間幕 月下の白刃⑪
樹里視点の短い話なので、今日はもう一話アップします。
何故……何故なの?!
栄と刃を交えているはずの兄さんの視線が、幾度となくあたしの視線とぶつかっては離れていく……。
ぶつかる視線には、あの狂気じみた光はなく、何故か寂寥と哀愁を感じさせるの……何故?!
胸の奥がザワザワとざわめく……。
本当にこのまま栄に全てを押し付けてしまっていいの? と、心の中の自分にわたしはそっと囁いてみる……。
栄の言っていた事も分かる……栄がわたしを心配してくれた事も嬉しい……。
でも……でも、本当にこのまま栄に全てを委ねてしまっていいの?!
本当に、これが正しい選択なの?
答えて! わたしの中のわたし!!
……兄さんと視線がぶつかるたびに、わたしを襲うこの焦燥感……兄さん……兄さんはわたしに何を言いたいの? そんな瞳でわたしを見詰めて一体何を言いたいの?!
あたしは何を忘れてしまっているの?
あたしは……あたしは!!
「あ……」
自問自答していたその時、兄さんの大鎌が栄の右肩を鋭く切り裂いた!
「栄ぃぃぃぃぃ!!」
わたしが栄に全てを委ねてしまったから! 少なくとも、一緒に戦うって選択肢はあったじゃないの、わたし!!
……しかし、わたしの心配は杞憂に終わる。
栄は倒れる事もなく続けざまに術を繰り出し始めたのだ。
良かった……。
栄の放った一撃は、兄さんの身体を貫き……そして……その瞬間、わたしと兄さんの視線は再びぶつかり合う……。
その時、兄さんの瞳から漏れた感情は……愛惜の念……。
「あ……あっ!」
その瞬間……わたしは唐突に、この場に至るまでの全ての事を理解したのだった……。
今日はもう一話アップアップします。




