episode.0『マッシュ以外があなたしか居ないから』
「―― 好きです!付き合ってください!」
一体何を見ているのだろう。
桜も散り、緑の葉が生い茂る1本の木。その下に2人の男女がいた。
「これって盗み見してることになるのよね・・・」
申し訳ない気持ちになるけど、ここまできて結果を知らずに帰るのも何だかモヤモヤするし・・・
「後で勉強教えるから今だけは許してね、楢葉君・・・!」
風で揺れている木を見る。
ーーこれが俗に言う『リア充』が誕生する瞬間なのだろうか。
幼馴染が学校で1番の美少女と呼ばれている小娘に呼び出されていて、気になったから私は付いてきただけなのに。
いや私は別に幼馴染が好きって訳じゃないですよ?ほんとほんと。
ただ、あんなに世の中の愚痴をこぼしていた子の良さに気づいてくれたのが、あの『三森華恋』という美少女(小娘)に驚いただけ。
私に聞こえないぐらいの声量で喋ってる2人を見て、少し目線を落とした。
「・・・やっぱり帰りましょうか。」
私は読みかけの小説を開きその場を立ち去ろうとした。
「・・・何で」
足が止まる。
「何で俺なの?三森さんは成績優秀で容姿端麗、高ステータスだから俺以外の良い人なんていくらでもいるよ」
おい、せっかくのチャンスをなぜ無駄にしようとしているんだ。バカなのかしら?
「もう一度考え直した方が・・・」
「それは無理です!!」
ーーイヤな予感がする。それも相当イヤな予感。
「な、なぜですか?」
「それはーーーー。」
ーー開いたばかりの小説を閉じ、私は頭を抱えた。
「まさか2人ともバカだったとは思いもしなかったわ・・・」
そうして私こと『綾瀬彩美』は一歩、また一歩と校舎裏へと足を進めた。




