第三章 大妖怪は喧嘩する①
誤字報告感謝です(*´▽`*)ノ
新年明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願い致しますm(_ _)m
ミーコ視点
ブゥンという機械音と共に白い光があたりを包み、視界がその光で0になる。
そして、身体が軽い浮遊感に包まれると、あたし達は一瞬にして他の場所へと移動していた。
此処は世界に無数に存在する異空間の一つ。
その異空間に扉をつけて、うちらの組織の簡易訓練場にしたのがこの場所だ。
アストールと激闘を演じたあの空間を探索したときに一緒に見つけた異空間で、男爵が若手の育成と、近所迷惑を顧みない一部の人間のストレス解消の場として訓練場に仕立てたって訳。
いやホント、近所迷惑を顧みず、所かまわず術をぶっ放す輩がいるのだよ。困ったもんだ。
……あーと……ま、まぁその話は置いといて、あたしと裕太の2人は、此処に到着すると直ぐお互いに飛び退いて距離を置いた。
「さてと……どう決着を付けようってのかな?」
裕太がそう、小憎らしく肩をすくめながら口を開いた。
「決まってるでしょ……シスコンなんか力でねじ伏せてあげるわ!」
「つーか、ファザコン大妖怪さんは、それ以外出来ないでしょ」
「……コロス」
こうして第173次大戦の幕が切って落とされたのであった。
ふん……シスコンなんかに負けてたまるもんですかい!
「うう……ウニャァァァァァ!!」
あたしがそう気合いを入れると、妖気が私を中心に渦を巻く。
大気が震え、地面に亀裂が入りる様は、まるで地獄の底からやってくる悪鬼の登場シーンを彷彿とさせるだろう。
様子見なんてセコいことを言うつもりはない……のっけから全力投球だ!
大人気ないだなんて言うこと無かれ!
相手はあの水無月裕太なのだ。
相手を敗北へと誘うその手法の悪辣非道さは、他の追随を許さない。
相手の思考の先を読み、行く手に穴を掘って、後ろから笑顔で突き落とすような男なのだ!
その上シスコン! 人類の為あたしの為に今この場で奴の根性叩き直してくれる!
「我が身に宿りし暗き闇の炎の力……その身で特と味わいなさい!」
「怨念がおんね~ん」
「じゃかぁしいわ!」
あたしの妖気に当てられ、集い渦巻く怨念が、あたしの細胞一つ一つと交わり暗闇の炎へと変化する。
「 先に言い掛かり付けてきたのはミーコさんだったと思うけど? …… リロード……『封魔の曼荼羅』!」
あたしの拳から解き放たれた呪火が裕太に向かって伸びていくが、しかしそれは、裕太が発動させた結界陣に防がれる。
今のは裕太が新たに作り出した術……と言うか術式で、この術式の開発で、またとんでも無い事をやってのけたのだこの野郎は!
そもそも術完成に至る経緯からとんでもなかった。
二人で格闘ゲームをしていて、ポツリと
「このゲームみたいに術式をデータ化したらいちいち符を準備しなくても良いから楽じゃね?」
とか呟いたのがきっかけだ。
要するに、符呪魔術の電子化だ。
完成したらそれこそこの業界がひっくり返りそうな大革新なんだけど、そこにあるのは術への探究心とか、世の中の為とか、そんな高尚な理由は一切存在せず、ただただ自分が楽したいって想いと自己満足の為だった。
そこから三日三晩徹夜して、おもしろ半分でプログラムを組み上げると、約一ヶ月の試行錯誤の果てに術の完成にこぎ着けたって訳だ。
問題なのは、この完成までの道のりが決して計算ずくの物ではなく、その大部分がノリとラッキーで埋め尽くされてるって事だ。
実際、多くの障害が裕太の前には立ちはだかっていた筈なんだけど、賽を振って進む道を決めるが如く、裕太が適当に「これはこっち……これはこっち……」と決めた先の悉くが成功の礎となり、どうしても行き詰まった時には、あたしを始め仲間達の何気ない一言にビビビと直感が刺激され、結局は正解へと導かれて行ったのだった。
ね? とんでもないでしょ?
おもしろ半分の興味本位で術を開発し、ノリとラッキーで完成させる奴など、世界広しといえども裕太ぐらいのもんだろう。
この話しには更に後日談がある。
元々、なんちゃって符呪士として(師と仰ぐような人物もいないのに独学で符呪魔術を使えるようになってる辺り)この業界で知れ渡っている裕太が、またなにやら始めたって情報が業界に広まり、その成功を固唾を呑んで見守っていた協会(相互会みたいなもん)のお偉方の能力者達が、術の完成に驚喜して裕太の下にやってきたら、完成した術は完全なオーダーメイドで裕太以外には扱えないって事が判明したのだ。
術の発動を制限するセキュリティ込みのプログラムをその場のノリで組み上げてったもんだから、本人にもセキュリティは解除できないし、ほぼラッキーで埋め尽くされたその完成までの道筋の性質上、もう一度同じ物を組み直す事も事実上不可能らしい。
因みに術の発動自体は、裕太の生態パルスとやらがキーになっているらしいが、機械に疎いあたしに細かいとこまで分かろうはずもない。
コピーを取れるから裕太にとっては便利なことこの上ない術式なのだが、他人とってはこのプログラムは単なる英数字の羅列であるにすぎない。
落胆に暮れる能力者達を尻目に、裕太は新たな能力を手に入れたって訳だ。
しかも裕太は更に1つ、他の能力者達を、敵に回しかねない事をやってのけている。
裕太は術を完成させると、今まで使っていた符呪魔術をあっさりと捨て去ってしまったのだ。
しかも理由が、本人曰く……
「符呪魔術は符を作るの面倒くさいんだよ。これなら一回デジタル化しちゃえば、バックアップさえ残ってればいくらでも複製作れるしさー」
とかなんとか……とにかく軽い。合コンに精を出す手下L並に尻軽だ。
こっちとしては、にこやかにそう言われたら「あーそうですか」と返す他、言いようがないわけよ。
符呪魔術に限らず、術ってのはもう少し真剣に死に物狂いで学ばなくちゃなんないじゃないかと、人間じゃない身のあたしからしても思わんでもないんだけど、裕太からしたら術はただ自分が生きる為の道具でしかないっことなのだ。
「リロード……『身代わり人形L』」
裕太の周囲がピリッと微かに帯電したかと想うと、次の瞬間、その場に一瞬にして魔方陣が描き出される。
次いでその魔方陣の中央がモコモコと動き出し、光が一つの物体を形作る。
これは裕太がデジタル化した式神だ。
正直どんな理屈そうなるのかさっぱり分かんないけど、さっき話した裕太の新しい術で、通常呪符から作り出す式神をプログラム化し、実体化させたのがこの式神だ。
電子世界で数字の羅列でしかなかったプログラムを、どうやって実体化させたのか……まぁこの辺が、裕太の新術の肝ってことだろう。
でもさ……
「でも何故に手下L!」
「わははははは! これならどんな扱いされても俺の心が痛まない!」
「ごもっとも」
裕太の言葉に納得しながら、あたしは一気に間合いを詰める。
「行け! 身代わり人形L!」
「ペチャパイニハマケナイッス~」
「にゃにおぉぉぉ!」
本物じゃないって分かっててもこの顔で言われるとめっちゃ腹立つぅぅぅ!
「地獄に落ちよ手下L!」
「ウベシッス~」
呪火に包まれたあたしの拳をもろに受け、手下L人形は紙切れのように空に舞い上がる。
「あっ! 堤下がぁぁぁ! やっぱり堤下じゃ性能に問題あるのか?!」
微妙に酷い事を口走りながら、裕太はすかさず次の術を発動させる。
「なら数で勝負だ! 行け!」
「「「「「ペチャパイニハマケナイッス~」」」」」
「うぎゃ! 量産型手下L! きもっ!」
5人の手下Lが、私を取り囲みながら襲い掛かって来る。
その姿は、さながら美女に群がるオタク共のよう。
さっきと同じ失礼な言葉にも、怒りが湧き起こるよりもまず先に鳥肌が立つ。
「「「「「ペチャパイニハマケナイッス~」」」」」
「きゃー! 変態ぃぃぃ!」
あたしはたまらず拳を振るう。
「来るなぁぁぁ!」「ウベシッス~」
「寄るなぁぁぁ!」「ウバシッス~」
「手下Lの分際で!」「ウビャシッス~」
「貴様なんざ独り寂しく……」「ウベッシィッス~」
「巨乳グラビアのケツでも眺めてやがれぇぇぇ!」「ウィッッッスゥゥゥ~」
あたしの華麗な連続攻撃に、次々と宙を舞う手下L……人形。
「あらやだ。意外に楽しいわ」
手下L人形の見事な舞い散りっぷりにあたしの気分も幾分晴れる……ってヤバ! 裕太見失った!
あたしが慌てて裕太の気配を探り始めると
「リロード……『なんちゃって重力流』」
背後から、そう裕太の声が聞こえてきたのだった。
裕太……あんたのネーミングセンス酷いよ……
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