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間幕 月下の白刃⑨

演出上、分かりにくいところがあるかもしれませんが、予めご了承下さいませませ。


当方としてはブクマ&☆ポッチンして頂くと泣いて喜び崇めます。

一言感想も感謝感激雨霰です。


 風陀羅の大鎌が風を薙いで樹里に襲い掛かる。


 樹里はその刃の悉くを避けてはいるものの、決して余裕をもって……というわけではない。むしろ、避けることに成功してしるのは、風陀羅が手加減しているからであろう。


「……どうした、樹……よもや能力ちからの使い方を忘れたわけではあるまいな?」


「……」


 風陀羅の挑発に、沈黙をもって応える樹里。


 樹里は能力ちからを使えない訳ではない。恐らく能力ちからを振るうことに躊躇ためらいが有るのであろう。


 過去の自分と今の自分……その狭間で樹里の幼い心は激しく揺らいでるに違いない。


「未だこちら側(・・・・)に来ることに躊躇ためらいが有るのか? 不憫な奴だ」


 そう言いながら放つ風陀羅の攻撃は、どんどん鋭さを増していき、樹里の身体のあちこちに、浅い裂傷を作り出していく。


「何故そちら側(・・・・)とどまろうとする? 我々の本質が何処にあるのかは、前の戦いで明らかになったではないか」


「……だまれ……」


「所詮、我々は()を背負い続けなければ存在する意味すらないのだよ」


「……だまれ」


「我々は……化け物なのだから」



ヒュン



 風陀羅から決定的な一撃が、樹里の元へと放たれる。


「だまれぇぇぇぇぇ!」



ガキン



「……」


「それでいい……俺とお前はこうなる運命なのだ」


 樹里の被っていたキャップ帽がハラリと落ち、ポニーテールに結ばれていた髪の毛が二股に別れて鎌の形を成し、目の前でクロスして風陀羅の一撃を見事に防いで見せていた。


 その様子に、狂気をはらんだ笑みを浮かべて、風陀羅は新たな刃をその身から生み出して、そう言い放つ。


「違う……」


「何が違うというのだ? 我々は、この刃を背負う限り、戦い続ける運命に……」


「違う!」


「……何故そう拒む。一度はお前も理解したではないか」


「違う! そうじゃない! これは……これは運命なんかじゃない! これは……あたしの意志! 人として転生したのも! 能力ちからを使う事も! 兄さんと戦うと決めた事も! この場に立っている事も! ……全ては…全てはあたしの意志よ!!」


 樹里はそう叫ぶと、手のひらを上に向けて風を起こし、その中からチャクラム状の刃を産みだし投げ付けた。


 刃は風切音を響かせて、風陀羅に向かって一直線に突き進む。


「どちらでも構わん。戦うことが我が本望」


 風陀羅はそう言い放つと、飛び上がってその刃を避ける。



ガガッ



「っ!! チッ……」



カキン



 追尾してくるその刃を、風陀羅は自らの刃で弾いて防ぐ。


 すると、樹里の刃は自分の意志を持っているかのように彼女の元へと戻り、惑星の周りを回る衛生の様にグルグルと回り始める。


「里の生き残りとして……里の総てを背負うものとして、汝が真意をここに問う! 何故なにゆえ家族を裏切り……一族を裏切り……里を裏切り……何故なにゆえ狂気に走ったか!! 何故なにゆえ……何故なぜわたしを裏切ったの?! 兄さん!!」


 決意に満ちた声と表情が次第に涙で崩れ始め、最後は絶叫となってその場に落ちる。


「我が真意は以前あの場で語った通り。それ以上の事をこの場で語るつもりはない」


「何故よ……何故なのよ!!」


 樹里は再び刃を風陀羅の元へと解き放つ。


「ふん!」



ガキィィィン



 風陀羅は、今度は避けずに何又にも分かれた尾の刃でそれを受け止めた。


 しかし、樹里の放った刃は動きを止めずに、依然ガガガと回転を続けながら風陀羅を斬りつけようともがいている。


「胡蝶乱舞……」


 樹里の言葉に、彼女の周囲の空気が蠢き出し、その場に小型のチャクラムが無数に生み出される。


「行け!」


 その刃を、大鎌に晒されて身動きの取れない風陀羅に向かって放つ樹里。



キィィィン



 四方八方から襲いかかる樹里の刃……しかし、風陀羅は焦ることなく風を生み出してその全てを弾き飛ばす。


「覚悟ぉぉぉぉぉ!」


 吹き付ける風に、体のあちこちを切り裂かれながらも、樹里は死角を突きながら風陀羅へ襲いかかる。


「遅い」


 しかし、その決死の一撃は紙一重で躱され、決定的な隙を風陀羅に晒してしまう。


「さらばだ……我が妹よ……」


 風陀羅の刃が振り降ろされようとしたその瞬間、樹里のその瞳に一つの決意を見て取って………………………………………今回の語り辺であるこの俺、堤下栄は、樹里のやろうとしている全てを理解したのだったッス。



カキィィィン



「そこまでッス」


 そして俺は、二人の間に割って入り、風陀羅の刃を受け止めたのだったッス。


 俺の突然の登場に、驚きの表情を浮かべる樹里と風陀羅。


 みんなも驚いたッスかね? 俺も頑張ればあんな風に語れるんスよ?


 ただ……何度となく舌噛みそうになったッスけどね。


 それはともかく、風陀羅の一撃を、手持ちの大振りのナイフで受け止めると、俺はすかさず風陀羅に向かって蹴りを放ったッス。


「グハッ……」


 風を纏わせて放った俺のその蹴りは、虚を突かれた風陀羅の腹部に突き刺さり、そのままこいつを遙か後方へ吹き飛ばしたッス。


 しかし風陀羅は空中で体勢を整えると、ズザァァァッと地面を滑りながらも見事に着地して、地面に叩きつけられることは防いでいるッス。


「……樹里……よく耐えたッスね。自分と向き合って、それを受け入れるって事はなかなか出来る事じゃないッスよ? でも、最後の攻防は頂けないッスね。自分の命を犠牲にしてあいつを倒しても、誰も救われないッス」


 俺の言葉に、泣きそうに顔を歪めながら、下を向く樹里。


 そう、さっきの風陀羅との攻防の最後に樹里が取ろうとした策は、自分の命と引き換えに風陀羅に止めの一撃を繰り出すという物だったッス。


 それが分かったので、俺は敢えて二人の間に飛び込んだのだったッス。


「……わたしが……止めなきゃ……でも……でも…今のわたしじゃ……」


 ポタポタと地面に涙の滴を落とし始めた樹里の頭を、軽くポンポンと叩くと、俺は一歩前に足を進めたッス。


「ここから先は俺の出番ッス。樹里はそこで見てるッスよ」


 俺はそう言って、更に足を進めようとしたッスが、それを樹里が上着の裾を掴んで止めたッス。


 振り向いた俺の視界には、泣きながら激しく首を振っている樹里の姿が飛び込んできたッス。


「これは……わたしの役目……一族の生き残りである……このわたしの……」


 苦しそうではあったっすが、毅然とそう言い切る樹里の頭を再びポンッと叩くと、俺はそんな樹里にゆっくりと言い聞かせたッス。


「樹里は、過去の自分を受け入れ、今を受け入れ、更にはあれだけの覚悟(・・)をこの場で示したッス。もう十分役目を果たしたッスよ。確かに樹里は鎌鼬の生き残りかもしれないッスけど、今は人間に生まれ変わった『折原樹里』なはずッス。過去を受け入れたからといって、過去に全てを囚われていて良いはずがないッスよ。これから先は、只の殺し合いと同じッス。樹里にはこの辺で引いて欲しいッス」


「でも……でも!」


「残念ながら、今の樹里ではアイツには叶わないッスよ。さっき、命を捨てて戦いに望んでしまった以上、厳しい言い方をすれば、これから先の戦闘に加わる資格は樹里にはもうないんスよ」


「……」


「それに、俺は樹里の手を肉親の血で染めてしまいたくはないッス……」


「っ!!」


 俺の言葉に、ハッと顔を上げる樹里。


 俺は……俺は樹里に『自分と同じ道』を歩んで欲しくはないのだったッス……俺みたいに……自分の双子の弟をこの手にかけた俺みたいに……。


 俺の言葉と乾いた笑みに何かを感じ取ったのか、樹里は再び両目に涙を溜めると、俺の右手を握って首を横に振り、その手を自分の胸にギュッと抱きしめたッス。


「……だから樹里にはこの辺で俺に全てを任せて欲しいッス。なに……自分じゃ叶わない相手を他の仲間に任せるって事は、決して恥ずかしい事じゃないッスよ? むしろ、任せられる仲間がいるんすから誇るべきッス」


 俺は、さっきの言葉を誤魔化すように冗談めかしてそう言うと、樹里の髪の毛をクシャクシャとかき回し、さっき拾ったキャップ帽をポンっと被せたッス。


 それをグッと深く被り直す樹里。そよ帽子の鍔の影からは、薄紅色に染まった頬が覗いていたッス。


 そんな樹里の様子に俺は笑みを浮かべると、キッと前を向いてこう口を開いたッス。


「後は、この『風使い・堤下栄』に任せて欲しいッス」




リニューアル前とは、樹里の鎌の扱いが若干違います。


その内また、ブログの方にリニューアル前の当作品アップしますんで読み比べてみてください。


面白かったらブログ&☆ポッチン宜しくです。

ブログ&twitterも宜しく

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