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間幕 月下の白刃⑤

ブクマ&☆ポッチン感謝です(*˘ㅅ˘*)

更に〜ッス修正も感謝(;´∀`)


 俺は風を纏って人の目を欺きながら、妖気を辿って夜道を走ったッス。


 風で気配を乱して人の目を眩ます術なんスけど、今回は襲撃者に備えての用心ッス。


 妖気の元に近づくにつれ、血臭が強くなっていくッス。少なくとも10人以上の犠牲者が既に出てると見るべきッスね。


「……っ!」


 後一歩で現場に辿り着けるって所で、突然奇妙な感覚に襲われ、俺はピタッと立ち止まったッス。


 例えるなら、走りながら薄い空気の膜を突っ切った時の様な僅かな抵抗をこの身で感じたのだったッス。


 ……これは……結界? しかも、物理的な結界じゃなくって、精神結界ッスね……。


 物理的に空間を遮断するんじゃなくて、心理的に「これ以上は進みたくない」と思わせることで人の行き来を遮断する術で、妖怪がよく好んで使うッス。


 俺は気を引き締め、辺りに気を配りながらじりじりと歩を進めたッス。


「……っ!!」


 角を曲がったところで目に入ってきた光景に、俺は言葉を失ったッス。


 目の前に広がる見るも無惨な惨劇の跡……道路の至る所が血で染まり、首や胴体、四肢を切断された人の死骸が辺り一面に散りばめられていたッス。


 俺は、吐き気をもよおしながらもその一つに手を伸ばし、遺体の状態を確認したッス。


 ……切断面が異様なほどに綺麗ッス。まるで空間ごと切り裂かれてしまったかのような切り口……でも筋組織の潰れ具合から、何かの術で切断されたものではなく、刃物で切断されているって事は確認できるッス。


 でも……


「綺麗すぎるッスね……」


 思わず口に出して確認する俺。これほどまでに綺麗な切り口を、俺は今まで見た事ないッス。


 それに……


「まだ温かいッス」


 俺は怒りと一抹の不安を抱えながら、そっとその遺体を地面に置くと、自分の感覚と風の精霊の能力ちからを最大限にまで研ぎ澄まし、敵の襲撃に備えたッス。


「………………っ!!」


 背後に空気の揺らぎを感じ、俺は反射的に風壁を流し込んだッス!


(ま、まずいッス!)


 それ(・・)はいとも簡単に風壁を切り裂くと、俺の懐へと入り込んできたのだったッス!


「クッ!」



バホッ



「っ!!」


 俺は咄嗟に、敵と自分の間の空気を弾けさせ、自分を吹き飛ばすことで難を逃れたッス。


 襲撃を仕掛けてきた相手も、俺の行動には意表を突かれたらしく、それ以上深追いはしてこなかったッス。


 俺は地面を転がりながら体勢を整えると、その相手の隙を突こうと、動きを止めずに飛び退きながら術を放ったッス。


「風刃!」



ビュン



「温い……」



ピキン



 しかし俺の放った風の刃は、相手の振るった何かに遮られ弾かれてしまったッス。


(……こ、こいつは!)


 俺は、その相手を確認すると、絶句して動きを止めてしまったッス。


 月夜の闇に紛れて現れたのは、巨大な鎌を尾に持つ体長1mほどのイタチに似た生物……所謂、鎌鼬って奴だったのだったッス。


 鎌鼬っつったら妖怪の中でも比較的大人しい存在なのに……。


 俺のそんな驚きを気に留める様子もなく、鎌鼬は動きの止まった俺に向け、再びその巨大な鎌を振るってきたッス。


 俺はその一撃を間一髪避ける事に成功すると、負けじと術を組み立てたッス。


「風の精霊よ……流れ乱れて……」


 しかし、鎌鼬は俺のそんな様子には構わず、無造作に突っ込んできたッス。


(早いッス!)


 半瞬後には、俺の脇を素早く通り過ぎて行く鎌鼬……そして、奴の鎌が俺の脇腹を薙いでいったッス……が


「……我を妨げし者共を切り裂け! 乱風迅!」


 俺は構わず呪文の詠唱を続けて術を放ったッス!


「っ!!」


 僅かに動揺した気配を放つ鎌鼬!


 しかし鎌鼬は瞬時に動揺を掻き消すと、俺の乱風迅を自らが纏った風と大鎌で吹き飛ばしたッス。


 鎌鼬はこちらの様子を伺うように低い体勢でじっと動きを止めているッス。


 鎌鼬は風妖の一種ッス。風を身に纏い、風そのものと化して素早い移動をする事が出来るッス。普通ならば人に捉えきれるスピードじゃないッスが……


「俺には通用しないッスよ!」


「……なる程……風使いか……」


 舌打ちをしながらそう呟く鎌鼬。


 俺は風を読める(・・・)ッス。風がどう動いていつ向かってくるのかを読むなんて事は、風使いの俺にとっては朝飯前な事なんス。奴が風となって向かってくる限り、事前に動きを察知出来るッスから避けるのもそう難しい事じゃないのだったッス。


 今の一撃にしても、奴の大鎌は脇腹の薄皮一枚を薙いだけで、俺は大したダメージを受けてはいないのだったッスよ。


「……ならば戦い方を変えるまで」


 そう言って四肢に妖気を漲らせた鎌鼬だったっすが、その時既に、奴は俺の術中にハマっていたのだったッス。


「っ?! ……クッ……」


 焦りの混じった呻き声を上げる鎌鼬。


 自分を取り巻く空気の層から、風とは違う別な存在が、渦を巻いている事にようやく気付いたみたいッスね。


「風使いが『風』だけを操るだなんて、誰が決めたんスかね?」


「いつの間に……」


 そう呻く鎌鼬。


 俺は乱風迅の呪文の詠唱を始めると同時に、俺の霊気を編んで作った特殊な糸を、風に紛らわせて流し込んだッス。


 この糸は、霊気を編んで作っただけあって、俺の意のままに操れるッス。その上強靭で理論上何処までも伸び、風と組み合わせれば糸から伝わる霊気の気配を誤魔化すこともでき、こうして(・・・・)奴も捉えることが出来るって寸法ッス。


 俺は、あのアストールとの戦いで気付いたッス。


 風使いである俺は、誰よりも気配に敏感に、そして誰よりも消す術に長ける存在に成れるッス。


 だからそれを活かせる術を身に付ける事が、強者への道へと繋がると悟ったッス。


 ま、未だに水無月の兄貴には敵わないんスけどね。


 何度一緒に飲みに行っても、気付いたら支払いバックレられるし、俺がバックレようとすると何故か直ぐに見つかるッス。


 自信なくすッス……。


 ともかく俺の放った霊気の糸で、奴は鎌鼬としての生命線であるスピードを抑え込まれてしまったのだったッス。奴の動揺はその辺りから来てるッス。


「クッ……」


 鎌鼬は飛び上がって、無理矢理糸から逃れようともがいているッスが、その程度じゃ逃れられないッス。


 でも、さすがは鎌鼬ッスね……糸に纏わり付かれても、それなりに動く事が出来るみたいッス。


 これは油断は出来ないッス!


「風の精霊よ……」


「っ! させるか!」


 俺の呪文の詠唱に気付いた鎌鼬が、俺に向かって突進して来たッス!


 でもそれはかえって好つご……っ!


 そこで一つの影が目の端に映ったッス!


「ダメッス樹里! こっちに来ちゃ!」


 呪文を練り上げようとしたところで、フラフラとこちらに近づいてくる樹里に気付いたッス!


 樹里は俺の警告に気付いた様子もなく、鎌鼬を見つめてぶつぶつと何かを呟きながらフラフラ近寄ってきてるッス!


「……に……ん…? …あ……は……き……」


「樹里! クッ……」


 俺は咄嗟に呪文の詠唱を放棄して、樹里を抱きかかえて地面に転がったッス!


「うっ!!」


 鎌鼬の大鎌が俺の背中を切り裂き、焼き付けるような痛みで思わず口から呻き声が吐いて出て来たッス。


 傷は……浅くはないけど致命傷ではないッス! 反撃しなきゃ殺られるッス!


 俺は地面を転がりながら態勢を立て直し、鎌鼬の気配を探ったッス。


「我もとに来たれ風の精霊……」


 鎌鼬の追撃に備えて神経を研ぎ澄まし、いつ奴が来ても良いように風の精霊を喚び集めたッス。


「……」


 しかし一向にやって来ない鎌鼬の追撃。


 俺は訝しく思って、気配を辿って頭を巡らし、奴の姿を確認したッス。


「……?」


 鎌鼬は目を見開き、人の顔ではないので分かりにくいっすがおそらく、驚愕の表情を浮かべてこちらを……いや樹里を見つめていたッス。


 なんかよく分かんないっすが、これはチャンスッス!


「風の精霊よ! 糸の雫と雫を紡ぐ銀の雨と化し降り注げ!!」


 俺は、風と共に漂っている糸を集め、圧縮した空気と共に弾丸として撃ちだしたッス。


 霊気の糸は飛礫となって鎌鼬の周囲を取り囲み、お互いを銀色の糸で紡ぎ合うように乱れ飛んだッス。


「チッ……クッ……」


 鎌鼬は舌打ちを入れると、風と大鎌で俺の攻撃を防ぎながら全身に絡まる糸を断ち切り飛び退いたッス。でも、全方位からの飛礫はさすがに全ては防ぎきれなかったみたいで、身体のあちこちから血を滴らせてるッス。


「止めっ……おっとッス!」


 止めの一撃を放とうとした途端、鎌鼬の四肢の指から伸びる細身の刃が、地面を突き破って飛び出してきたので、俺は樹里を抱えて慌てて飛び退いたッス。


「不覚……ここは一旦、退かせてもらう。……一応、名を聞かせてもらおうか」


「……堤下栄ッス」


「……手下A? ……誰の手下なのだ?」


「手下Aじゃなくて! て・い・し・た・え・い! ッスぅぅぅぅぅ!!」


「……」


 なんスか?! その人を哀れむような視線はぁぁぁぁぁ!!


「私の名は風陀羅かだら……風斬りの風陀羅かだら。手下Aとやら……次は殺す」


 そう言うと、鎌鼬は風を纏って姿を消したのだったッス。


「だから俺の名前は堤下栄ッスぅぅぅぅぅ!!」


 俺の絶叫が、虚しく闇に響きわたったのだったッス……ん?


「な、なんだこの血臭は!?」


 あ! こ、この声は!!


「あ! 貴様は幼女連続誘拐犯!」


「ちがぁぁぁぁぁぁうッスぅぅぅぅぅ!!」


「何が違うものか! 気を失ったいたいけな少女を抱きかかえておきながら! しかもこの惨殺死体遺棄現場……署で話を聞かせてもらおうか!!」


 目の前の刑事の言う通り、樹里はいつの間にやら気を失って、俺の腕の中でぐったりしているッス。それにこの死体の山……言い逃れは出来そうにないッス!!


「……取りあえずは……脱出ッスぅぅぅぅぅ!!」


「あ! 待てこら……」


「待てと言われて待つ馬鹿はいないッスよぉぉぉぉぉ!!」


 刑事の台詞を遮りながら、何事か寝言を呟いている樹里を抱きかかえ、俺は闇に紛れて逃走したッス!


 ……その時ふと耳に入る樹里の呟き……。


「……あ…たしは……い…つき……」


 ……いつき?


 浮かび上がる疑問符を心の中で抱えながら、俺は家路を急いだのだったッス……。












 その後、部屋に辿り着いたは良かったッスが、何故か俺の部屋で喘ぎ声を上げてるバカップルのせいで、会社への宿泊を余儀なくされた俺と樹里なのであったッス……。



堤下の能力に関しては、リニューアル前は精霊使いで、リニューアル後は風使いと変化してます。


元々風を主に使っていたので問題ないかと思っていたんだけど、この間幕だと、かなり他の精霊も使っていたので、修正に手間取りました。


この後くるラストバトルはどうしようかと思案中(;´∀`)


面白かったらブクマ&☆ポッチン宜しくです。

twitter&ブログでの絡みもお待ちしております。

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