間幕 月下の白刃③
早速『ッス』修正報告有難う御座いましたww
部屋の中に入ると、少女は安心したのか直ぐに俺の上着から手を離して解放してくれたッス。
「取り敢えず、そこのソファーにでも座ってくつろぐッス」
俺は少女にそう言うと、台所でジュースを用意して戻ったッス。
ジュースをテーブルに置くと、俺は少女とは向かい合わせの椅子に腰掛け、早速詰問を開始することにしたッス。
「早速聞くッスよ? 君は一体……」
ギュルギュルギュル~……
「……」
どちらかというと今まで表情が薄かった目の前の少女が、今は耳まで真っ赤になってそっぽを向いて今のギュルギュルを誤魔化しているッス。
「……カップラーメンしか無いッスが食べるッスか?」
俺の言葉に激しい頷きを返してくる少女の為に、俺は苦笑しながらも、もう一度台所に戻ったッス。
三つのカップラーメンを汁まで飲み干して少女はようやく満足したのか、テーブルにパチンと箸を置いて両手を合わせてお辞儀をしたッス。
「……それじゃ話しを再開……っていきなり何で服を脱ぎ始めてるッスか!」
俺は、突然服を脱ぎ始めた少女に、たまたまソファーの背もたれに掛かっていたタオルケットを慌てて被せたッス!
不思議そうに見上げてくる少女をなるべく見ないように心がけながら、俺はゆっくり彼女に向かって口を開いたッス。
「さっきも言ったっすけど、もうあのお金は君にあげた物ッス。そのお金で君を買おうだなんてこれっぽっちも思って無いっす。今日はもう遅いから泊めてあげるッスけど、明日になったら直ぐ帰る……ってだからだめだって言ってるんスよ!」
「……」
話しの途中からにじり寄ってきた少女をそう牽制すると、少女はやっぱり不満そうに見上げてきたッス。
くっ……負けてたまるかッス!
「大体お互い名前もしらな……」
「樹里」
「……い……へ? 樹里?」
「……」
無言でコクンと頷く少女。
「樹里って……君の名前っすか? つーか君、しゃべれるんスか?」
「……」
再び頷きを返してくる少女、樹里。
どっちに対する頷きだったかは分からないッスが、とにかく彼女の名前は《樹里》でしかもしゃべれるって事も間違いないらしいッス。
今まで一言もしゃべってなかったからてっきりしゃべれないもんだと……ってだからなんでにじり寄ってくるッスか!
「名前分かったらいいってもんじゃないッス!!」
ぷうっと頬を膨らませて不満を露わにする樹里。
くっ……負けそうッス……。
「だ、ダメなものはダメッス! ……大体何で見ず知らずの俺とそんなにしたがるッスか?」
自慢じゃないけどモテないことに関しては、金城さんのお墨付きッス……シクシクシク。
「……お礼」
一言だけ、そう呟くように口を開くと、樹里は一気に距離を詰めて俺の胸に飛び込んできたのだったッス!
「わっ! ちょ、ちょっと! だめッスよ! お礼なんていらないッス!!」
「家の家訓……タダで貰うな……お金に食事に今夜の宿……だからお礼……」
「お礼だったら別な方法だってあるッスよ!」
「……? 男の人は……みんな好きなんでしょ?」
不思議そうにこっちを見上げてそう樹里は呟くと、目元をほんのり紅く染めてその顔をを俺の胸に押しつけてきたッス……。
どうする俺……。
どうするッスか俺ぇぇぇぇぇ!!
「だだだだだからダメだって言ってるッス! 自慢じゃないけど俺はまだ人間相手には童貞ッス! こんな俺に身を任せたら後々心の傷になるッスよ!」
「……私……栄ならいいわ……」
「っ!!」
樹里は俺の胸に押し当てていた顔を再び上げそう口を開くと、潤んだその瞳でじっと俺を見つめてきたッス……。
幼い容貌の中で、唯一その瞳だけは大人びた憂いの光を帯びており、そんな瞳で見上げられれば、大抵の男は心の淵にある保護欲を、否応なしに掻き立てられるに違い無いッス!
それは俺に関しても例外ではなく、最早、俺の中の最後の理性の炎は風前の灯火だったのだったッス!
……と自分に言い訳しても良かったッスが(あ、良くは無いッスね)、良くも悪くもこの俺は堤下栄その人だったのだったッス…………あ、意味分かんないッスかね?
まぁ要するに、俺の巨乳に対する拘りが、樹里の貞操を救ったって事なのだったッス。
それともう一つ……今の台詞で、俺には気になることが出来たッス。
俺は、樹里の両肩に再びタオルケットをふわりと掛けると、そっと俺の体から樹里を離し、にっこり笑って話しかけたッス。
「樹里……君の今までの人生に、一体何があったのかは分かんないッスし、聞かないッス。でも、君が何か迷っているのも、不安に思ってるのも何となく分かるッス。だから、こんな方法で助けを求めなくても俺は君を助けてあげるッスよ?」
樹里は……俺の名前を呼んだっす。表札が出てるッスから《堤下》ってのは、注意深い人間なら分かってもおかしくないッス。
でも、彼女と出会って今に至るまでの間で、俺の《栄》って名前は、彼女の耳には入ってはいないはずなんス。
つまりは彼女は初めから俺がどこの誰なのか……そして俺が術を繰り出した時の彼女の反応を見れば、彼女には俺がどういう人間なのか分かっているってのも見て取れるッス。
風の精霊達も、彼女の行動の違和感を俺に伝えてくれてたッスから、俺は彼女の行動の意味に何となく気付いたのだったッス。
樹里は俺の台詞にハッとなり、咄嗟に身を引いて口元を手で押さえ、か細い声を絞り出したッス。
「……不能?」
「ち・が・うッスぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
半泣きの俺の絶叫がよっぽどおかしかったのか、樹里は目尻から涙を滲ませながら一頻り笑うと、天井の方を見上げて息を吐き、そしてゆっくり頭を下げたッス。
「……ごめんなさい」
俺は、溜息を一つ入れると、苦笑しながら口を開いたッス。
「……君が謝る必要は何もないっすよ。今日はもう遅いッスからゆっくり休むとして、明日また話を聞くッス」
「……」
樹里はにっこり笑って頷くと、さっきの人を誘うような包容ではなく、感謝の意を表す包容を交わし、俺の耳元で「ありがと」と呟いたのだったッス。
俺は少々照れくさかったので、軽く樹里の背中を叩きながら耳元で囁いたッス。
「ほらほら女の子はもうちょっと恥じらいを持つッスよ? 早く服を着て……」
ガチャガチャガッチャン
「ウイィィィッス手下A! 落ち込んで自殺なんかしてないかえ?」
その時突然鳴り響く、ドアノブをぶち壊す破壊音……そして今最も聞きたくはなかった人物から放たれる騒音がこの部屋を埋め尽くしたッス……。
「安心せい! このわたくし金城美依子が、じっくり酒の肴……もとい、慰めてあげ……あれ?」
「……」
「……」
「……」
突然の乱入に只々唖然とするしかない俺と樹里。
その樹里は、俺の腕の中で幼い体を惜しげもなく見せているッス。
……何故このタイミングでこの人が?
何故、今日という日にこの人がこの場に?
何故、俺にばっかりこんな試練を与えるッスか?
神様! 今直ぐこの問いに答えるッスぅぅぅぅぅ!!
俺の心を絶望が覆い尽くしたのだったッス……。
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