ドキドキな食事会
お茶を楽しんで(特にマカロン。あのあと、ねだって2つ貰った。)いると、晩餐の支度が整ったと、先程と同じ侍女が伝えに来てくれた。
マカロンを少々食べ過ぎたと思いながらも、食堂に誘導される。
お茶とマカロンでたっぷりなお腹に入るか心配でお腹の辺りをゆさゆさとさすっりながら入室すれば、既にハミルトン侯爵夫妻は中いた。
慌てて淑女の礼をとるが、お腹をさすっていたのは見られているから、顔から火が出そうな勢いで恥ずかしい。誰か、私に水を掛けてくれないだろうか。そうすれば、落ち着く気がする。
「あらあら、可愛い客人の登場ね」
ふふふと、柔らかく笑う夫人と「久しぶりに見たが、また一段と可愛らしくなって」と、茶化す侯爵。
屋敷でこのような行動をとろうものなら、母に「アンの分は少なくしなさい」と言われてしまう。
本当に礼儀には厳しい人だと思う。その点、ここの人たちは優しいが、いまだけかもしれない。夫人や侯爵も婚姻を結んだ途端に、母のように厳しくなるのかもしれないと思うと、お腹のあたりがきゅるきゅると鳴る。
「アン、席に着こうか」
柔らかく笑って…いまにも吹き出しそうなを堪えているユーゴがエスコートしてくれるが、お腹の音が聞こえていたのか。そこは、聞こえない振りをしてくれてもいいではないか!!
侍女が先程、お茶を運んでくれた時は、聞こえない振りしていたのに。
真っ赤になった顔で隣に座ったユーゴを睨み付ける。
「まあ、アンジュちゃん。可愛い顔で睨んでも、あの子の悪戯心に火が着いてしまうからやめなさい」
「母様!」
余裕のないのか、大きな声を出すものだから驚いてしまう。それにしても、侯爵もマナーについて何も言わずににこにこしている。
それが、逆に怖い。だったら、我が母のように怒ってくれる方が数倍マシだ。
「ほらほら、2人ともアンジュちゃんで遊ぶのはやめて食事にしようではないか」
遊ばれていたのか!!
それにしても、食事の時間だというのに、オリヴォア様の姿が見えない。
私がオリヴォア様を知っていることを彼は知らないから何も言わない方がいいのだろう。
運ばれてきた食事を、ゆっくりとそれして食べていると「マカロン食べ過ぎたかな?」とふいに耳打ちされた。
それは言わないで欲しい。
私もそれは思っていた。運ばれてきた前菜から子鹿のテリーヌまではよかったが、最後のデザートになってお腹がギブアップを訴えている。
侯爵家の食事はやっぱり料理長の腕がいい。屋敷の料理長も腕がいいけれど、その上をいくくらいだ。侯爵家でこれなら、城はさらに凄いのだろう。
目は食べたいけれど、お腹は苦しい。
無理だと諦めていると「やっぱり、女の子にこの食事量は大変よね。また、屋敷にいらっしゃい。今度は私と御茶会でもしましょう」と、夫人が提案してくれるものだから、頷くしかない。
「母様、そこには勿論、僕もいていいのですよね?」
「何を言っているの?貴方は仕事をしなさい。それに、これからは此方にやって来る頻度も高くなるのだからね」
あっ、そうだ。夫人に言われて思い出した。
ハミルトン家に嫁ぐために花嫁修行しなくてはいないのだ。屋敷でするものだと思っていたら、此処に来ることになるのか。
料理美味しいから嬉しいな。と、呑気なことを考えていると横から突然揺さぶられる。
えっ、食べたもの吐くからやめて欲しい。
「そんな話、聞いてないよ」
「ユーゴ、アンジュちゃんが苦しそうだから離してやりなさい」
侯爵のひとことでやっと解放された。
「父様、どういうことですか!これからアンが一緒って」
ん?話が飛躍して一緒にいることになっている。
ユーゴの頭は大丈夫なのだろうか?
「落ち着いて。おじ様がきちんとお話ししてくださるはずよ。私もはじめて聞いて驚いているのよ」
血が引くような気分というか、気持ち悪い。うっと吐き出しそうなのを我慢しているが、そろそろ限界。
ユーゴを落ち着かせて、そのまま床とご対面しそうになったところを支えられ、間一髪で倒れなくて済んだが、何処か休める場所に連れていって欲しいと思いながら意識を失う。




