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10/22

10:転校生のヒミツを知っちゃいました。

 熊澤と買い物に行ってから、一週間と少しが経つ。


 俺は熊澤から適当な作業を引き受けることになった。


 ポスターのデザインを考え、ある程度書いたので、提出用の清書。

 みんなへのアンケートを取るための用紙の準備。


 朝早く学校に来るため、その日にやることを先回りしてやることに使われたりした。


 正直、あまり辛いものはない。


 そもそもこの手の作業は少しバイト先の方でやらされているので、それに比べたら、というやつだ。


「ほんと、正直にすごいと思うわ」

「どうしたいきなり」


 そして今日は、週明けの月曜日。


 朝、俺は熊澤に書類を渡す。


 後一週間と少しで夏休みに入る前に、しっかりと出し物の詳細を決めるためのアンケートだ。


「昭仁には面倒な仕事を頼んでいる自覚はあるんだけど、それを平然と、それも愚痴も言わずにやってるのはすごいと思うわ」

「そうか?

 別に重い仕事でもあるまい?」


 やっている内容の殆どは、パソコンでの作業だ。


 俺は一人暮らしで珍しくパソコンを持っている。


 あまり良いものではないが、書類作業やメールのやりとり自体はできる。


「でも、私が学校のパソコン室で適当に作ったやつをここまできれいにされると、ムカつく通り越してすごいわ」

「それくらいだったら簡単だ。

 俺の場合は、店長が苦手だからできるようになった、というのもあるがな」

「そういえばそんなことを言ってたわね。

 にしても、助かる、ありがと」


 熊澤は基本的に作業をすると感謝の言葉を述べる。


 こういうのが熊澤の良いところか、と勝手に思っていると、


「あら、おはよう」


 ガラリ、と教室に人が入ってくる。


 金髪のツインテールを揺らし、少し気の強そうな瞳は、きれいな碧色だ。


「エマ、これが今日のアンケート?」

「うん、昭仁が作ってくれたやつ」


 教室に入ってきた人……松蔭寺は、熊澤のもとに近寄り、俺の作ったアンケートを確認する。


「……うん、大丈夫ね」

「ほんと、マリアって日本語しっかりできるよね」

「そ、そう?」


 スラスラとその美しい瞳を動かして確認すると、熊澤がぼやく。


「確かに、松蔭寺は帰国子女だというのに、結構日本語が堪能だな」

「あんたもそう思う?」

「まぁ最初の登場の時点でかなり流暢だったから忘れていたね」


 俺と熊澤の言葉に、松蔭寺は少しまごつく。


「こっちに来る前から日本語はかなりできていたのよ」

「親がどっちか日本人なの?」

「パパが日本人の血が少し混じっている、くらいね」


 熊澤の問に答える松蔭寺は、どこかもじもじしている。


「両親が日本語を話していたのか?」

「確かに使わないことはないけど、基本は英語で話してる」


 俺の問に首を横に振る松蔭寺。

 両手を握ってこちらに視線を合わせようとしない。


「……が好きだから」


「「ん?」」


 小さな声で何かを話す松蔭寺に、俺と熊澤は聞き返す。


 すると、しっかりとまだ小さな声だが、松蔭寺は恥ずかしがりながら、


「日本の、アニメが好きだから。

 翻訳でも良かったんだけど、日本語を覚えたほうが楽しいって思って……」


 と、テレビで見るような回答をした。


「そういうのテレビで見るけど、実際に目にするとすごいなぁ、って思うよほんと」


 熊澤は心の底から感心している声を出す。


「別に恥ずかしがることじゃないだろ?

 現に俺もかなり見ているわけではないが、アニメくらいは見る」


 テレビはつけていれば見る程度だが、基本的に家はうるさいほうが良い派なので、つけっぱにしている。

 そのため、結構な数のアニメは見ているはずだ。


 中には流し見していたら、ハマったものも少なからずある。


「そ、そうよね。

 日本ではこういうのを恥ずかしがる風潮があるって聞いたから……」

「うちのクラスはいないけど、他のクラスにはジャラジャラアニメのキーホルダーつけてるやつもいるよ」

「今更オタクが駄目というのもないとは思うがな」


 熊澤と俺の意見に、松蔭寺はどこか照れくさくしている。


 そこで、ふと思い立って聞いてみる。


「ところで、何を見るんだ?」


 松蔭寺はその言葉に、清々しく、


「プリキュアよ!」


 と言い放った。


 俺と熊澤が凍りつく。


 確かに、悪いことではない。

 俺らも確認をしなかったから、この微妙な感じになっているのだ。


 別にプリキュアに悪いというところはない。


 なんだったら俺も流れていたら見るくらいだ。


 だけど、帰国子女で美しい女子、それも小さな女の子がプリキュアを好き! といったらどうなるだろうか?


 ……ん?


「あ、うん。

 別に恥ずかしいことはないよ」

「そうだな。

 誰もが見たことあるし、別におかしなところはないよ」


 熊澤と俺は松蔭寺に対してポジティブな言葉を掛ける。


 恐らく熊澤も同じ結論になったのだろう。


 別に松蔭寺だったらプリキュア好きでも問題ないし



 寧ろ良いのでは?



 熊澤の持っているアンケート用紙。


 そこには、大きく題名として、


『文化祭の出し物:コスプレ喫茶の内容(コスの内容)』


 と書いてあった。

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