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間幕 月下の白刃⑥

誤字報告感謝です(*˘ㅅ˘*)

今回は〜ッス修正のみ採用させて頂きました。

ブクマ&☆ポチして頂けると嬉しいどす(˘︶˘人)


 ふわふわとして現実味の無いこの感覚……。


 今ならどこまででも行けそうなのに、何故か思うように身体を動かせないこのもどかしさ……。


 そうッスか……俺はまだ夢の中に居るッスね……。


 願わくば、このもどかしいほどの幸福感が、出来るだけ永く続いて欲しいッス……。


「はぁ……起きてびっくりだわ……」


「そりゃこっちの台詞。何で俺ら堤下の部屋にいたんだ?」


 俺の切なる願いも虚しく、そんな会話が俺の頭にぶち込まれてきたッス……無視しちゃおう。


「あたしら二人で飲んでて……手下Aの事で盛り上がって……あんたが泣きながら手下Aの事を哀れんでたとこまでは覚えてるんだけど……」


「俺……泣いてたっけ?」


「あんた酒入ると泣き上戸になるもんね。それまでは至って普通だから、そん時の対応にいつもあたしは困るのよ」


「そーゆーミーコさんは、おっさん化を経てやたらとかわゆくなりますな。ニャンニャンニャンニャンと、恥ずかしげもなくよくあれだけスリスリとすり寄って来れるよね。しかもややマゾヒスト」


「あ、ああああれはぁぁぁぁぁ……あ、あたしは元が猫なんだからしょーがないじゃん!」


「言葉でいじられ、身体もいじられ、それでも泣きながら喜んで……ウベシ!」

「人の話を聞けぇぇぇぇぇ! このサディストがぁぁぁぁぁ!! はぁはぁはぁ……あ、あれは、あんたと2人っきりの時だけよ……」


「……照れ隠しで右ストレートかますの止めてくれます? こっちの身が保たんがな……」


「それは自業自得じゃ……あ! こんなところに居やがったわ手下A……」


 ゲッ


「ホントだ……なんか眉間に皺が寄ってるけど?」


「手下Aのクセにあたしらより朝寝坊とはどういう了見かしら? 手下Aなんだから、あたしらの目覚めに合わせて朝食ぐらい準備しとくべきじゃない?」


「それを言うならミーコさん……たまには俺より早く起きて、朝飯作ってくれても罰は当たらんと思うけど?」


「こ、ここここの間作ったでしょぉぉぉぉぉ!!」


「コンビニで買ってきた弁当を器に移しただけじゃん。しかも、買ってきたのはこの俺だし」


「文句があるなら食うな!!」


「へぇ、そんな事言う? 俺とミーコさんの食費、来月からきっちり分けて計算しようか?」


「そそそそそんなことよりこの場は手下Aよ! あたしらの空腹を満たす事も出来ない手下Aには正義の鉄槌をくれてやるのよ!」


 な、何故に……。


「……ま、いいけど。腹減ってんのは確かだし」


 え? いいって何がスか? ……ってこのパターンは……や、やばいッス!


 起きろッスよ俺! 動くッスよ俺の身体! 今すぐ目覚めるッスよ堤下栄ぃぃぃぃぃ!!


「起きろッスよ俺ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


「きゃ!」「うわ!」


「ハァハァハァハァ……」


 ま、間に合ったッス……。


 何とか自力で起きることに成功した俺は、ゆっくり二人に視線を向けたッス。


「手下A! いきなりなに……」

「堤下……そんなに焦って……」


「……?」


 なんスかね? 何かやたらと視線が冷たいような……あ。


「手下A……いくら何でもそれはないんじゃない?」

「堤下……お前がそんな趣味だったなんてな……」


「ち、ちちちち違うッスぅぅぅぅぅ!!」


 会社のソファーで寝ていた俺の横には、いつの間に潜り込んできたのか、向かいのソファーで寝ていたはずの樹里が気持ちよさげに眠っていたのだったッス!!


 ……しかも何故かほぼ裸。


 二人の冷たい視線を受けながら、この窮地をどう脱すればいいか、俺はぐるぐると思考を巡らせるッス。


 どうするッスか俺……どうするッスか俺ぇぇぇぇぇ!!


 慌てふためく俺の横で、樹里が寝ぼけまなこでむっくり起きあがったっす。


 樹里は眠たそうに目を擦って、んん~っと一つ伸びをすると、寒かったのだろう、ブルッと身体を震わせ、自分の元へと毛布をたぐり寄せて、座ったまままた目を瞑ったのだったッス。


「堤下……青少年保護法令ってしってるか? 売春禁止法は?」

「これで手下Aも犯罪者の仲間入りか……」


 兄貴は無表情に、金城さんは本気で俺を哀れんでるような表情で、そんな台詞を口にしたッス!


「ご、ごごごご誤解ッス!!」


 俺は激しく首を振りながら声を大にしてその言葉を否定したッス!



ガザッ



 俺の絶叫で目が覚めてきたのか、樹里は欠伸を一つ入れた後、抗議の視線を俺に送ってきたっ………って、抗議したいのは俺の方ッスよ!!


「樹里! 何でこっちに入って来たッスか! しかも何故なにゆえパンティ一枚で?! そっちのソファーで寝なさいって言ったはずッスよね!?」


 樹里は、俺の半泣きになりながらの抗議にキョロキョロと周囲に視線を巡らし、ようやく状況を把握したのか、小首を傾げ自分の身体をギュッと抱きしめながら『寒い』のジェスチャーを返してきたッス。


「寒かったら服を着ればいいッスよ! なんでわざわざ裸になるッスか!?」


「……」


 樹里が無言でさした指の先にあるのは、綺麗に折り畳まれた彼女の洋服だったッス。


「……皺が気になるッスか? なら早めに俺に言えばよかったんスよ……予備のジャージぐらいここに置いてるッス……」


「……起こすの……悪いし……」


 はにかんだ笑顔でそんな事を言ってくる樹里に、俺はすっかり毒気を抜かれてしまったッス。


「……はは……そんな事気にする必要ないんスよ?」


 俺は、苦笑しながら樹里の頭を撫でたのだ「ぐばぁぁぁぁぁ!!」



ガシャァァァァァン



「……さっさと事情をご説明して頂けませんかね? 手下Aさん?」


 回し蹴りを喰らって吹き飛んだ俺に、金城さんは無表情にそう言葉を投げ掛けて来たのだったッス……この人を前にすれば、どんな女性もお淑やかに見えるッスね「へぶし!」


「……悪かったわね……凶暴かつ乱暴で」


 俺の後頭部を踏みつけ、冷たくそう口を開く金城さんに、俺は慌てて申し開きをしたッス。


「……お、俺はなんにも言ってないッス!」


 大体いつの間にここまで近寄ったんスか?


「だめだよ堤下……お前、気配に出すぎるんだって」


『気配だけでそこまで分かるもんなんスか!?』


 思わずそう口からそんな言葉が出そうになったッスが、それはなんとか踏みとどまることが出来たッス。口にしたら認める事に……ブルブル……これ以上はマジメに命に関わるッス……。


「まぁミーコさん。堤下の話を聞こう。その娘も、ほら、脅えてるって」


 その言葉に、金城さんは俺の頭から足をどけて、どさりとソファーに腰掛けたッス。


 俺が顔を上げると、樹里は兄貴の言った通り、引き吊った顔で、目尻に涙を浮かべて恐怖におののいていたのだったッス。











「……と言うわけッス」


「ふ~ん……」


 俺の言葉に、兄貴はそう軽く頷いたッス。


 俺は今、樹里と出会ってからこの場に至るまでのあらましを、水無月の兄貴と金城さんに語っていたところッス。


 その間、金城さんは何故か口を噤んでじっと樹里を見つめているッス。樹里はそんな金城さんの視線が気になっているのか、もぞもぞキョロキョロと落ち着きがないッス。


「だから俺は! ……この娘に手出しなんかしてないッスし……それどころかやましい事なんて何一つやってないッス!」


 俺は必死にそう訴えるッスが、聞いているのかいないのか、金城さんは眉一つ動かすこともなく、じっと樹里を見つめているのだったッス。


「……金城さん、聞いてるッスか?」


「……」


「金城さん?」


「……」


「……ペチャパぃぐがふ……」


 聞こえてるじゃないッスか……。


 俺は口に飛び込んできた湯呑みを、取り出しテーブルの上にコンッと置くと、助けを求めて兄貴に視線を送ったッス。


 しかし兄貴は、肩をすくめて『さぁ』とジェスチャーを返してくるッス。


「金城さぁん……」


「……」


 再び声を掛けたッスが、やはり沈黙をもってそれに応える金城さん。


「金城っ! ……さん?」


 俺が、業を煮やして声を荒げたその瞬間、金城さんはこちらも見ずに片手を挙げてそれを制してきたッス。


「……?」


 思いの外、真剣なその様子に出かかっていた言葉を飲み込み、口を噤む俺。


 金城さんは、樹里の心を覗き込むかのように、じっと彼女の瞳の奥を見つめているッス。


 固唾を飲んでその様子を見ていると、金城さんの口がゆっくりと開いたッス。


「……あなた…名前は?」


「……折原……樹里……」


 金城さんの質問に、蛇に睨まれた蛙状態で身を強ばらせて応える樹里。


「……そっち(・・・)じゃないわ。あたしが聞いているのはあなたの本当の名前」


 金城さんの言葉にビクンと身体を震わせて、ゆっくりと横に首を振り始める樹里。


 ……本当(・・)の名前?


「あなたを悩ましているその(・・)名前……それがあなたの本当の名前……」


「……わ……わたしは……樹里……折原…樹里……」


 しかし樹里は、金城さんさんの言葉を否定するかのように首を振り続け、自分が『折原樹里』だと訴えるッス。


 その顔には、少しずつ恐怖の色が帯始め、頭の動きが激しくなっていったッス。


「……それも確かにあなたの名前……でもあたしが聞きたいのはそれじゃないの……」


「わたしは!……………わたしは樹里……折原樹里……わたしは……わたしは……わた…しは……わたし……………ちが……う……ちがう……わたしは……ちがう……違う!」


 徐々に激しさを増す樹里の様子に、さすがの兄貴も心配そうに金城さんの肩を叩くが、それも無視して金城さんは樹里を見つめ続けているッス。


「かね……」


 俺が声を掛けようとすると、兄貴が目配せしてきてそれを止めるので、俺は再び口を噤んだッス。


「何が違うの?」


「……わたしは……違う……違うもん! わたしは……わたしは!……………………………………だもん……………………………………わたしは……わたしは人間だもん! 化け物なんかじゃない!!」


 そう叫んで、頭を抱えて泣き崩れる樹里……。


 化け物? 一体何のことっすか?


 俺は金城さんに目配せしたッスが、やっぱり無視されたッス。


「金城さっ! …………」


 俺が再び声を荒げたところで、金城さんはすっくと立ち上がり、泣いている樹里の元へと近付いていったッス。


 すると、金城さんは樹里の身体を優しく抱きしめ、ゆっくりと頭を撫で始めたッス。


「わたしは……人間……わたしは折原樹里……わたしは……わたしは……人間?…………わたしは……わたしは一体………」


 樹里は、金城さんの胸に抱かれている事にも気付いていないかのように、涙を流しながら、ぶつぶつと呟いているッス。


「……わたしは……………………………………わたしは化け物………わたしは………鎌鼬のいつき……」




この後、何話かシリアスが続きます。苦しいです。シリアス書いてると突然空から玉ねぎを降らせてみたり、歩行者天国でいきなりランバダを踊らせたくなります。


面白かったらブクマ&☆ポッチン宜しくです。

twitter&ブログの絡みも宜しくです。

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