間幕 月下の白刃⑩
昨日、①部分をプロローグに直したので番号がズレてますのでお気を付け下さい。
ブクマ&☆ポッチン宜しくです。
「刻と刻、空と空を繋ぐ風の乙女達……我と結びし契約を礎に、自由を尊ぶ汝が僕を我が元へ……精霊領域!」
呪文と共に俺を中心に澄んだ鐘の音が鳴り響き、俺を中心として辺りに波紋が広がったッス。
キィィィン
その途端、急激に俺の周りの気圧が下がり、空から風を纏った一匹の獣が降りて来たッス。
「クッ!!」
それを何とか避ける俺と樹里。
ズガァァァン
半瞬前まで俺達がいたその場所には浅いクレーターが穿たれ、その中心では樹里の前世上での兄である『風の風陀羅』が、その尾を巨大な大鎌に変化させて臨戦態勢を敷いていたッス。
「樹里は離れるッス!」
パンッ
「震撃!」
樹里に注意を促しつつ、俺はパンッと手を叩きその音を依り代にして風の精霊に働きかけ術を放ったッス。
ザシュザシュザシュッ
「ふん……」
大気中に忍ばせていた霊気の糸……霊糸が激しく振動しながら、風陀羅に襲いかかったッスが、それは難なく避けられてしまったッス。
「先ずはお前か、手下Aとやら……」
「だから! て・い・し・た・え・い!」
そう反論しながら、俺は続いて霊糸の塊をヨーヨーのように風陀羅に向かって放ったッス。
塊で風陀羅を追い掛け狙うと共に、俺はダンッと足を踏み出し音を鳴らしたッス。
俺の周囲の空気が乱れ、遂には槍状に変化して風陀羅に襲い掛かったッス。
「っ!!」
驚きの表情を浮かべる風陀羅……ワンタッチで術を繰り出した事に驚いたッスかね?
俺は、あのアストールとの戦いで、高レベルの相手と戦う上では、ほんの僅かな術の初動の差が勝負を分けると学んだッス。特に一対一で、長々と呪文の詠唱してるなんて論外ッス!
そこで俺が考えた戦法が『精霊領域』と『霊糸』ッス。
予め精霊が活動し易い領域をこの場に作り出し、音や振動を依り代に術を起動させるって寸法ッス。これが俺の霊気を編んで作った霊糸と抜群の相性だったんス。
空気は波打ち、次々と空気の槍が放たれ、同時に霊糸の塊が絶えず風陀羅を追い詰めていくッス。
「チッ……」
風陀羅はそれを見て避けるのを諦め、その大鎌で迎え撃ったッス。
振るわれる大鎌が、風の槍を薙ぎ払い、霊糸の塊を受け止めたッス。
「下らぬ」
次の瞬間、風陀羅を中心に激しい竜巻が生み出され、土煙を撒き散らしながら上空に舞い上がっていったッス。
風が治まった後には風陀羅の姿が見当たらず、その場はもぬけの殻になっていたッス。
マズいッス……激しい風の流動の影響で、風から伝わる気配の分析が上手くできないッス!
目を瞑り、風陀羅の妖気を読むことに全精力を傾ける俺……。
ピキッ
小さな亀裂音と共に地面から飛び出してきたのは、細い幾本かの鋭い刃……恐らくは爪を変化させたその風陀羅の刃が、下弦を描いて俺に襲いかかってきたッス。
「クッ!」
俺は、横に飛び退きながらナイフを振るって、その刃をなんとか避けようとしたッスが、完全には避けきれず、その内の一本が俺の右の腕の付け根を貫いたッス。
「く……痛…い……ッスよぉぉぉぉぉ!」
ビギギギギギィィィィィン
「ガァァァァァ!」
俺は叫び声を上げながら、左手のナイフを右肩を貫いてる風陀羅の刃に軽く当て、振動を刃に伝わらせて風陀羅の体内に送りこんだのだったッス!
そして……この今の一撃が風陀羅の居場所をこの俺に指し示してくれたッス。
俺は更にナイフを振るって風陀羅の刃を叩き割ると、刺さった破片を引き抜いて、すかさず風陀羅に向かって新たな術を組み上げたッス。
「遠隔自動迎撃システム!」
俺が生まれる前から人気の某ロボットアニメをヒントに俺が編み出したこの術を喰らうッス!
霊糸の弾丸が無数に生まれ、弾丸は複雑に動き回りながら奴に時間差で襲い掛かるッス!
「……」
ヒュン
なっ?! 全部躱され刃で切断されたッス!
「風に身を晒せば、貴様の思考が反映された霊気の塊など躱すのは容易い……」
あ……風で読まれたっぽい……風妖相手に戦術ミスッスぅぅぅぅぅ!!
そして驚愕からくる一瞬の間……戦闘中に何やってるッスか俺!!
慌てて精神を建て直したッスけど、一歩遅かったッス。
「風刃乱舞……」
奴を中心とした竜巻が巻き起こり、更に樹里が使っていた小チャクラムが生み出され奴の周りを取り囲んだッス。次いでその刃が俺に向かって襲い掛かって来たッス。
無数の小チャクラムが四方八方から同時に向かってくるッス……その上、竜巻に巻き上げられた埃のせいで視界は最悪で、またもや風陀羅の姿も見失ってしまったッス。
「これは……避けられないッスね……」
ダメージが避けられない事を悟った俺は、風壁と霊糸を張り巡らせてそれに備えたッス。
更に……
「聖霊よ……我を汝の御霊で満たし給え……」
身体に聖霊の力を取込み、一時的に傷の回復を断続的に行える術を起動したッス。
激しい轟音と共に襲いかかってくる竜巻と、その竜巻の陰から死角を突いて飛んで来る小チャクラム。俺はその二つを敢えて動かず、この場で受けるべく全身に霊気を漲らせたッス。
「っ!! クッ……ガッ! いでっ!」
襲い来る竜巻と小チャクラムを風壁と霊糸で上手く逸してるつもりッスが、全てを躱し切れる筈もなく身体に幾つもの切り傷が付けられ、思わず苦痛のうめき声が吐いて出るッス。でもそんなことには構ってる余裕もなく、俺は次に来るはずの風陀羅の襲撃に備えたッス。
(クッ……まだッスか?!)
続けざまに竜巻と小チャクラムが俺の身体を襲い、全身を激しい痛みが貫いていくッス……。風壁と霊糸のおかげで傷は浅く、その傷もすぐさま回復していくっすが、身体が切り裂かれた時の痛みまでは消し去ってはくれないッス。
このままじゃ、集中力が途切れて隙が出来てしまうッス!
(だぁぁぁぁぁ!! 早く来るッスよぉぉぉぉぉ!!)
ヒュン
俺の心の叫びが届いたのか、風と刃の攻撃が途切れ、背後から風を切って斬撃音が!
「こっちッスか!!」
ガキン
振り向き様、両手に持った2本のナイフをクルッと回転させながら逆手に持ち変え、面前で交差させてかさ掛けに振り降ろされてきた大鎌を受け止めたッスが……
「グガッ……」
俺は、風陀羅の大鎌を受け止めきれず、その刃は俺の鎖骨を砕いて肩に食い込んでいるッス。
「栄ぃぃぃぃぃ!!」
響き渡る樹里の絶叫……でも、今の俺にはそれに応えている余裕は無いッス!
「召雷!」
俺がそう唱えると、半金属体と化した霊糸の弾丸と激しい風の奔流が反応しあい、俺達の周りを取り囲むように雷が走っるッス。
風陀羅はそれを見て、咄嗟に飛び退いたッスが……それが俺の狙いっすよ!
俺は風陀羅が着地する寸前、爪先でトンッと軽く地面を鳴らしたッス!
「っ!!」
着地点に振動が走って地面が突如として崩れ、その崩れた足場に体勢を崩す風陀羅……そしてその時には既に、俺が呼び出した雷が空中で集まり、一体の巨大な雷球を作り上げていたのだったッス!
「巨人の聖鎚!!」
そして次の瞬間、雷球から一直線伸びていった黄金の雷球が、風陀羅の身体を射抜いたのだったッス……。
戦闘シーンが多く、前述の通り堤下の能力が変わったので辻褄合わせが大変でした。
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