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攻め来る罠にご用心1

ミーコ視点


 あたし達は妖魔共の群をケチらしながら目的の洞窟を目指し、遂にはそこに到達した。


 今は洞窟に入り込み、ファンタジー世界のダンジョンの中を進むが如く探索している。


 先頭は鉤内のおいちゃん。おいちゃんは実は妖怪火前坊(かぜんぼう)で炎を灯して一行を先導しているのだ。


 ふと、かぶりを巡らせ視線を走らせる。全員かすり傷一つ付いてない。一安心だ。


 あたしのストレスもいくらか晴れたし、何より裕太の存在が白蘭の件でみんなに認められたようなのであたしはそれがとても嬉しかった。


 これはあたしのものなのよー……と言って自慢して回りたいけど、やったら裕太にどつかれるからやらない。


 ただ、全てが順調だったわけじゃない。1つ気になる事が出来たのだ。それは裕太と岸本のやり取りだ。


 あの二人……波長合いすぎじゃね?


 裕太は岸本を警戒してるし、おそらくは岸本も裕太を警戒してる。なのにお互いノリボケツッコミが噛み合ってしまっている。思考回路が似たり寄ったりなんだろう。


 まずいわー……。


 付き合いはじめてはや半年、裕太の事は世界の誰よりも分かってるつもりだ。それはアイツの弱点に繋がるあれこれも含まれてる。アイツは……アイツはお金に弱いのだ!そしてお金持ちにも弱いのだ!


 まずいわ……非常にまずいわー!このままじゃ、岸本に裕太が取り込まれちゃうかも。


 BL展開はノーセンキュー!清く正しき男女交際に引きずり込むわ!


 あたしがそう心の奥で誓いをたてていると、岸本が立ち止まり、まわりを見渡し口を開いた。


「問題はここからだ」


 立ち止まった場所は洞窟の入り口から5分ほどの場所にある小広間だ。


 その小広間は直径10mくらい、高さが最大5mくらいの半円形の空間だった。でっかい肉まんを想像してもらえれば分かりやすいだろう。あぁ~お腹空いた。


「前回の探索記録よると、この正面の壁が奥へと続く隠し通路になっている。ここを開けるためには、左右にある枝道の先にある袋小路で生贄を捧げる必要があるそうだ」


「つまり手下Aを供物として捧げるって事でOK?」


「ちちちちょっと待って欲しいッス!!」


「ミーコさん、堤下は一人しかいない」


「なら相棒の榊も一緒に捧げるって事で」


「はぁ?俺と堤下を同列にするんじゃねぇよ!やるなら堤下一人で、どうにかしろ!」


「榊……お前がどういう人間なのかよーく分かったッス!」


「そいつは重畳。一つ賢くなったみてーで良かったじゃねーか。じゃーな、元相棒」


「ちょちょちょちょっと待つッス!!そこはツンデレ気味に『ケッ』とか言って誤魔化すとこッスよね?!」


「お前に対してツンデレるって誰得よ?」


「誰も幸福にならないツンデレね。って事で手下Aを2回供物にする事に決定ね」


「やむを得まい。堤下ひとりの犠牲で済むのであれば、それに越した事は無いのだからな」


「リィィィダァァァ!アンタが止めなかったら誰がこの流れを止めるっすかぁぁぁ!!」


「最早止める事など出来ぬと心得よ。お前は我々の為に犠牲となり、草葉の陰から見守るのだ」


「堤下……俺はお前の事を決して忘れない……3日くらいなら」


「水無月さんあんたもッスかー!……って、え?!たった3日スか?!俺の存在意義って……味方は?!俺に味方はいないんッスか?!」


「いる?」


「「「「「「「「「ブンブンブン」」」」」」」」」


「こんな時だけ一致団結しないで欲しいッスぅぅぅ!!」


 崩れ落ちる手下A。ほっとこー。


「正味な話どうする?」


「対策は考えてある。ふた手に別れてそれぞれでレッサーデーモンを召喚して生贄にする」


「対策出来てるなら初めっからして欲しいッス!!」


「レッサーデーモンって事は、黒魔術でしょ?さっきの見れば、リーダーが使えるのは分かるけど、もう一方はどうするの?やっぱり手下Aを捧げるの?」


「蒸し返されたッス!!」


「それが1番確実だが……」


「あんまりッスぅぅぅ!!」


「先ずは、別な手を試してみようと思う。藤堂」


「はい」


「これを持って右の袋小路の奥に行け」


 そう言いながら岸本が藤堂のおっさんに渡したのは楕円形の黒蒼玉ダークサファイだ。


「これは?」


「レッサーデーモンを封じた魔宝玉で、これを割ればレッサーデーモンがその場に召喚される。私は左を受け持とう」


 そう言いながら、もう一つの魔宝玉を取り出す岸本。


 それを見た手下Aが、愕然とした表情でまた崩れ落ち、か細い声で訴える。


「リーダー……用意周到ッスね……そんな準備をしてるって事は、純情な俺をからかったんスね……酷いッス……」


「いや、一度探索してるって言ってんだから、何かしらの対策してるって事は誰でも分かるんじゃね?」


「よね?」

「だな」

「当然であろう」

「当りめーだろ」

「当然ですね」

「お、お前……今のマジだったのか?冗談だろ?だよな?」

「……これが堤下のクオリティ……」

「コクコク」

「ガウ」


「な?ま、お前さんは童貞だ(人生経験足り無い)ししようがないよな」


「……」


 四つん這いになってガックリ項垂れる手下A。


 なんて哀れな手下A。


 泣いちゃダメよ手下A。


 負けちゃダメだよ手下A。


 ここは……ここはあたしが慰めてやらねば!


「どうせ俺は童貞ッス……童貞はこれ以上みなさんのお役には立てないッス……童貞はここで一人寂しく朽ち果てていくのがお似合いッス……」


 負け犬の如くブツブツと呟き続ける手下Aの肩を、あたしはポンッと叩いて言葉を掛ける。


「そうね……そこがあなたが手下Aである所以だわ。童貞であることが手下Aであることに拍車をかけてるって訳ね。負けるな手下A。挫けるな手下A。童貞にだって明日はあるわ」


「…………」


 あたしのありがた~い励ましを受けて益々深く海より深く沈み込んでいく手下Aに気をよくしたあたしは、絶望の淵で何とか留まる彼に止めを刺さんと、滅びの言葉をこのプリティマウスから紡ぎ出した。


「あなたはこれからも手下A……永遠に手下A……女の子には相手にされず、妖魔との戦いで身を崩していくの……あなたは一生童--ゴゥゥゥン--ぅでうぃぃぃぃぃ」


「……トドメ刺してどうする」


「あだじがどどめざざれだわい(あたしがトドメ刺されたわい)」


 脳天をフライパンでスマッシュされ、あたしはピクピクと断末魔に揺れる物体Gへと成り下がった。


 そんなあたしを放置して裕太はそっと手下Aに近づくと、肩に手を乗せ神妙に語り掛ける。


「堤下……お前が未だに童貞なのには、きっと何か意味があるんだよ……」


「……」


「いいか?よく考えろ……あの男爵でさえ結婚出来たって話だぞ?」


「そこでワシを引き合いにださんでもらいたいものだの」


 そのもっともな意見を無視して裕太は手下Aの耳元でそっと囁き続ける。


「俺はお前が男爵に劣っているとは思えない」


「……ピクッ……」


「わりかし整っていると言えなくもないけどニヤけた印象がそれを台無しにしてるそのルックス……」


「……」


「キャバ嬢への散財癖さえ無ければポイントが高い、同年代の人間より明らかに高い経済力……」


「……」


「低くもなければ高くもないツッコミどころに困るごく平均的なその身長……」


「……」


「……あれ?俺、堤下を持ち上げようと思ったんだけどなんでこんなに上手く行かないんだろ?」


「んなこと知るかッスぅぅぅ!!」


「どう考えてもとどめを刺してるのは裕太だよね?」


 あたしの台詞には反応も見せず、裕太は再び手下A肩をポンっと叩く。因みに、岸本は榊を連れ、藤堂のおっさんは男爵と連だって、既に目的の場所へと向かっててここには居ない。


「その、なんだ?まぁ、童貞だって生きていける……さ?多分?」


「なんスかその雑な慰めは!しかも最後疑問形だったッスよね?!」


「あはははは。どうも俺の力じゃここまでのようだ」


「諦めるなッスよぉぉぉ!!」


 何やらカオス様相を呈してきたな。そして殴られ損だったと気付いた今日この頃なのであっ……た?


 ぬぬ?


「……なんか来たわよ」


 あたしはすっくと立ち上がり、残っているメンバーに注意を喚起する。


 隠し通路と言われていた正面の壁に、バチッと音を立てて魔方陣が現れ、そこからぬぅーっと何かが通り抜けて来る。


 地面に届こうかという程の長い髪……


 綺麗ではあるが血色の悪い青白い顔……


 どこの金持ちのご令嬢かと内心ツッコミたくなる高そうな和服姿……


 あれは……


磯姫いそひめ?」




目的地の洞窟の攻略開始。


火前坊は平安時代の京都に現れた妖怪、磯姫は別名磯女子とか海女とか海女房とか呼ばれてる妖怪です。


ブクマ&☆ポチありがたいです。

Twitterでの拡散も嬉しいデス。

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