we resist
暴力シーン、残酷描写が含まれます。苦手な方はご高覧をお控えください。
「…あなた。名前は?」
私は彼女の名前を憶えておきたいと思った。こんな暖かい人はこの最悪な世界になってから初めてなのだ。
「…ゆかりだよ。」
「ゆかりって言うんだ。」
「あなたは…。リンでしょ?」
あの男がつけた名前をゆかりは本名だと思っているようだ。
「…ゆかりだけに教えるね。リンって本名じゃないの。私の本名は琴葉。」
「ことは?リンじゃないの?」
私は彼女に笑いかけ「どちらの名でもいいよ。」といった。
「…そういや、we resistってなに?」
ゆかりの話の途中でwe resistという言葉が出てきたので聞いてみた。
「え?聞いてない?ここのグループの名前だよ。」
このグループにも名前があったのか。
「ゆかりと話せてよかった。私はもう行くね。あなたは私の母によく似ていた。」
とお別れの言葉を言った。ゆかりの明るく人のことを思えるところが母とよく似ていたな。
「え?もういっちゃうの?」
ゆかりは寂しそうな顔をして見つめてくる。ごめんね。私はいかなくちゃいけない。私みたいな化け物がここにいれるはずもないのだから。そして私はゆかりに手を振り外の階段に向かって歩く。
ガタガタガタ!!!!
上から揺らしたような大きな音が響き渡り地下が揺れる。
「なに!?」
周りには「キャー!!!」という悲鳴が聞こえる。天井も落ちてくるほどだ。私は素早く瓦礫の破片をよけ助かったがほかのみんなはどうだろうか?心配だ。私は急いでさっきまでゆかりがいた場所に戻るとそこも天井が剥がれ、落ち、つぶれている人もいる。私は急いで走りそこにいる人たちを安全な場所に移した。
「だいじょうぶか!?」
あの「先生」と呼ばれている男も少し遅く。
「お前、ここのボスなんだろう?みんなを守らないとボス失格だ。もっとちゃんとしろよ。」
私が彼に少しきつめの言葉を浴びせる。
「すまない」
と男は頭を下げる。
「それより…」この事故を起こした犯人はなんだ?私は天井がはげた部分から外を見る。
「……えっ?」
見上げると、とうに10メートルは超える怪物と目が合った。今まで私が倒してきたやつらとは違う。明らかに今までのやつより強い。私の体全体に冷や汗が伝っていく。まともに戦えば殺される。どうする!?逃げる!?私は後ろを振り向いた。中には小さい子や親子と思われる人物もいた。けれどみんな逃げる様子がなく戦闘態勢に入っていたり、必死にみんなの役に立とうとしている人がほとんどだ。ここで逃げたら…。私は意を決して怪物に立ち向かうことにした。
もう心残りなんかないんだ。ここで死んだって…。怪物はニタリと気味の悪い笑みを浮かべると手でつぶそうとしてきた。すぐさまよける。そして攻撃…
「ガッ!?」
私は怪物の手によって数十メートル先まで弾き飛ばされていた。思いっきり壁にたたきつけられてとても痛い。早すぎる。やつの攻撃がまったく見えなかった!どう戦えばいい!?
「行け!前に進め!」
ほかの人があの怪物に向かっていく。
「ッダメ!」
私でも太刀打ちできなかったのだ彼らには無理だ。怪物が手を振り上げる。彼らを死なせてしまうのか!?いやだ!中にはゆかりもいるんだ!
「ッ届かない!!」
私が全力を出しても彼らの場所へすぐさま戻れそうにない。
ドガッ!!
怪物がみんなに向かってたたきつけた手は一人の人物にしか当たっていない。私の目は大きく見開かれる。彼らも大きく目を開いている。先生と呼ばれるあの男が一人で身を挺してかばっていた。
「グッ!!」
彼はその場で血を大量に吹き出し倒れる。怪物はおかしそうにゲラゲラ笑って彼を見つめている。まるで人間を玩具だと思っているように。気に頭に血がに上った。ほかの子たちはあの男の周りにいて「大丈夫ですか!?」など声をかけている。ここなら大丈夫そうだ。
「あー、もういいや。」
私が口を開いた。「これ」は反動が大きい。だが、今回はやらなきゃいけない。じゃないとみんなが守れないのだから。
「あんた。生きて帰れると思うなよ?私、本気出すから。」