少女の過去・少年の傷。
そう思うとまた怖くなってきた。
しかし、かすかに
「あの、大丈夫ですか?」
と、女の子の声が耳元から聞こえてきた。
俺は飛び起きた。
《ズキン》
と左手首に激しい痛みがはしる。
見ると、ていねいに包帯が巻いてあった。
俺は生きていた。
死んではいなかった。
そして、目の前には、自分と同じぐらいの年とおもう女の子が一人心配そうに俺を見ていた。
「え、君が俺を助けてくれたのか?」
「あっ、はい。」
俺はありがとうとは言えなかった。
「私、あなたの事しってました。」
「ああ、まだ俺の貼り紙が残ってたか。」
「あなたは、私と同じだから、助けないほうが幸せかと思ったのですが・・・。」
「えっ!?君が俺と同じ?」
「はい。私も、一人なんですよ。両親は私を捨ててどこかに行って、しんせきにもたらいまわしにされて、一人で生きていく事を決意して、今まで一人だったんです。」
「じゃあ君も辛かったんだ。」
「そう・・・ですね。」
「そっか・・・。」
「でも、同じなのはそれだけじゃないですよ。」
その女の子は、黒いリストバンドをした手を前にだして、リストバンドをはずした。
俺は驚いた。
その女の子の手首には、俺と同じ、リストカットした傷跡があった。しかし、その女の子の手首の傷は俺よりも大きくて、深い傷跡だった。
「私も、皆から嫌われていたんです。
皆、私をさけて、嫌って、無視して、何回も死ねって言うんです。私が何をしたって言うんですか!?なんにも・・・してないのに。」
また、傷跡をリストバンドで隠して、その女の子は言った。
「この手首は2回切ったんです。
1回目は、私を嫌ってる人が、いきなりナイフで傷つけてきました。
2回目は、この世界が嫌になって、自分でつけました。」
「2回も!?痛かったでしょ?」
「痛かったですけど、この世界で作った心の傷よりはいたくなかったです。
でも、死ねなかったんです。楽になれなかったです。」