第三章 大妖怪は尾行する③
裕太視点
「だからほら……文ちゃんってああ見えて妖怪の世界では大物じゃない? だから裕太も色々気を使うんじゃないかって心配して着いてきたんだって!」
「俺がそんな事で気後れするとでも?」
「いや……裕太がそんな事で気後れする玉じゃないって事はよ~く知ってるけどさぁ……」
そう言って、ミーコさんはブツブツ言いながら、足元に脱ぎ捨ててあった下着を手に取り足を通す。
「それに文ちゃんは気難しいところもあってさ……もし聞き出せなかったらあたしが出てって聞き出そうと……」
「割と簡単に教えてくれたけど?」
実際は過去の心の傷をほじくり回されたけど。
「それは……あくまでそんな一面も有るって話し! べ、別に何かやましいことがあって着いてきた訳じゃ……」
そうごにょごにょと尻すぼみになるミーコさんを後ろからぎゅっと抱き締めたい衝動に駆られるが、それはグッと我慢する。
正直な所、ミーコさんの魂胆は見え透いていていたので敢えて聞き出す必要もない。
要するに外崎が俺に手を出すんじゃないかと心配して着いてきていたのだ。
外崎が本気になれば、相手の意志なんて無視して自分の虜にすることが出来るだろうし、実際それで、以前ミーコさんは何度か寝取られたことがあるらしい。
そんなに心配なら初めから着いてくればいいだろうって話しなんだけど、それは自身のプライドが邪魔して出来なかったのだ。
何? そこまで分かってるならそんなにイジメる必要ないだろうって?
バカ言っちゃ行けない……好きな女子を心ならずもイジメてしまうのは世の男達の性と言うものではないか!
ミーコさんをイジメて喜ぶのはこの俺の特権だ……他の誰にも譲ってやるモノかぁぁぁ!
ミーコさんが困った顔でごにょごにょしたり、涙目で悔しがったりする姿を見るのが、今のこの俺の至上の喜びなのだったらなのだ!
今みたいに、こっちに背を向け膝を抱えて座り込み、猫耳をしょんぼり垂らして尻尾をちょこちょこ動かす様はとても、唯我独尊とっても迷惑大妖怪と同一人物とは思えないだろ?
この辺のギャップが俺の琴線にピピピと触れるんだけど、普段が普段だけに他の人間からの共感は未だかつて得られたことはない。
それは、ミーコさんの内面を理解出来る人間が少ないからだろう。
だから……こんな感覚はこの俺だけに許された誰にも侵すことの出来ない特権なのだぁぁぁ! へへ~んだ!
「も~しかして、俺が外崎さんとどうにかなっちゃうとでも思ったのかなぁ~」
この話題だけでご飯一杯いけそうだったけどまぁんなわけにもいかないし、そろそろ話を進めようとそう喋り掛けると、ミーコさんはビクンと肩を震わし、両膝に顔をうずめて黙り込む。
俺は、そんなミーコさんをつんつんとつつきながら、更に『口撃』を重ねていく。
「そういや文車妖妃っていえば、恋心を巧みに操る妖術が得意だったもんね~」
「……」
「それで俺がコロッと彼女に傾いちゃったらどうしよう……な~んてミーコさんは思ったわけだ」
「……」
「そしてそれを阻止しようと、俺の後をこっそりつけてきたって訳だね?」
「……」
「うんうん。つまりミーコさんはそれだけ俺にぞっこんって訳だ?」
「……」
「この間、どっちが御主人様かって話になったけど、これってどう考えても俺の方がご主人様って話になるんじゃない?」
「……」
「つまりは……」
そこで俺は言葉を切って、ミーコさんの頭をぽんぽんと叩く。
怒りのゲージが貯まっていくのが目に見えるようだ。
「つまりは意地っ張りなミーコさんは、そんな自分の心情を一種の照れ隠しででででで!」
「分かってんなら口に出して余計なこと言ってんじゃないわよぉぉぉ! この口かしら?! この口がんなこと言うのかしらぁぁぁ!!」
ミーコさんは真っ赤な顔で上半身だけ振り返り、俺の口に親指を突っ込んで口角左右引っ張りながら、俺の発言を無理矢理腕力に物をいわせて遮断する。
しかし俺もそう簡単に負けるわけにはいかない!
「ほうひょふひふぁふっひはいひょ!(暴力には屈しないぞ!)」
「ひゃいん!」
俺は、下でふりふりと左右に揺れている、二叉に分かれた尻尾の内の一本をギュッと握り締める。
ミーコさんの弱点は、隅から隅まで知り尽くしているのだ!
案の定、俺の口角を広げる力が少し弱まり、ミーコさんは何かに耐えるように下唇を噛んで目を瞑る。
更にそのまま二叉の根元を強めに擦り上げると……
「んぎ……」
そこから得られる感覚に、ミーコさんは歯を食いしばって何とか耐える。
しかし目尻たまった涙と全身で上気しているその様を見れば、陥落まで後僅かであるのは一目瞭然!
このまま俺主導で二回戦突入だぁぁぁ!
……ってなわけでそのまま二回戦に突入した俺達だったのだが、その陰で、布団の下敷きになっていた携帯が鳴り続けていたことに迂闊にも気付く事が出来なかったのだった。
「それで……私が依頼通りに犯人の居場所の特定を果たして、1秒でも早く知らせてあげようと躍起になっている時に、あなた方は2人で楽しんだ揚げ句にすっかりその事を忘れてしまっていた……と」
「すいやせん」
「あたしは別に楽しんでないもん……」
「しかも1回だけでは飽きたらず、2回もやってしまった……と」
「その通りであります。重ね重ねすいやせん」
「だからあたしの所為じゃないって。ぜ~んぶ裕太の所為だもん……」
「水無月さん……貴方は私に言いましたわよね? この犯人は妹さんを死に至らしめた憎き仇で、何としてでも自らの手で仕留めたい……と」
「一字一句その通りであるとは言いませんが、概ねそう言ったと思うであります」
「シスコンシスコ~ン」
「にもかかわらず、妹さんの無念も忘れて、目の前のペチャパイにうつつを抜かし、危うく折角のチャンスを棒に振ってしまうところだった……と」
「わたくし実は微乳好きでして……発育不良のオパーイに目がくらみ、我慢できずについ……うう……すいやせん」
「……喧嘩売ってる?」
「なる程……胸がない女性に性的興奮を覚えると言うことは、貴方はロリコンであると言うわけですね?」
「それは誤解であります! 微乳好きとロリコンは同じではないではないであります! わたくしは大人の女性が自分の貧乳に悩む姿が好きなのであります!」
「……殺意が芽生えるわ……」
「大人? ミーコははっきり言って子供よ?」
「あ、そこはそれ。年齢的には大人どころか……むご……」
「っ!! 文ちゃんの前で歳の話ししちゃダメ!!」
「……水無月『クン』?」
「はははははひ!」
「……『クン』?」
「なる程……貴方がかつて、私と『恋人関係』だったにも関わらず、今の私に執着を見せない理由が分かりました。貧乳好きではしょうがありませんね。納得納得」
「っ!! 恋人?!」
「ちょちょちょちょちょっとそのお話はこの場ではごかんべんをぅおぅおぅおぅ!」
「裕太! 恋人ってどういうことよぉぉぉぉぉ!!」
「追って沙汰を申しつけますので別室で待機なさい!」
「ははぁぁぁ!」
「ちょっと! 恋人ってなによ! 逃げるな裕太! ちゃんと説明しろぉぉぉぉぉ!!」
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