勇者レオンハルト
昔々、この世界は縦に長い大陸と横に長い大陸の、2つの大陸に別れていました。
縦長の大陸は魔素が豊富にあり、左側の横長の大陸に比べて、魔法を使う文明が発達していたのですが、魔素の影響は、人だけでなく動物達にも及んでおり、通常の動物とは異なる生態へと変化したもの達も存在していました。
それらは魔素によって進化を遂げた動物『魔物』と、呼ばれていました。
対して、左側の大陸は横長で、魔素が右側に比べて薄い為、魔物達の驚異が少ないので、魔素に頼らない魔法体系や、技術、文明が発達していました。
右側の大陸では、魔素を含んだ資源が沢山採れるため、それらを左側の大陸に送り、魔物を狩るための武器や、開拓を進めるのに便利な道具を作り、右側の大陸にも送るなど、交流が盛んに行われていました。
そのように、2つの大陸は離れていても、交流を持ちとても仲の良い関係だったのですが、いつからか、左側の大陸に
「右側の大陸はこちらを侵略しようとしてる。」「魔物を手懐ける方法を見付けた。」
などと、不穏な噂が流れるようになっていました。
実際に、年々右側の大陸から送られてくる資源が減少し、左側の大陸でも魔物が発見されることが増えていたので、人々の間に不安も広がり、徐々に大陸間の交流も減っていきました。
そしてある年、まるで噂の内容を肯定するかのように、右側の大陸で、自らを『魔王』と呼ぶ存在が現れた。
その頃になると、武器を持たない人は、上陸する事すら難しいほど、右側の大陸へ向かう道のりには、魔物が蔓延るようになっていた。
もう、いつ魔王がそれらを引き連れて、侵略を始めてもおかしくないと、左側の大陸の人達は怯えていました。
しかし、そんな風に怯えているだけでは駄目だと、立ち上がり、隣の大陸へ乗り込む人達も現れ始めました。
後に勇者と呼ばれるようになる青年、レオンハルトもその中の1人でした。
彼は元々は、どこにでも居るような普通の男の子でしたが、ある日、家族を魔物に殺されたことで、怒り悲しみ、その事がきっかけか、武器が無くても魔物を倒せるほどの魔力を手に入れました。
そして、彼は家族の敵を取る為に、もと居た村から出て、魔王を討伐する事を決意しました。
レオンハルトは、最初は1人で旅を続けていたのだが、大怪我をたの負ったときに助けてくれた少女ミーティアと、彼女が居た国で最強と呼ばれていた騎士ガウェインと出会い、彼らと共に隣の大陸へ渡った。
彼らの一行は、旅の始まりの時こそ衝突する事も多く、思うような連携が取れずにいたが、共に様々な困難を乗り越えていくうちに、お互いに協力し合える絆の深いパーティーとして活躍し、隣の大陸へわたる頃には、大陸最強と呼ばれるようにまでなっていた。その強さは大陸を割るほどだったとも言われてるそうだ。
その後彼らは、隣の大陸で新しい環境に苦しめられながらも旅を続け、現地の人達とも交流を深めるうちに、その大陸でも魔王が恐れられていることを知りました。
途中で立ち寄った村の少年ノアルも、出会った当初は魔王を恐れる人々のうちの1人だったのですが、レオンハルト達のこれまでの道のりを聞き、共に魔王を討伐したいとパーティーに志願しました。
最初のうちこそ、ノアルが彼ら一行と共に行くことを皆反対していましたが、いくらおいていこうとしてもノアルが諦めないこと。彼自身が、魔素の豊富な世界で生きてきたため魔力の扱いに長けていたことなとが要因となり、最後にはレオンハルト達も折れて彼をパーティーに加えることになりました。
そうして、更に戦力が磐石となったレオンハルト一行は順調に大陸を横断して行き、ついに魔王城にたどり着きます。
魔王城に着いてからの戦闘はとても激しく、その様子は戦っている場所が、隣の大陸からでも確認出来るほどだったそうです。
まさしく天変地異とも言えるような戦いが終わると、魔王城のあった場所から、まるで地球が噴火したかのように、虹色の膨大な魔力が世界中に吹き出しました。
その後更に、同じ場所から一筋の光が空に昇っていき、天辺まで上がったかと思うと、その光は弾け飛びまるで隕石のようにあちらこちらに降り注ぎました。
レオンハルト達が居た大陸の人達は何が起きているのか全くわからず、しかも魔物達もこれまで以上に活発に活動するようになったので、きっと誰も魔王を止めることが出来なく、いよいよ侵略が始まったのだと、誰もが嘆き天に祈りを捧げ始めました。
そんなときでした。レオンハルト一行が国に帰ってきて、魔王を討伐したのだと報告をしたのは。
彼ら一行は魔王城へたどり着いてから、それまで以上の強さを持った魔物達に苦戦するも、そこまで築き上げてきた連携力で勝利を積み重ね、魔王と対峙した時も彼の強さや言葉に挫けそうになる味方をレオンハルトが鼓舞し、遂には全員の力を合わせて魔王を討伐したそうです。
その事を聞き人々は、レオンハルトをただ強いだけではなく、勇気あるものとして彼を『勇者』と呼び、彼ら一行を後世まで世界を救った者達だと称え続けました。
魔王討伐のニュースは瞬く間に世界中に広がり、数年振りに人々の間に笑顔が戻っていきます。
彼ら一行は国に戻ると、ガウェインとノアルは、技術や資源などを相互に協力し合える組織を立ち上げ、魔物を討伐するなどの活動を行い、お互いの大陸を平和に導いていきました。
ミーティアは、少しでも魔物達による被害を少なく出来るように、と、魔王討伐で得た経験を糧に世界中の人々を癒す旅に出ました。
そして、勇者レオンハルトは
「勇者として、やり残したことがある。」
と言い残し、魔王城があった場所へ向かった後に、行方不明となりました。しかし実は、行く先行く先で人々に感謝されるのが恥ずかしいので、こっそり姿を変えてミーティアと共に2人で世界中を旅しているのだとも言われています。