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 上流貴族というものは常に優雅であれと言われるくらいに、所作に無駄がない。

 そのため、私の目の前にいるグレン様の所作にも無駄がなく優雅だ。髪を掻き分ける仕草さえ、上品にみえる。

「では、次にいきますがよろしいでしょうか?」

「はい、大丈夫です」

「いい返事ですよ。流石、ケイの妹ですね。では、こちらの勤務日が書かれた物に移りますが…」

 また説明が開始される。要点だけ述べればいいのにな、と思いながらも余計なことは言ってはいけない。貴重な時間を私のような人間に割いてくれているのだから。

「で、ここなのですが。申し訳ないのですが建国祭前夜は人手不足に陥りやすいの、出来ればアンジュさんにも出勤していただきたいのですが、ご都合如何でしょうか?」

 グレン様に言われた週の勤務日をみると、他の勤務日はきちんと週でも決まった日になっていたのだが、そこだけおかしいものになっていた。

 花嫁修業もあるためひとりで判断しかける。それに、家庭教師が来る日も決まっているからな。

 父と母どちらに相談するべきなのだろう。

 だが、目の前にいるグレン様はすごくにこにこしていて逆に怖い。

 笑顔で人を支配する人など、私の知る限り母とミーシャくらいだ。他の人はもっと穏やかに解決してくれるのに。

「え…っと、その…私だけでは判断しかねます」

「そうですか」

 チッと舌打ちでもしそうな顔を一瞬みせてきたので、なにこの人。本当に侯爵家の人なの?と、本気で疑問に思う。

 私の知る侯爵家は、ユーゴとミーシャくらいだけれど、こんな舌打ちするような人たちじゃない。たまに、人をからかう癖はあるけれど。

「ケイに頼み込んでも駄目だと断られたから、直談判に来たというのに」

 ん?兄に頼んだ…だと!!

 というか、グレン様は兄と知り合いなのか!

 そんなこと、聞いてない。そして、前回の来訪時は会話もしていなかったではないか。どういうことだ!

「間抜けそうな顔をしている自覚はあるかな?ケイと僕は学園時代の同期だよ。クリスとケイとは、中々いい仲を築いていたのだけどね」

 間抜けそう……。この人の根は、ニコライさんと同じ人種だ。それとも、ニコライさんの部下だから似てしまったのだろうか?

「あまり、失礼なことは考えないほうがいいよ。キミの直属の上司になるのは、僕なのだから」

「嘘ですよね…?」

「そんな下らない嘘を吐いて僕の特になるとでも思っているのかな?そうだとしたら、もう少し家庭教師に足を運んでもらうことを勧めるよ」

 爽やかな笑みを浮かべて酷いことをさらっと言われる。そして、それがまた許されるような雰囲気を出している。

  「えっ、それはちょっと…遠慮したいです。それに、兄と知り合いだと初めて聞きました」

「まあ…、卒業してから疎遠になったも同然だからね」

 何処か懐かしむような瞳をするグレン様。

 兄は軍の中でも近衛騎士として勤務しているため、クリス様の元にいる。

 だけれど、グレン様は官僚として勤務しているためクリス様の元ではなくジェード殿下の部下として王城に出仕している。

 官僚は、自身の得意分野だけではなく、他の分野も学ばなくてはいけない。そして、誰の元に行くかはわからない。優秀なら優秀な者の元へいく。それは、誉れであるが、友情というものが一才通じないものでもある。

 グレン様は、きっとクリス様や兄と一緒に頑張っていきたかったのではないか。

 それとも、力をつけてクリス様の元にいきたいのだろうか。本人にしかわからない。

「なら、私を通じてまた親しくなりましょう。私にそのお手伝いをさせてください。だって、グレン様は私の上司なのですよね?」

 目を見開くグレン様に、一泡吹かせた気分になったが、人と疎遠になることへの寂しさを現に私は感じている。

 ユーゴが何を思って、私以外の女性たちといるのかを知りたい。

 だから、私は手懸りになるかもしれないグラッチェでアルバイトをするのだ。

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