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9/22

9:転校生の恋愛経験も聞いちゃいました。

「松蔭寺は一人暮らしなんだな」

「いきなりどうしたのよ。

 さっきも言ったじゃない」


 熊澤と松蔭寺にスタバを奢り、空いているテーブルで呑んでいる。


 その最中、妙に親近感が湧いた内容に関して、俺は聞いてみた。


「いや、俺も一人暮らしをしているからな。

 妙な親近感が湧いたんだ」

「あんたも一人暮らしなの?

 ……見えない」

「それはこっちのセリフだ」


 松蔭寺からの感想に適当に返す。


 まぁ、事実松蔭寺のような小さい子が一人暮らし、というのに少し違和感があるが、すでに松蔭寺も齢15歳の女子高生だ。

 俺も人のことを言えないので、黙っている。


「何買ったの?」

「あぁ、これ?

 これは下の文具屋さんで買ったファイルと、ペンと、マスキングテープと……」


 話は切り替わり、買ったものの話に移り変わる。


 今日買ったものは知っているため、会話に混ざることはなく、俺はコーヒーを啜る。


 コーヒーは割と飲む方なのだが、美味しさは分からない。


 これはあくまで薬的な何かだと思って呑んでいる。


「っと、こんなとこかな」

「私は日本の文化祭を知らないからなんとも言えないんだけど、面倒くさいわね」

「たしかにねー。

 事前の書類作りとか、計画とか面倒だねー」


 熊澤は見せた購入品をしまいながら、松蔭寺の言葉に同意する。


「それにしても、熊澤はなんで文化祭委員なんて立候補したんだ?」

「ん? 何よ」


 俺が質問すると、ガラの悪い感じで返してくる熊澤。

 しかし、質問の内容を考えたのか、少し思案顔をしてから、


「せっかく高校生になったんだから、思いっきり楽しみたいねって思っただけ」

「それなら体育祭の委員はどうしてやらなかったんだ?」

「それは時期的にも無理だったから。

 一年生の陸上の大会がその時期にあったのよ」


 熊澤は体育祭では何かをしていた、ということはなかった。


 俺の方は相変わらずバイトをしているので積極的に参加はできないが、


「そういうことか。

 ……なら、俺もできるだけ協力させてもらおう」

「何が?」

「文化祭のことについてだ。

 俺はバイトで忙しいからフットワークは軽くはないが、地味な作業とかだったらやるぞ」


 熊澤は、俺の言葉を聞いて少し目を丸くしている。


「どうした?」

「いや、別に。

 あんたはこういう行事は好きじゃないのかな、って思ってたから」

「俺は別に行事自体は嫌いじゃないぞ。

 なんなら好きだ、というくらいだ」


 体育祭だってかなり頑張ったしな。


 バイト先のコンビニで筋肉痛に悩まされたのはいい思い出だ。


「私も学校の事とかあんまり知らないけど、協力するわ。

 エマは大事な友だちだからね!」

「マリア……」


 熊澤は松蔭寺のセリフに感激したのか、抱きついている。


 ちなみに松蔭寺と熊澤は隣同士、俺は対面に座ってる。


「でも、あんたはどうして急にそんな精を出そうと思ったのよ」

「俺も同様だ。

 友達が頑張ろうと言っているのだから、手伝うのが友達だというものだろう?」


 松蔭寺の言葉に当然のことを返すと、目の前の二人は目を丸くした。


「昭仁、私の事を友達だと思ってたの?」

「……俺は勝手にそう思っていたが?」

「いや、別に私も深くは考えたことはなかったんだけど……」


 熊澤は少し難しい顔をしたが、頭を振り、


「ま、人出が増えるならいいか。

 というか、確かにこんなに話しておいてクラスメイトってのもおかしいよねぇ」


 熊澤の少し照れた様子に俺は疑問を覚えるが、恐らく友達と話すのに少し照れくさい一面でもあるのだろう。


 俺は熊澤の様子には突っ込まない。


「話は変わるけれど、エマたち二人でさっきまで、どんな話してたの?」


 そこで松蔭寺が話題を変える。

 熊澤はこれ幸いと話題に食いつくが、


「別に特別な話はしてないよ。

 買うものの確認とか……恋愛経験とか?」


 またも恥ずかしくなる話題になった。


 俺は口を出さずに見守っている。


「恋愛経験?」

「あぁ! 別に何があるとかでもなくて、この状況がデートみたいだから、そんな話になっただけでっ!」


 熊澤は先程の会話からペースを崩しているのか、焦っている様に見える。


「まぁ、俺は恥ずかしながら恋愛経験が無くてだな。

 別に悪いことをしているわけではないのだが、何が行けないのか……」

「趣味嗜好の時点で女の敵だと思うわよ」

「そんなわけ無いだろう?

 それで俺の価値が下がるわけじゃあるまい」


 そもそも俺の理想の女子のことが漏れていたとしても、気持ち悪い、とかにはならないだろう?


 それだったら大抵の男子は気持ちが悪くなってしまうものだ。


「……あんたがなんで恋愛経験がないのかよく分かったわよ」

「そういう松蔭寺はどうなんだ?」

「私?」


 松蔭寺からの言葉に、俺は思わず不躾な質問をしてしまう。


「私は……」

「別に答えたくなかったら、答えなくても良いんだぞ?」

「聞いておいてどういうことよ……。

 別に隠すものじゃないし話すわよ」


 松蔭寺は少し俯き、残り半分を切ったカップを傾けながら、


「恋愛経験は、向こうで少し。

 もう別れたわよ」

「そうか」


 俺は特にこれと言った反応をすること無く、相槌を打つ。


 別にそれを掘り起こそうとか、申し訳なく思うとかは必要ない。


 ただ、会話を聞くだけ。


 彼女の話すという決断を肯定する。


「わっ?!」


 そこで、松蔭寺の体が横に引かれる。


 そして、熊澤の胸に収まった。


「なにするの? エマ?」

「うーん、こうしたくなって……」


 そして熊澤が取った行動は、撫でる。


 熊澤は松蔭寺を抱き、その頭を優しくなでた。


「別にもう悩んでないわよ」

「そういうことじゃないの。

 私がしたいから、してるだけ」


 俺にはできない選択だな、と他人行儀に目の前の行動を見る。


 熊澤はやはり優しいやつだな。


 だけど。



 どうにも胸がないと、あれは痛そうなのだな、と思った。



 ……何も話してないのに睨まないでくれ、二人共。

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