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 社交界の紅一点とは、殆んど嫌みを込めた言い回しだ。

 ドレス、髪飾り、唇までもが毒々しい赤で纏めあげた姿を嘲笑うかのように、称しているだけだから。

 彼女の黒髪に、白い肌に、赤はとても映える色であるのは誰が見ても納得する。

 なぜなら、彼女は完璧に赤を着こなしているからだ。

 それでも、ただ自分たちが注目されないからという令嬢たちのつまらない嫉妬が彼女を嘲笑っている。

 今回、自分の婚約者がそんな女性とふたりで密会している姿をみたら、彼女に嫉妬した令嬢たちの気持ちがわかるような気がする。

 平凡な顔立ちの私は、あの美しい彼女に嫉妬している。

 百面相をしていると、私の嫉妬心に気付いたのか兄によって、そっと席を窓側に移された。

 兄はやっぱり兄なのだろう。

 その優しさを他の令嬢へ向ければいいのにと毎回思う。

 因みに兄には婚約者はいない。というよりも、元婚約者により婚約破棄をされた過去がある。

 だからこそ、私は兄の失敗から学びユーゴとの婚約を成功させよう兄に心の中では誓っていると、「よっ、ユーゴ」と気安く何故か声を掛け始めた。

 この人をいま優しいとか、流石兄!妹のことを守ってくれるのか!とちょっと感謝の眼差しとか誓い立てていた自分自身が恥ずかしいくらいに空気を読まない。

 このバカは女心を理解しようとしないくらいの忠誠心と友情と家族愛だけで生きているということを忘れていた。

「おい、バカか。何故、アンジュがここにいるのに声を掛けた」

 そうクリス様!クリス様の反応こそ正しい物なのです。

 このバカ兄は基本的に物事を考えないで発言するバカなのです。

 動物的本能だけは備わっているバカなのです。

「アンジュとにかく隠れろ」

「隠れるといっても何処に」

「テーブルの下だ。テーブルクロスで姿が見えないだろうから。いま淑女がという躊躇いは捨てろ」

 クリス様も私に淑女としての誇りは求めていないようで、身を隠すことにだけ専念しろと焦っていらっしゃるため、ここは腹を括るしかないみたいだ。

 隠れたと同時に足音が聞こえるから、ユーゴが近づいて来たのだろう。

 腐っても婚約者の兄がいるのだから。

「ケイにクリストファー殿下、お久しぶりです。お二人でこのような場所へ来るとは驚きました」

 社交辞令なのか、本心なのかわからないが、ユーゴの口調はとても穏やかだ。

 浮気現場を婚約者の兄に見られた者とは思わないほどの落ち着きに不信感をおぼえる。

 もしかして、私は捨てられてあのジェーン様を婚約者にしようとしているのではないかと勘繰ってしまうほどに。

「視察をしている途中で、休憩したくなってな」

 クリス様が当たり障りのない回答しているのに対して、「そう言えば、お前アンジュに最近会ったか?」と話を換えてくるバカは誰ですか?

 それは、ご令嬢たちに人気の騎士であるバカ兄です。

 この人の何処が人気なのか是非教えていただきたい。

「最近は会えていませんね。会いたいのですが、アンに断られてしまいまして」

 寂しいそうな口調で嘘をつかれているのですが、いつ私断りました?

 というか、誘われもしないのに断るとかどうやったら出来るのですか?

「そうなのか、お前たちには俺みたいになって欲しくないから気に掛けてはいるのだが、あいつから断るなら仕方ないな」

 絶対にいま兄の目は笑っていない。

 見えなくともこれだけはわかる。

「ご心配を掛け申し訳ありません。俺の配慮不足でケイにまで迷惑を掛けてしまっているようで」

「なあ、ユーゴ。これは私からの提案なのだが、お前がアンジュを不要と考えるなら私がアンジュを貰い受けたいのだが」

「ご冗談を。殿下にアンジュは勿体無いですよ。では、連れを待たせているので失礼致します」

 最後の最後でクリス様は何故ユーゴを挑発するようなことを言ったのだろう。

 それにしても、クリス様には勿体無いとは私の価値は相当低いらしい。

 そうでなければ、浮気などしないだろう。

 落ち込みすぎてテーブルの下から出たくなくなってきた。

 ユーゴ達が居なくなるまで私はテーブル下に隠れていた。

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