の元へ戻った。
「さ、防子すごいな…一人で二体も倒すなんて」
「だって最近、由ちゃんと二人で出掛けられなくて、やっと二人で出掛けられると思ったら、カテラスが出てきて、しかも町をうるさくして臭くしてるんだよ!そりゃあ怒るに決まってるでしょ!」
「わ、分かった…お前の怒りはよく伝わった…。」
「もう、疲れたよ…」
「じゃあ、今日はやめとく?」
「ううん、せっかく由ちゃんの寄りたい場所だもん。私だって行きたいよ。」
二人は寄りたい場所へと向かう。向かった先は能見町の町を一望できる展望台だった。町は光に溢れて町全体が輝いているように見えた。防子はこの光景を見て恍惚していた。
「俺が知っているこの町の唯一のスポットだ。まぁ、結構有名だけどね。」
「私、嬉しいよ…こんなに綺麗な景色が見れるなんて…」
「せっかくだから、お前と一緒にこの光景を見たかったのさ。」
すると防子は由人に身体を近づけて強く抱きしめた。
「ちょ、そんな抱き付かなくても…」
「…この綺麗な光景を壊させないために、私達ももっと頑張らなくちゃいけないね…。」
「…あぁ、そうだね。」
由人も防子の事を抱きしめ、しばらく夜景を見た後、二人はアパートに帰った。自分の部屋に戻る前に防子は由人にお礼を言った。
「今日は私に付き合ってくれてありがとう!由ちゃん!」
「いやいや、防子の買い物に付き合う事なんて今に始まった事じゃないでしょ。」
「でも、最後にあんなに景色が綺麗な所に連れていってくれるなんて思わなかったよ!」
「それは、まぁ…」
「これからも一緒に頑張ろうね!」
そう言って防子は由人の頬にキスをして部屋に戻っていった。由人もキスの余韻にしばらく浸った後、自分の部屋へと戻っていった。
デートになってますかこれ?ちなみに僕はデートしたことないです。
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